待ち伏せ
前に立ちふさがる敵を秒殺してきたアーシアの姿はすでに返り血で真っ赤である。
鉄臭さを纏う真っ赤な姿。
時折、その細い顎の先端から、顔に浴びた返り血をぽたりとたらす。
髪にもべっとりと血がこびりつき、しなやかさを失っているにもかかわらず、表情一つ変えず、突き進んでくる女。
その姿はたとえアーシアの戦闘能力を見ていなかったとしても、恐怖に値する。
そのアーシアはあらかじめこの屋敷の間取りを教えられていて、迷うことなくボスの部屋を目指して
近づいてきていた。
ボスの部屋の中ではソルジャーたちが持ち場に散らばり、アーシアがやって来るのを待ち構えていた。
一人目のソルジャーはアーシアが入ってくるであろうドアの向かいの窓際に立ち、手にしているマシンガンの照準をドアに合わせている。
もう一人のソルジャーはボスが消えた棚を背にして、やはりマシンガンの照準をドアに合わせている。
最後のソルジャーはドアの横に立って、銃を構えるとともに、廊下の様子に聞き耳を立てている。
ドアの前にアーシアが立った瞬間に銃撃する。そう言う作戦だった。
キュッ、キュッ。
アーシアの血みどろの足が廊下を歩く音を立てている。
近づく足音。
ドアの横のソルジャーが手を上げる。
他のソルジャーたちが生唾を飲みながら、トリガーに指をかけ、合図を待つ。
アーシアがボスの部屋の前で立ち止まった。
ドアの横にいた男がその気配を察し、手を振り下ろした。
その瞬間、銃を構えていたソルジャーたちがトリガーを引いた。