三話 惨めな社交界デビュー
そうね、あれは……学園に入学してから、ちょうど一年が経った頃。
進級して二年生になった私は、社交界デビューを果たすことになったんだわ。
デビュタントには親と共に参加するのが通常の流れだから……当然私も、父に同伴してもらって参加をした。
ドレスは、流行のデザインを採り入れた高価なものを買ってもらったわ。
例え私に愛がなくても、両親は見栄っ張りな人だから……そういうところには手を抜かないの。
まぁだから、ドレスを選んだのは私じゃなくて、両親だったけれど……。私はただ、与えられたものを着ただけ。
それでも無事に入場して、謁見を終えたところまでは良かったのよ。
問題は、その後。
私の容姿を気に入ったらしい男性達が次々と声をかけてくれたけれど、彼らを父は傲慢な態度で追い払った。
それも、「この娘は出来損ないだが、優秀な婚約者がいる」と言いながら……。
そう、学園での私は、テストや授業で極力手を抜くようにしていたのだ。
なぜかって、エイドリアン様より良い成績を取ってしまったら、今よりも更に酷い目に合うことが予想出来たから。
婚約者たるもの、将来の夫を立てなければならない。
そう思って、エイドリアン様の成績を抜かないギリギリの成績をキープしてきた。
けれどエイドリアン様の成績は、正直言って中の下くらい。
……これでも、入学前に散々知識を叩き込んだおかげで大分改善した方なのだけれど……。
だから必然的に、私の成績は最高でも下の上ということになる。
もちろん、成績を知った両親は激昂した。
けれどわざと成績を下げているなんて言えるはずがないから、私はただ頭を下げて自習に励んでいたわ。
家庭教師からは、「お嬢様は優秀なのに、どうしてテストになると点数が下がってしまうのでしょうね」と不思議がられてしまったけれど……。
私に興味がない両親は、その矛盾にすら気付かず私を糾弾した。
「エイドリアン様はご立派なのに、お前はなんでそんなに出来損ないなんだ!」
……本当は、真逆なのにね。
まぁそういうわけで、社交界での私の評判は父によって「出来損ないの、容姿だけがよい娘」に決まったわけだ。
それに加えて、学園での様子を知っているご令嬢が「あの子はエイドリアン様に酷い態度をとっている」なんて噂を広めたものだから……。
あっという間に、私は社交界で「馬鹿な悪女」として名前を覚えられてしまった、というわけよ。
本当に、最悪な話よね。
ちなみにエイドリアン様には、「お前のせいで私まで恥をかいた」と言われたけれど……誰のせいだと思っているのかしら?
こうして、私の惨めなデビュタントは幕を閉じたわけだけれど……
私の地獄は、これだけでは終わらなかった。




