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ヒューマノイド アーシア

 エレベータのドアが開いた事に気付いた者たちが、一斉に視線を向ける。


 「ボス」


 初老の男に向けそんな声とともに作業をしていた者たちが、作業を止めて立ち上がる。

 初老の男こそ、このマフィア組織ベルッチファミリーのボスである。


 そんな中、スマートな体系をしたアジア系の中年の男がボスの前に歩み寄ってきた。

 近づいて来るその男に気づいたボスは満面の笑みを浮かべながら、自らも歩み寄って話しかけた。


 「原君、君には感謝するよ。

 アーシアは予定通り、エルカーンファミリーを壊滅させたようだ。

 その成果を一緒に見ようではないか」


 ボスに呼びかけられた男は原 正樹。

 日本のヒューマノイド開発の第一人者だった。

 その娘 美紀が、数年前、卒業旅行中のイタリアで行方不明になり、その後原自身も行方不明になっていた。

 その男がここにいた。



 アーシア。

 それは原が開発した人型の戦闘/諜報用アンドロイドに付けられた名前であり、今血みどろの姿で立っている女性と思われた“物”である。


 「アーシア、記録したものを見せてくれ」


 ボスがそう言いながら、さらに奥に進んでいく。

 その後に従うのはエレベータから降りてきた男たちの内三人。

 ボスの弟 オッタビア、長男 サンドロ、次男 チェーザレ。

 そして、アーシアと原である。


 6人が向かった先のエリアには大型のディスプレイがあり、一足先に原が向かい、装置の電源を入れた。

 しばらくすると、そのディスプレイに映像が映し出され始めた。

 それはアーシアの目がとらえた映像を記録したものだった。



 ディスプレイ映し出されているのは記録された映像だけでなく、画面の右端にはいくつかの情報が表示されている。


 ステータス。

 エネルギー状態。

 GPSデータ。

 周囲を分析したものと思われるレーダー状の表示。

 そのレーダー状の表示にはいくつかの点が表示されていた。



 映像として、ディスプレイに映し出される屋敷の壁。

 アーシアの移動に伴い、映像に映し出されている壁が後方に流れていくと共に、映像の右横に映し出されているレーダー状のものに表示されている点の位置も変わっていく。


 まばゆい太陽光が路面で反射している。時々道路を通り過ぎる車の音と、鳥たちのさえずり。

 レーダー状の表示の中に車と思われる点が表示され、消えて行く。

 64Km/h。

 車が通り過ぎるたび、その移動物体の速度も表示されている。

 レーダー状の表示がせわしなく情報を更新している以外、ディスプレイの中では平穏な時が流れている。


 やがて、ディスプレイされている映像の先に屋敷の門が見えてきた。

 そこに立っている二人の男。

 レーダー状の中心近くに、この二人の男を表していると思われる二つの点が表示されている。

 近づいてくるアーシアに気づき、ちらりと視線を向ける。

 近づいてくる人物が女性だけに男たちの警戒心も大きくはない。


 「こんにちは」


 アーシアの声が聞こえてきた。

 アーシアが二人の男にほほ笑みながら言っていた。

 普通の者なら、決して声をかけてくる訳がない。

 そのためも、二人の男は警戒心を抱いてはいたが、相手が女性だっただけに、あからさまな警戒態勢は取らなかった。


 「何だ、お前は?」


 そう言った次の瞬間、映像が流れた。

 何が表示されていたのか、分からない。アーシアの移動速度が速すぎたのだ。

 次の瞬間に映し出されたのはさっきまで立っていた二人の男が頭を陥没させ、地面に伏している姿だった。

 男たちの頭部から流れ出す血。

 路上に血の海ができあがろうとしていた。

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