コミッションの計略
カタラーニの支配域。
一時、チェーザレの攻撃で荒れ放題だったが、今は平穏が訪れ、破壊されていた商店などが修復されていた。そんな店の中の一つのパブ。
その前に、ガンビーナの依頼であすかを調査していたあのセルジオが立っている。
まだ陽が高く、開店前のパブのドアの取っ手にセルジオが手をかける。
重厚そうな木のドアは重く、セルジオが力を込めて押し開いた。
薄暗いパブの中で開店の準備をしている何人かの男女が、セルジオに目を向けた。
セルジオはそんな視線の中、パブに足を踏み入れ、辺りを見渡した。
カウンターの中にいた男が、セルジオに歩み寄ってきた。
「あんたがセルジオさんか?」
「ああ。そうだ」
「こっちだ」
男はやって来た男がセルジオであることを確かめると、カウンターの中に戻って行き、その後をセルジオが歩いて行く。
カウンターはその奥で、プライベートルームにつながっている。
男はセルジオを連れて、プライベートルームに入ると、その中にある階段を指さした。
上がれ。
そう言う意味だと、セルジオは受け取った。
セルジオが階段を目指して歩き出すと、男はカウンターに戻って行った。
セルジオがその階段を上っていく。
その気配に、二階から男たちが顔をのぞかせた。
顔をのぞかせた男たちはマフィアの男。そんな感じである。
セルジオが二階に達すると、セルジオに対する警戒感を漂わせながらも、進路を開けた。
セルジオが上ってきた二階、そこは窓の無い空間だった。
大きなソファが置かれ、そこに恰幅のいい中年の男が座っている。
カタラーニのボスである。
その背後にはボスを警護しているのであろう二人の男が、後ろ手に回して立っている。
「君がセルジオ君かね?」
カタラーニのボスが低い声で言う。
「そうです」
セルジオの言葉に、カタラーニのボスが向かいのソファを指さして、座るよう促した。
セルジオがゆっくりと歩いて、そのソファに向かう。
「コミッションから協力するよう話は届いているが、詳しくは君に聞けと言われている」
カタラーニのボスが言った。
セルジオが一度頷いて見せた後、ソファに腰を下ろし、神妙な顔つきで語り始めた。
「先日、コミッションが開かれましてね。
その時、ガンビーナとコルレオーネファミリーがベルッチファミリー殲滅の作戦を共同で実施することが決まりました。
あなたにはその作戦の囮の役を買ってもらいたいのですよ」
囮。その言葉に、カタラーニのボスの顔が歪んだ。




