仲間を見つけよう!*ただし金はいらない
デスゲーム。
VRMMOが開発された頃から有名になったワード。
ゲームの世界で死ぬと現実世界でも死んでしまう、アレだ。
非公式のワールドは大体がデスゲームであり、国も対応に困っている。
だが、彼にとって「デスゲーム」は――
「はぁ・・・高校でやった現文のヤツの心情が良く分かるよ・・・」
門の下。そこには彼以外にもたくさんの人がいた。皆これからどうするのかを考えているのだろう。
もちろん彼にも行くアテなどない。持ち前の気楽さで「なんとかなるか!」と思っていた。
「きゃっ!」
座ってばかりで疲れたので、足を伸ばしたら何かが引っかかった。
何だろうと寒さと孤独感によって重くなったまぶたを開くと、そこには
「いっ・・・てきゃあああ!?」
16歳ぐらいだろうか、茶髪の少女が地面に転んで悲鳴をあげている。
「体力が!体力が!うわああ!!」
よく見ると彼女の上に表示されているHP(体力)が少し減っていた。
「そうか、ダメージは日常生活でも食らうことがあるのか・・・メモメモ」
ゲーム開始時に唯一与えられた道具、紙とペンにイラストつきでメモを取る。
「えぇええ!?ちょっとあの!」
「ん?あぁ、足引っ掛けてごめんな。じゃあおやすみ」
目を閉じようとした瞬間、少女が立ち上がって近づき、
「・・・!」
「あー・・・あの?」
うわぁ泣かしちゃったよ・・・少女のキレイな肌に涙がとめどなく流れている。
「ほんとに悪かった!お詫びに・・・って何も無いけど」
ポケットの中に何かないかと探しても、ズボンの生地の感覚しかなかった。しかし、少女の反応はまったく違った。
「違うんです・・・違うんです・・・やっと、誰かと話せて嬉しいんです」
「え・・・?」
考えてみれば当然である。ただのオンラインゲームなら皆楽しんで初心者から上級者がコミュニケーションを取り合うものだろう。しかし状況が状況である。突然とはいえプレイヤーの7割近くはデスゲームのことを理解しているはずだ。そんな猛者達がはたして初心者の手助けをするだろうか?たった一人しか生きられないといわれて、そんなことしている暇があると思うだろうか?
「なんだ、ははは・・・」
「・・・ふふっ」
おそらくこの少女は先ほどの初心者の部類に入る。でも彼にとっては関係なかった。
彼だって、ちょっとお気楽なだけの初心者だから――
「俺の名前・・・本名はやめとこうか。アキだ」
「私は・・・ウールです。よろしくお願いします、アキさん!」
彼は初めて、仲間に出会った。