アーシア完勝
木製でできたドアが、鈍く低い離散的な悲鳴のような音と、構造体の断片を周囲に休む間もなく、まき散らしていく。
まさしく、蜂の巣。
隔絶れていたはずの廊下の光景を部屋の中に導いていく。
止まぬ銃弾は一つ一つの穴で弱まったドアをさらに大きな領域で弾き飛ばしていく。
もはや、ドアは本来の外部と空間を仕切る能力を完全に失い、廊下と部屋の空間は一つにつながった。
ドアの向こうには倒れたアーシアの姿もなく、ただの空間がぽっかりと広がっているだけである。
ソルジャーたちの指が緩み、再び静寂が訪れた。
ソルジャーたちはお互い顔を見合わせた後、再び全神経をドアの向こうに向ける。
アーシアが銃弾の止んだその空間に最大戦速で飛び込むと、棚を背に銃を構えていたソルジャーの額をわしづかみにして、思いっきり棚に叩きつけた。
乾いたものがへこむ様な鈍い音と液体が吹き出す音を立て、ソルジャーが絶命し床に倒れこむ。
あまりに一瞬の出来事すぎて、他のソルジャーたちはまだ何が起きたのか分かってはいない。
アーシアがドアの正面に立っているソルジャーを殴り飛ばすと、そのままドアの横のソルジャーに襲い掛かった。
一瞬の出来事だった。ソルジャーたちはアーシアの襲撃を認識することもなく、肉塊と化していった。
アーシアは誰もいなくなった部屋で、辺りを見渡している。
ボスの部屋。
そこにボスはいなかった。
アーシアには地下通路に関する予備知識もあった。
床に倒れているソルジャーの遺体を片手で放り投げると、そのソルジャーの血と肉へんで真っ赤に染まった棚に手をかけた。