再開はビンタ一発
下手な小説ですけど、よろしくです。(TOブラザー)
九年前。
まだ僕が母親に頼っていた頃。小学校の入学式に時、僕は君に一目で恋をしてしまった。その頃はまだ、小学校1年生で6歳と言う年齢だけあって、まだ本当の好きではなかった。でも、段々成長するにつれて、好きがどう言う意味なのかを分かり始めた時、僕の君に対しての気持ちがはっきり「好き」と確信した。
そして、中学生になるまで、自分の気持ちを隠そうと決めた。しかし君は僕と同じ中学校には行けずに離れてしまった。3年間と言う年月が経ち、僕等はやっと再会を果たす事ができた。
-パチン-
はずなんだけど……。
僕こと稲垣蓮は九年間思い続けていた女の子、田中小夜さんにビンタを一発食らっている。理由はこうだ。高校の入学式に初対面の女の子に告白され、即答で断ったらその女の子の友達が、田中さんだったらしく、話を聞いた田中さんが怒って僕にビンタしたと言う訳だ。
「……」
「……」
何分か沈黙が続いた。告白して来た女の子はオドオドしているのに関らず、3年ぶりに再会した田中さんは僕を睨んでいる。目つきは、多分睨んでいるから細く見えるが、多分変わっていないだろう。顔も幼馴染ーズよりも、小学校の幼さが残っており子供っぽい。
「稲垣君、もっとましな断り方って言うの思いつかなかったの?」
やっぱり目は小学校の頃と変わっていなかった。
「うーん……フォローしながら断ると、余計に傷つくと思って」
「ほ、本当にもう大丈夫だから……ね?」
聞きたくないと言う様に、僕の声を遮る様に隠れていた女の子が言った。あー言う子に良く告白されるけど、一番苦手なタイプだ。友達に断られたと言って友達に文句を言わせる子。最終的にはいい子ぶって止めさせる。そう言う子は一番嫌いだ。しかも言った相手が田中さんだったら尚更……。
「ほら、彼女もそう言ってるし授業も始まっちゃうよ?」
「……うー……」
唸る彼女は小学生の頃と同じだった。違っているのは口調と性格の半分だと思う。多分彼女は口より先に手が出る。扱うのには大変そうだ。でも、小学生の頃の彼女はお人よしで、少しドジだったけど隙が無かった。僕からするに彼女は小学生とは違うどこか抜けてる感が出てる。背も小さいし……。
「なぁに一人で考え込んでるのよ」
「美代……どうしてこんな所に?」
「先輩が呼んでるから、探してたのよ」
美代。府川美代。彼女とは、幼稚園の頃から高校までずっと一緒の幼馴染だ。彼女も中々の美少女だが、田中さんには敵わない。あくまで僕視点だけど。
「先輩?どうして」
「どうしてって……あ、ちなみに男よ」
「女かと思った」
ニコリと笑う僕に、自惚れるんじゃないわよと捨て台詞を言って、教室に戻っていった。それを眺めながら、先ほど田中さんに叩かれた頬に手を当てた。痛さはまるでない。でも、心の傷は痛む……何てくさい事を思っている自分がおかしかった。
「……はあ」
五時間目の授業は自習って言ってたし、サボろうか。高校生活3日目は散々と言うよりも疲れた。田中さんに会えてうれしかったけど、あんな再開だったのが傷だけど。
「それにしてもどこから抜けようか」
「あっちの方に裏口があるから……」
先程聞いた様な声がした。田中さんかなと期待していた俺は一瞬にして恥かしくなった。横に居たのはさっき田中さんの後ろに隠れて止めていた女子。名前忘れたけど……。
「ありがとう、えっと」
「あ、山田衣緒って言います」
「そう、名前覚えるの自信ないけどよろしく」
一言言って、僕はその裏口に向かった。……おかしい。何も無いではないか。裏口どころかドアすら見当たらない。学校案内でも裏口なんて言うのはなかった。……とするとあの山……何とかさんが嘘を吐いたって訳か。
「よう……」
教室に戻ろうとした僕を引き止めたのは、いかにも不良ですをアピールしている様な格好の長身の女性。黒髪で、マスクをしている。しかも学ラン……。ここは学ランじゃないぞ。女子はブレザーだ。男子も学ランではない。
「……えと?」
「お前、あたしの妹を思い切り振ったみたいだな」
「妹?もしかして山なんとかさん?」
あー……そう言う事か。何となく状況が読めた。要するにこれは復習だな。こんな事、今まで数回しかなかったから、慣れてる慣れてないと言われれば慣れてない。むしろ苦手な状況だ。
「いい度胸してるじゃねーか……」
「はは、お褒めに預かり光栄です」
苦笑いしている自分が馬鹿らしい。
「ムカつく野郎だ……」
突然、女不良が僕に向かって走って来た。さすがに至近距離じゃ避けられない。目を瞑った瞬間、女神の声がした。
《手を、手を早く!》
一瞬の出来事だった。僕は屋根の上にいた。
目の前に居たのは、息を切らして僕の手を掴んでいる
田中さんだった。
「ど……どうして」
「こ、これは……お詫びよっ」
顔を真赤にして、僕を見つめていた田中さんは文句ある?っと言ってそっぽを向いてしまった。
「……さっきは叩いてごめんなさい」
「いいよ、痛くなかったし」
突然誤ってきたのでびっくりした。痛くなかったと言う事は本当だった。
「それより、どうして田中さんがこんな所に?」
「うーん……何でだろう」
人差し指を唇におき、首をかしげた彼女をに、思い切り抱きつきたいと思った。
「……変わってないね、蓮ちゃん」
「……田中さんは変わったね」
「え、そうかな……」
「うん、強くなった」
再開して、初めて名前で呼んでくれた。
「小夜でいいよ? 私も下の名前で呼ばせてもらってるし」
「……じゃあ、小夜」
「ふふ、ヨロシクね」
キミの笑顔は変わっていなかったよ。
それから僕等は学校抜け出し、近くのファミレスに寄り、家に帰った。
「あれ、小夜って同じマンションだったの?」
「そうよ、悪い?」
性格が戻ってしまったのか、機嫌の悪い小夜だ。無意識の二重人格か?と思わせるように、小夜の性格はコロコロ変わる。ファミレスでご飯を食べた時は機嫌がよかったけど、帰り道は黙り込んで機嫌が悪そうな顔をしていた。
「驚いた、番号は?」
「そんな事聞いてどうするの?」
「いや、遊びに行っちゃおうかなって」
「馬鹿な事言わないの、それに小学校の頃の私達じゃないんだし」
もうっと言って、僕等はエレベーターに乗った。小夜も僕と同じ階だったらしい。何でついてくんのよと、少々機嫌悪そうに言われ、僕はちょっとショックだった。
「……え」
「隣?」
「う、嘘ー」
運命のいたずらか、神様がくれた贈り物かなんて、正直どっちだっていい。うれしかった。
「……おやすみなさいっ」
「うん、おやすみ」
今日は色々な事が会った。9年間思い続けた人に会えたと思ったらビンタを一発。不良に絡まれたり、襲われそうになった所を小夜に助けられたり。
体力が限界になった僕が、制服のまま眠っていたと知ったのは次の日のお昼頃だった。
*
*
*
「……蓮ちゃん」
無意識に彼の名前が出てしまった。
「小夜ー、ご飯よ」
「あ、今日はいらない」
「あら、どうして?」
「お、お友達と食べてきたの」
小夜、田中小夜。それが私の名前。顔は普通で、家柄も普通。普通の女の子だ。お友達。その人の名前は稲垣蓮だ。小学校が同じで、私の初めての友達。
「めずらしいわね、あなたが友達と食べるなんて……小学校以来だわね」
「そ、そんな事ないよ」
「それにあんた、今日はいつもと違う雰囲気よ」
「いつもと同じだよ!」
普通の家族だけど、私には父親が居なかった。私が中学校一年生になった次の日に、トラブルを起こして警察に捕まった。そのためか、私は転校するはめになった。今は双子の兄二人と、母親で5人でそこそこ大きなマンションで平凡に暮らしている。
「……隣に越してきた男の子、かっこ良かったわよー」
「隣?」
隣……連ちゃんの事かな。確かに蓮ちゃんてカッコイイけど、へたれだしな~。
「あら、小夜知らないの?」
「え……」
「小学校で同級生だった蓮君、覚えてる?」
「う、うん」
「その子と同じ名前の子なのよ、結構似てるし」
だって、本人だもん……。でも、顔は大人っぽくなって変わっていたのは間違っていない。でも本当に、変わったんだなって思ったところは、少し、紳士になった気がする。
「あの子、蓮ちゃんだよ?」
「あら、そんな事知ってるわよ」
「な、じゃあ何でそんな事!」
「小夜が蓮君の事を覚えているかどうか確かめただけよ」
母はベーっと私に舌を出した。自慢じゃないけど、お母さんは周りにいる他のお母さんより若く見える。でも、若く見えるせいか、怒られても全然恐くない。むしろ可愛いく思えてしまう。そんな母を持った私の双子兄の弟の方である愁は極度のマザコンである。
「ただいまー」
「あら、お兄ちゃんズが帰ってきたわ」
双子の兄の方はカッコいい。名前は翔。少々モデルの仕事をやっていて、私が愛読する「ガイア」と言う雑誌の読者モデルをやっている。まあ自慢の兄だ。
「小夜、学校は大丈夫か?」
「うん」
「そっか、それは良かったよ」
翔はいつも私の事を気にかけてくれる。
「あのね、小学校の頃、お友達だった子に会ったの」
「もしかして蓮?」
「あ、当たりー!」
「そうだと思った」
まだまだ増やすもん!
TOブラザー