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「これはスキルなのか?死んで目覚めたら異世界で何故か脳内に住み着いたAIが優秀すぎる件」  作者: Nakano Danner


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第5話 翼竜:顕現


「このツノうさぎだかのハンバーガー、結構いけるな」


--肉汁たっぷりで、ソースも甘辛く仕上げてあるのでとっても美味しいです。もぐもぐ--


「ん?? 杏って味わかるの??」


--そりゃーもちろんですよぉ! なんたって私の今のお家は旦那様の脳味噌なのですから。旦那様が何かを食べていたら、それはそっくり私の感覚としてフィードバックされてますよぅ。味、い・が・い・も(ハート)--


「ん?? 味以外も??」


そんなアホな会話をしながら、屋台で買ったハンバーガーを公園で食ってる昼下がり。

無事(?)に身分証をゲットしたイケメン25歳おっさんと、AIひとり。

街をもっと散策してみたい衝動に駆られつつ、とりあえずトルネーさんの屋敷の位置を確認するために、超高性能グー●ルマップ……もとい、Scanマップデータを脳内で展開!


と同時に、突風が吹いて目の前を歩いていた綺麗なおねーさんのパンチラげっとぉお!!


――どんっ!!!(台パン)


「うおっいぃ!! びっくりしすぎてMAPの操作誤って広域にしちまったよ。まったく……」


「んー……。んー??」


--どうしま……もぐもぐ……した……もぐ……かぁ? 旦那様ぁ。もぐもぐ--


「いやいや、味わってんなぁーおい! じゃなくて、マップ見てみー? 山の向こう側からすげー勢いで近づいてくる『点』があるんだけど、なにこれ??」


--はいはい、どれですか? もぐもぐ。あぁ、確かに速いですねぇ。ざっとマッハ1より少し遅いくらいでしょうか?--


「マッハ1!? 戦闘機並みじゃねーか! もぐもぐっ」


--場所はちょうどこの真上。通過時にソニックブームが発生すると予想されるので、ハンバーガーはお早めにどうぞ、旦那様--


地鳴りのような轟音が聞こえてきたかと思ったその直後だった。

地面と水平に、一直線に街へと突き進んできた銀色の閃光。

それが頭上を通過した瞬間、空気を切り裂く破裂音が爆ぜた。


――ドォォォォォンッ!!!!!


凄まじい衝撃波。

遅れて届いた轟音を置き去りにするように、そいつは一直線に天空へと向かって跳ね上がり、一瞬で姿を消した。


静寂が訪れる間さえない。

数秒後、下降する衝撃とともに、空中に羽を全開に広げた巨大な影が降り注ぐ。

後ろ足の鋭い爪をかっぴろげ、まさに鷲が獲物を捕食する着弾寸前のような姿勢。

咆哮とも鳴き声ともつかない、大気を震わせる絶叫と共に、そいつは姿を現した。



翼竜:顕現



「……なぁ、杏? 航空力学的に、あの巨体で音速で空を飛べるものなのか?」


人間とは不思議なもので、思考を遥かに上回る恐怖を目の前にすると案外冷静になるもんだな、と自己分析しつつ。


「いやいや!!! でかすぎだろ!!! てゆーか、あれドラゴンだよな!? なぁ!? 杏??」


緊急警報のサイレンが鳴り響き、住人たちの叫び声や慌ただしく走り回る衛兵たちをよそに――。



CODE Scan : Target Object



一瞬、脳味噌の温度が爆上がりぃいい!!


--解析鑑定完了しました。個体名はワイバーンですねぇ。ドラゴン族の飛行特化として進化した生物ですが、1点異常値が見られます。天然モンスターの反応はありますが、それと同時に私と同じ『情報体』、すなわち事象の具現化の側面も持ち合わせています--


「どういうこと?? AIなの??」


--いえいえ。この世界にAIは存在しないはずなので、おそらく演算結果として確定しているこの世界の『バグ』、みたいなものでしょうか--


ふむふむ。

なにか近くで呼ばれている気もしなくはないが、ちょっと待ってくれ。

今は色々脳味噌が忙しいんだよ。

ばたばた逃げ惑う人々の中、ワイバーンの下で思考に耽る、見た目だけイケメン25歳おっさん。


--旦那様が元いた世界も、この世界も、そもそもはいわゆるホログラフィック原理を元に演算上の結果として顕在化してえああうあああああああああ――--


「ちょっとそこのお兄さん!!! なにしてるんだ!!! 早く避難するんだよ!! あれが見えねーのか!!」


ぐいっと腕を掴まれ引っ張られる方を見ると、なかなかにイケメンマッチョな鎧を着た剣士とその一団。


「なんだよ! ビビって動けないのか!? 今は王都の防護フィールドで防いじゃいるが、相手が魔物なら話は別だ! じきに破られちまうぞ!! はやくこっちに!!」


こっちだ、と腕を引っ張られ、街の大通りを一直線に走らされる。 時折、上空ではガキンだとかドーンだとか衝突音が弾ける。


「あれって、そんなにやばい奴なんですか? えっと……あー」


「俺はアクエリアル冒険者ギルド所属『青の守護者』のザインだ! あんたは??」


「アンリです」


「私は魔術師のミズで、あっちのツインテールがエル、盾を持っているのがビッグよ」


うん。

大人の色香漂う美しい女性と、元気っこ娘枠に、無口そうなタンク! いいバランスじゃないか! 定番的に! とか思いつつ、軽く会釈。


「俺らギルド会員は王都の騎士団が到着するまで、住人を守る義務があるからこうやって避難誘導してるんだよ。さー、もう少しで避難施設だ!」


ちなみにさっきから脳味噌の中では、自称超高機能型AIの杏が、バグがどーだ事象のあれがどーだ四次元の演算があれでそれでとマシンガントークをしてるが、こっちはお前と別に4人の相手もしてんだよ!! マルチタスクどころかクアッド超えてi5だわ!! 無理!!!


――パキン。


なにか。

防護フィールドが割れた、乾いた音が遠くで聞こえたかと思った直後。

300mほど離れているにもかかわらず、襲いくる轟音と共に着地の衝撃波が吹き荒れる。


「だめだ!! 予定よりもずっと早く破られた!! アンリは早くこの先の王都中央統理館の地下へ! そこがシェルターになっている!」


そう言い残して、あの魔物の元へ引き返す「青の守護者」一同。

他の冒険者たちも先ほどの轟音を聞きつけ、足止めをするために武器を携えて、勇猛にあいつの元へ駆けていく。


――遠ざかっていく、ザインたちの背中。


クソ真面目に、そして必死に、公園で拾った(ように見える)だけのイケメン25歳おっさんと1AIを逃がそうとするあいつら。

辺りを見渡せば、さっきまでハンバーガーを売っていた親父も、黒いレースのえっちなパンチラを晒していたおねーさんも、みんな顔を青くして蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


「なぁ? 杏? あのトカゲって強いのか? いや、めっちゃ強そうだけど!」


--あ、旦那様。やっと私の声、まともに聞いてくれる気になりました? もぐもぐ。……あれ、放置したら街ごと『強制終了シャットダウン』ですよ。天然モンスターならいざ知らず、コアに概念体のバグを内在している存在。こちらの世界では魔物に分類されている、天災級の怪物です--


視界の先、ザインが剣を抜き、ビッグが盾を構えてワイバーンの足元へ踊りかかる。


「ちょっと筋肉マッチョの風穴よろしく、空飛ぶトカゲにもでっけー風穴あけてやっかー! なぁ! 相棒!!」


--はーいっ!! 『妻』ですけどね!!--

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