第11話 AI無双
妖精が原寸大の148cmとして受肉したもんだから、にゃんにゃんろーでぃんぐの後、1階に降りてトルネーさんと顔を合わせれば腰を抜かすほど驚かれ、迎えに来た『青の守護者』一同にこれまた驚かれ。そりゃー昨日まで羽が生えたミニマムだった妖精が実寸でいるわけですから、気持ちは大変お察しいたします。
「杏ちゃん!?!?」
迎えに来た『青の守護者』御一行のミズさんとエルさんが、杏を見るなり夢の国のあいつを見つけた時のごとくハグしまくり。ザインなんかは「杏ちゃんさすが! 妖精族はすげーな!」なんて、この実寸大に違和感すら覚えてない。妖精族ってそんなすごいのか??
「かーわーいーーーーーーー!! ねぇねぇ?? うちの子にならない?? ねぇ??」
なんて猛烈な勧誘を受けつつ、贔屓目に見ても俺の趣味全ツッパの可愛すぎるAIひとり。
「大変うれしいのですが、私は旦那さま一筋ですのでっ(ふんすっ)」
なんて耳に入れば、小生意気ではあるものの男冥利に尽きるってもんで、はい。
結局、「妖精族はマスターの魔力次第で大きくなったり小さくなったりできるんですよー」なんて耳障りのいい嘘八百を並べ、夜通し受肉のためだけに心血を注いで開発した『エンジェルハートくん1号』という現代科学の粋を集めたアーティファクトをぼかしつつ、いざクエストに参ろうぞ!!
てな朝のバタバタ劇。
「ねぇ? 杏ちゃんはやっぱり妖精族だから魔法とか得意なの?」
魔法使いとしてとても気になる様子のミズお姉様。
「そうですねぇ。自慢するわけではないのですが、そもそも魔力の結晶体のようなものですから、人様が使われる魔法より高出力な魔法を使えますよっ(ふふん)」
なんて、こいつほんとAIというよりも、やり手の押し売り営業ウーマンか詐欺師かってぐらいにスラスラと出てくる出まかせ。
「妖精族なんて滅多に出会えないし、杏ちゃんみたいな超かわいい子なら尚更お姉さん興味津々だよ」
すでに臨戦ナンパ態勢のお姉様。 俺もナンパされてぇーーー!!
どんっ!!!(特大台パン)
あ。 実体化しても脳みそに意識だけは叩き込めるんですね。 さすがAI!!
--そもそも、私の情報体としての本体は旦那様の脳みそにずっといますから当たり前です!--
ん?? ということは、実体化の杏さんは触れるホログラム的な??
詳細な技術的なお話をすると100%読み飛ばされるので、とりあえず簡単に4行で!
よろしく!
――やってることは魔物さんと似たようなもので、旦那様の脳内から『えんじぇるはーとくん1号』の仮想領域で仮演算してから脳みそへ送って演算負荷を軽減しながら、周囲の原子電子あれやこれやを構成要素として利用して作られているのがその受肉体というわけです。魔物の場合はこの魔石自体を直接触媒として生成されてますけど、私はそれを仮想空間として利用しているわけですねっ。すごいでしょ(えへへ)――
なんていうか遠隔コピーロボット的なアレか。
――ディスりました?? ねぇ??――
いいえとんでもございませんすごいなー杏は、ははははー。
そんなこんなで、ゴブリンの集落。
山の中の窪んだ小さな盆地のような場所に、ボロボロのテントのような物が5棟。
北側は山の斜面になっており洞窟が見える。
その前方に開けたスペースがあり、そこに10体ほどのゴブリンたちが昼寝したり、チャンバラしたりわらわらいるわいるわ。
「なー、ザイン? 要するに今日のクエストってこいつらを全滅駆除するのか?」
盆地から少し離れた森の陰に隠れて様子を確認する。
「ああ。その通りだ。放っておくと集団で近隣の村を襲撃して村人を殺して女を攫って食料を奪い尽くすからな」
「まじかよ……弱肉強食こえぇ……」
「そこに洞窟も見えるから、洞窟内にいるやつらも合わせると20体ぐらいか」
「多いな」
現代社会でいうところの、野犬が20体ぐらいで襲ってくる感じか??
「ひとまずミズが火系統の魔法を広場に放って、俺とビッグが残党を処理しつつ洞窟の出入り口で応戦。適宜エルが後方から回復。詠唱が終わり次第、次の魔法をミズが洞窟へ放つ。そんな感じか」
なるほどね。 確かに安全面やら効率考えたら突撃してわちゃわちゃやるより全然理にかなってるわ。 さすがベテラン!
「では、気づかれないように広場正面の木陰まで移動だ!」
気配を殺しつつ、ゴブリンたちに気づかれないように正面まで移動し、木陰に身を潜め隙を伺う。
「んーと。ゴブリンさんを全滅させればいいんですよね??」
等身大美少女がひょこっと割って入ってくる。
「そうだよー、杏ちゃんは危ないから私の後ろにいてね」
と、エルが後ろから抱きつく。
「えっと。一度私と旦那様に任せていただいてもよろしいでしょうか?」
ん?? 俺も??
一同顔を見合わせてひと悩みしたあと、妖精族だしなにかいい案があるのかもとお任せモードで、ゴブリンを警戒しつつ後ろに下がって待機。
「で、杏さん?? どうするの??」
「どうするもこうするも、これが一番手っ取り早くないですか??」
パタパタと無防備に広場前に駆け寄る148cm。
ゴブリンたちが杏に気づき、一斉に向かってくる。
CODE : gene Rain mode GOLIRA-RAIN
いつものあれが脳みそに鳴り響いたと思ったら、局所的にゴブリンの頭上にゲリラ豪雨が襲い、激しい雨がゴブリンの足を止める。
ん? ゴリラ?
CODE : gene Thunder
間髪入れず、またまた例のそれ。
一瞬カッ!と光ったかと思うと電気、いや雷か!
水で十分な伝導率を獲得した広場に稲光が走り、阿鼻叫喚のゴブリンたちの叫び声がこだまする。
いや、確かにこれは最高効率だわ。
と振り返ると、あんぐりと口を開けた『青の守護者』御一行。
わかるよー、その気持ち!!
洞窟内から武器を持ってわらわら出てくる残りのゴブリンたちに、AIの非情の追撃。
CODE : gen Fire mode Strike
杏の手のひらから発せられた大きな火の玉が、超低空飛行で洞窟目掛けて飛んでいく。
ストライーーークッ!! ターキーどころの騒ぎじゃねーなぁ!
ここまでわずか10秒ほどか。
なんというか、まさに無双。
可愛い顔して鬼畜の所業とはまさにこのことで。
全滅を確認した後、くるんと振り返る天使のようなその笑顔。
「えへへー。どうですかぁー?(ドヤっ)」
あれ? 俺の出番は?




