プロローグ
雨が降っていた。
「うわぁ・・・早くやまないかな」
大きな門の下で雨宿りをしている白いTシャツを着た男の手には、一枚の紙が握り締められていた。
1時間前。
突然起きたログアウト不可能という事態にプレイヤー全員が困惑していた。
時刻は夕方6時。この世界全体に届くといわれる[メガホン]の声が大音量で響いた。
「元の世界に帰りたければ3年間で一番金を集めてこい!」
「えっ」と反応する前に、彼のプレゼントボックスにGMから手紙が送られていた。
そこにはこの世界のルールと思われる物がたくさん書かれており、その内容は
・イベントリ、およびステータス画面の使用禁止*ただし金を払えば使用可能
・この世界で死んでも、復活系アイテムは使えない*ただし金を払えば使用可能
・フレンド機能、世界メガホンの使用禁止*ただし金を払えば使用可能
・3年間で一番資金を集めた一人を元の世界に返す。残りは全員死ぬ*ただし(略
――どれも金があればなんでもできるという物だった。
「非公式のVRMMOなんて9割がデスゲームだよ」と言った先輩の顔が懐かしく感じる。
現にそのデスゲームなるものに捕まってしまい、総プレイヤー5万の中の一人を争うことになってしまったのだ。これほど絶望を味わう機会が将来あるのだろうか。
無論、オープン直後の出来事なのでまだ家すらないプレイヤーが多い。
雨が降り出した。このゲームの真髄を知った今では冷たく感じる。
「って風邪も引くんだよな、このゲーム・・・いや、この世界は」
とりあえず今後のことを考える前に、雨宿りする場所を求め彼は歩き出した。