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「これはスキルなのか?死んで目覚めたら異世界で何故か脳内に住み着いたAIが優秀すぎる件」  作者: Nakano Danner


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第8話 錬金術師と魔石


「いやー、しっかしほんとに驚いたぜ! まさかアンリが錬金術師だったなんてなー!」


「ほんとに! あんなすごい火炎魔法を放つんだから、てっきりマスタークラスの魔法使いだと思ってたのに」


「ねぇねぇ? アンリくん?? 一体どこであんなすごい魔法をマスターしたのか教えてよぉー」


「…………」


いや、しゃべらんのかい!!

キャラ的にそんな空気感出てましたけど、ビッグさん!!


「まーまー、そんなに一気に質問したら、インテル入ってるけど旦那様は病み上がりなので、演算スレッドが落ちちゃいますよっ」


ふわりと俺の目の前を横切り、肩にちょこんと座るちび杏。

……まったく慣れない。


「いやー、強さもさることながら錬金術師なんて初めて見たけど、杏ちゃんみたいな精霊族まで使役できるとか、どれだけすげーんだか。まったく、ははは!」



精霊族ってなんぞ???

脳みそ占拠BGMから肩のマスコットに進化した杏が、ニコニコした顔で脳内パルスを送ってくる。



--この世界で『AI』だ、『事象』だーって説明しても伝わらないですよね?? だから、私は『錬金術師である旦那様が召喚した精霊』ってことにしてみなさんに伝えてあります(できる子っ)--



「あのー……俺、あのトカゲを倒した後ぶっ倒れて覚えてなくてですね。結局、その後なぜここに? ここはどこ? わたしは……」



「ははは、無理もないぜ! あんなすげー光の魔法を使ったんだ、ぶっ倒れても仕方ねーよ。あの後すぐに騎士団が到着して現場確認だの『お役所仕事』をやり出したんだが、倒した当の本人はぶっ倒れてるしな。 そんな時、横にいた杏ちゃんがトルネーさんのゴールドカードを差し出して、『旦那様をここに運んでください!』なんて真剣な顔でおねがいされちゃー、断る義理もないだろう!」


「ねー! こーんなかわいい精霊ちゃんが真剣にお願いするんだもんw 断れるわけないよ」


そう言いながら、エルが肩に乗った自称・精霊族のマスコットに指を伸ばしてこちょこちょしている。

……子猫かっ!




コンコン。ガチャ。




扉が開かれ、トルネーが心配そうに覗き込んできた。

起き上がっている俺を見て、ホッと胸を撫で下ろす。


「お目覚めになられたのですね。お加減はいかがですか、アンリさん。倒れたまま『青の守護者』に連れられてこられたときは肝を冷やしましたが……いやいや、本当によかったですわい、はっはっはっ」


「いや、なんか本当にすみません。なにからなにまでお世話になりっぱなしで」


「いえいえ! 何を仰いますか! オーガから命を救っていただかなければ、私もこうしてここにはいられませんでしたからな! まだまだ恩は返しきれておりませんぞ。はっはっはっ。……ところで、ザインさん。先ほど『例のアレ』が届きましたよ」



普段は好好爺のトルネーの目が、一瞬で「商売人」のそれへと切り替わる。


「おー!! 本当か! ぜひ持ってきてくれませんか!!」


パンパン、と扉の向こうへ聞こえるようにトルネーが手を鳴らす。

メイド服を纏った美女二人がキャスターテーブルを押して入ってきた。

その上には、白い布がかけられた「何か」が乗っている。


布が剥ぎ取られると、そこには30cm四方ほどある、大きな、なんとも言えない深い紫色の歪な形の岩のようなものが鎮座していた。



「しっかし、何回見てもでかい魔石だなぁ……こいつぁ……」



「本当に。小さい魔物は何度も退治して魔石も見慣れているけど、さすがにこのサイズはちょっと見たこともないわ」



どうやらこの歪な物体は『魔石』と呼ばれているものらしい。

魔物が体内にコアとして持っているもので、その内在するエネルギー量から魔法武具や魔力製品、街灯など、様々なものへと加工されるこの世界では貴重な資源だという。



--おそらくですが、ある特定の条件下で四次元側で消去されずに残った『古いエラーコード』、いわゆるバグですね。それらが鉱石に蓄積され、魔石という形になったかと思われます。 これがどうやって魔物の体内にコアとして残るのかは情報不足で分かりませんが、この世界は信仰心や強い意識で事象を揺さぶり魔法現象を起こします。その現象をブーストさせる素材として魔石が重宝されるのは、確かに理にかなっていますね--



なるほどね……。



「一応、魔石にしろ素材にしろ討伐した者が受け取る権利があるんだが、さすがにこのサイズは一旦騎士団が預かって検査の上で引き渡す決まりになっていてな。それが今、やっと戻ってきたってわけだ!」


「で、こちらが今回の魔石の鑑定書になりますが、エネルギー量から何から、なかなかお目にかかれない一級品でしてな。売却される場合は、こちらのお値段と記載されております」



俺は差し出された鑑定書を見た。

あぁ、たぶん宝くじが当たったときってこんな反応になるんだろうな、という体験。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……」


「ん?? いーち、じゅー、ひゃーく、せーん、まーん……」


「んー……いーち、じゅう……」



--白金貨100枚。もしくは金貨1万枚。 つまり日本円で『1億円』ですね、この紫色のいしっころさん--



「どうされますかな? アンリ様」


くいっと老眼鏡を上げるトルネー。

もう完全に「商談」の目だ。




「……あのさ? 山分けしたらダメかな??」




え?? という全員の驚きの顔。



「いや、カッコつけるわけじゃないんだけど、結構街もボロボロじゃん? ザインたちも冒険者たちもいっぱい戦ったでしょ。俺は、んー……その魔石の『かけら』ぐらいあれば、それでいいよ。あとは、まあ、なんか上手くやってよw」




実際、俺はなんもしてないからな!

そんなもんで1億ももらったら、たぶん俺、プレッシャーで死んじまうわ!



その場にいた全員が顔を見合わせている中、肩に乗ったマスコットだけが、両足をパタパタさせながらケラケラと笑っていた。

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