お家を探そう!前半*ただし金はいらない
彼がウールと出会い、大体1時間ぐらいがたっただろうか。
お互いのこと、この世界のこと、ルールのこと、デスゲームのこと・・・
色んなことを話し合っている内に、空は黒く染まりつつあった。
「さて、暗くなってきたんだが・・・君はどうするの?」
「・・・特に行くところなんて」
「あー、わかった」とウールを止め、何かないかと頭の中を巡り巡る。今一番欲しいのは何か?それは安全に寝れる場所を見つける・・・見つけ・・・
「あー!!!」
「ど、どうしたんですか?いきなり大声上げて」
説明口調でウールに話しかける。
「ウール君、君はVRMMOの説明書を読んだかい?」
「いえ・・・ざっとしか読んでません」
「37ページだ」
「え?」
「37ページ、スタミナについて。基本的にスタミナは何かをしていると減り、少なくなると眠気がやってきて、0になると倒れる」
「あ、その欄は読んだことがある気が・・・します。それで?」
「スタミナの回復方法は 何もしない つまり寝る、休む、この二つ。実際の数値は分からないが、現に俺たちはここで1時間以上座っている!つまり・・・」
ウールが何かに気付いたのか彼を見つめた。
「そうだ、今日はもう宿いらないってことだ」
「ってバカですかー!!」
ドガッと彼の頭に重い衝撃が走る。
「痛っ!いい案じゃないか!徹夜には男のロマンが詰まっていてだな!」
「全然詰まってなんかないです!それに私女だし!お風呂だって入りたいし!」
「だったらあっちに泉が・・・」
「アキさんのバカー!!」
再び彼の頭にウールの拳が落ち、その案は廃止された。
「じゃあどうすりゃいいんだよ・・・もう宿なんて空いてないだろうに」
「う、うーん・・・そうだ!」
今度はウールが何か思いついたようだ。
「新しい家を建てるとかどうでしょうか?」
「ってお前もバカかー!!」
その日、彼らは門の下でお互いに体力を減らし合いながら朝を迎えた――