これから小説を書こうとしている人は生成AIとどう向き合うか
「みもっち、どう思うっすか?」
「もも? どう思うって、何のこと?」
「いやあ、昨今の生成AIは、すごいじゃないっすか。
小説の書き方を指南してもらうこともできるし、小説自体を書いてもらうこともできるっす。
うちは小説を書いたことがないっすけど、なろう投稿続けて云年のみもっちは、どう思ってるっす?」
「そうね。私も適宜使っているわ。
小説の出力を試してみたこともあるし、AIの指示に従って書いてみたことも。
書いた作品についてアドバイスを貰ったことも、もちろんあるわ。だって無料だもの」
「……っすか。ちなみにこの会話は?」
「誓って言うけど、私たちの会話は生成AIを使ってないわ。まあこれは、証明する手段もないから読者には信じて貰うしかないのだけれど……」
「ま、そうっすね。てかなんの話をしてるんっすか? ウチらが話してるんだから、それはウチらの声に決まっているっすよ」
「……まず、著作権についての話があるわね」
「あー、聞いたことあるっす。海賊版サイトを使ってるとか、なんとか」
「そうね。ここについてはいろいろな意見が合って、ややこしいので今回は割愛するわ」
「はぇ? え、話さないんっすか?」
「私個人の考えを言わせて貰うと、大した問題じゃない……んだけど、大事にしようとする人はどこにでもいるから。それに私は『これらの問題は将来的に解決される』と思ってる。わーわーと騒ぐ人がその解決を急がせてくれているおかげでね。
『正義』のために戦いたいなら好きにすれば良いけれど、そんなことをしても小説を書けるようにはならないわ」
「身も蓋もないことを言うっすね……みもっちの作品も学習に使われるかもっすよ?」
「私は別にそれでも構わないと思っているし、私なんかの作品はそもそも餌にも満たないわよ」
「じゃあ、みもっちは生成AIの使用には大賛成。って立場っすか?」
「それが、まあそうでもないのよね。実際に使ってみたから分かる。と言うのかしら、気になるところがいろいろあるの」
「気になる……すか」
「ええ。例えば一番根本的な問題として、生成AIで小説を出力しても、本人が小説を書けるようになるわけじゃないわ。これは、分かるかしら?」
「まあそりゃ、そうだろう。とは思うっす」
「そうなのよ。つまりそれって、『小説を書くことでえられる経験を、小説の出力では得られない』と言うことでもあるの。
例えばファンタジー小説に現代知識を持ち込む展開を書こうとすれば、自ずとその分野についての勉強をする。みたいなわかりやすい学習もあります。
それにもっとこう……言葉の捻り出しを繰り返すことで鍛えられる語彙力とでも言うのかしら、そういう抽象的な能力も、やはり小説の出力だけでは身につかないわね」
「それは……なんかそれこそ、ファンタジーっぽい気がするっす。そんな執筆力みたいなステータス、存在するっすか?」
「具体的なデータがあるわけじゃないのは認めるわ。でもなんて言うのかしら……今の私は確実に、小説を書き始めた頃の私と比べて小説を書く能力が向上しているのは間違いないわ。
書く速度は衰えたかもしれないけれど……あの頃よりも面白い作品を書けるようになっている。それだけは確信を持って言える」
「その成長が、生成AIを使った執筆では得られない……っすか」
「必要がないとも言えるわね。だって最初から、出力できるんだもの」
「ちなみに……みもっちは、生成AIで書かれた小説について、どう思うっす?」
「個人的な感想で良いのなら、一言で言うと『気持ちが悪い』って所かしら。
よく、見分ける方法として『マークダウン記法が残ってる』なんてことが言われるけれど、そんなのなくてもなんとなく分かるのよ。AI特有の饐えた臭いが、隠しきれていないのよ。
まるでそうね……規範的な小学校の先生に指導を受けているような、とでも言うのかしらね。私自身が出力させてみた文章からもそれは感じるし、明言されてないいくつかの作品からも、やっぱりそれは感じるわ」
「そうなんっすか……それは、ウチにはよくわからないっす」
「そうね。私からしたら『こんなクソAI作品が』と思うような駄作がランキングの上位に食い込むことはままあるわ。
とくにノクターンノベルズとかで最近顕著……」
「え、みもっち、今なんて?」
「なんでもないわ。
とにかく、生成AIで出力した小説をWEBで公開するのは、好きにしたら良い。
けれど、それを『小説書けるようになった』と勘違いしてしまうと、永遠にその場で足踏みすることになるから気をつける事ね!」
「じゃあ、推敲作業に使うってのは、どうっすか?」
「それもまあ……良いとは思うのだけど、使いこなすのは難しいわよ」
「難しい? 書いている小説をコピペして『アドバイスして』って聞くだけじゃないんすか?」
「そう。だけどそのアドバイスが正しいかどうかは、どうやって判断するのかしら?」
「判断……? アドバイスに判断が必要なんっすか?」
「そうね、これも技術の進歩で解決される問題なのかもしれないけれど……
私の肌感覚として今の生成AIは、例えば誤字脱字のチェックはある程度正確にしてくれるわ。だけどそれ以上の『面白い小説の書き方』については、あまり信用ならないと思ってる。
だってそもそも、生成AIで面白い小説を出力することが、出来ないのだから。人に例えるのも変だけど、本人にすら出来ないことを、知識だけでペラペラと言っている。そんな軽薄な感じが拭えないのが実情よ」
「じゃあ、使わない方が良いってことっすか?」
「そうとも言えないわ。生成AIの言うことは、間違いなく一理はあるの。だけどそれが、本当に目指すべき方向性なのかってこと。
私も一度、私の作品を添削させて、指示通りに直してみたことがある。修正をする度に生成AIは『良くなりました!』『あと一息です』なんて励ましてくれる。
それでいい気になって、彼らが『完璧です』と言った作品を、後から見直したらどう考えても駄作としか思えなかった……と言うこともあるわ」
「それは、ご愁傷様っす」
「悔しいのは、その指示に従って書き直している間は私自身も『これは傑作だ』と思わされていたことかしら。生成AIが人を煽てる才能だけは認めざるを得ないと、その時私は痛感したわ。
ある程度執筆歴のある私でもそうなるのだから、書き始めの人はもっとそうなるんじゃないかしら」
「確かにそれは、ちょっと怖さがあるっすね」
「でもまあ、言ってしまえばそんなのは、小説家であれば誰でも通る道でもあるわ。
私たちの作者が書いた過去の短編だって、今から見直せば恥ずかしい黒歴史ばかりだもの。
ただ生成AIを使うと、変に期待値を高められるせいで滑ったときの衝撃がデカい。ぐらいかしらね」
「だったら、あれはどうっすか? 生成AIをコーチ役にして小説を書くっていうのは」
「どうなのかしらね。それについては『よくわからない』のよ。だって私、そんなのなくても書けるもの」
「それを言ったらお終いっす。試したことあるって言ってたっすよね。どうだったんっすか?」
「なろうではない別サイトに投稿したのだけど、PV8。評価の俎上にすら載らなかったわ」
「……っす。聞かなかったことにするっす」
「まあ、指示に従って書いていた間は楽しかったけど、もう一度やりたいとは思わないかしら。
なんていうか、個人的には好き勝手に書いている方が性に合っていると思ったわ。出来上がる作品の質についてはよくわからないし、そもそも私はある程度書ける人だから。
書けない人が同じことをやったらどうなるのかには、興味があるわね」
「他に、何か言っておきたいことはあるっすか?」
「そうね……反AIの人の意見に『生成AIの出力する小説は面白くない』というのを見かけるわ。それはまあ、私もある程度同じ意見、なのだけど。単に『面白くない』で片付けてしまうのはちょっと、もったいないと思っているの」
「それはどういう意味っすか?」
「面白くないと思ったとき、なぜ面白くないのかまで考えるのが、物書きがやる事だと思わない?」
「なるほどっす。で、なんで面白くないんすか?」
「いくつかの仮説があるのだけれど……その一つとして私は『小説書きとしての通過儀礼を経ていない』のが理由じゃないかと、仮定を立ててみたのよ」
「通過儀礼……っすか」
「そうよ。物書きは誰しも、書こうとして文字を打ち込んで、ああじゃない、こうじゃないと頭を捻り、ようやく一つ目の駄作に至る。
私も、なろうにアップされている作品以前に、大学ノートや原稿用紙にいろいろ書いているわ。
執筆論みたいなものも、いろいろなサイトで勉強して。そういう下積みを重ねてようやく、人様に見せられると自分で思える作品を書き上げたの」
「なるほど。小説を書くのって、楽じゃないんすね……」
「でも生成AIで出力するのに、そういうのは一つもいらないでしょう?
書きたい作品をなんとなくのイメージで言葉にしてそれをAIに伝えれば、それだけでお手軽に作品を生成できる。だけどそれで出力された作品は、やっぱりその程度の人が出力した作品なのよ。中身のない人間が出力した作品は、やっぱり上っ面ばかりで面白さに欠ける。
面白い作品を作る努力をした人なら到底受け入れられないようなゴミを、それがゴミだと判断できずに投稿してしまう。なんていうのはどうかしら」
「どうって……そうなんっすか?」
「それはわからないわ。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
もう一つの仮説として、今のLLMが『小説』というのを誤解しているようにも感じるわね」
「それはまた、誤解っすか」
「私の感覚として、生成AIは記事やエッセーなら書けるのよ。私が読んでもまあ違和感を覚えない程度には。でも小説となると、てんでだめ。
面白さ以前に、あまりに説教臭い。まるで子供向けの童話を読まされているみたい。それを私は『AI臭』と勝手に呼称してるのだけど、正直なところ正体は掴み切れてない、かしら。
ある意味私が生成AIを使うことで危惧しているのは、その『AI臭』が私の文章に移ってしまわないか。という点ね。まあこれはこれからの世の中で小説を書き続ける以上避けられないとも思っているから、過度に怖れても仕方ないのかもしれないけどね」
「みもっちは執筆者として、今の生成AIユーザーに言いたいことはあるっすか?」
「なによそれ、ももは私から悪口を聞き出したいの?
まあもちろん、思うところはあるわ『楽してずるい』とか『荒らしは止めて』とかね。
でもそんなこと、言っても仕方がないじゃない?」
「仕方ない……すか。消極的っすね。
今後どうなるべき。みたいな構想はあるっすか?」
「例えば、なに? 生成AIユーザーを隔離するとか?
でもそんなのは、個人があれこれ言っても仕方ないわ。
私みたいな木っ端が言っても意味がないとも思う。
でもそうね……作者目線だけで話すと、やっぱり『作者が優遇される世界』が嬉しいわ。でもそんなのはなろう系のチートと何が違うのかしら」
「うぐっ……」
「そりゃ、ね。たしかに生成AIユーザーがざまぁ展開に陥るのを妄想するのは楽しいわ。でも同時に虚しいじゃない。現実はそんなに都合良くないのだから」




