4:瘴気を晴らす晴天
『魔女のアリス【4:瘴気を晴らす晴天】』
ルーサットとの戦いを制したアリス達。
だがソニアは負傷し、ギャラクシアの一室にて治療されていた。
「ッグ…。ここは…。」
ソニアはボロボロの研究室で目覚めた。
「大丈夫ですか?」
「あんたは…。」
知っている声、顔。
(人形)「はい。また、お会いしましたね。裏大陸で今動けるのは、我々屋敷の人形達だけですので。」
「アリスは無事か?ルーサットは…?」
動こうとすると、まだ体が痛む。
「アリス様は守ってくれたおかげだと、言っていましたよ。ルーサット様は、”魔物に魔法をかけられていた”そうなのですが、ご無事です。」
「魔物が魔法を使うか…。でもまぁ、二人とも無事だったんだな。…爆発に巻き込まれたが、思ったより動けそうだ。」
「魔法のおかげでしょうね。ですが今日までは、休んでいてください。」
無茶は禁物である。
一つの場所を取り戻した今、竜王までの道のりを考え、
しっかりと休んでおこう。
―――――
ーチュン…!ー
欠けた窓。斜陽が直接、目に当たる。
「もう朝か…。」
(人形)「外の時間と同じように、ギャラクシアのドームは動いています。…本来の機能が、戻ったようですね。」
欠けた窓から見えるドームの内側は、晴天の空だった。
「居たのか。」
―スッ…。―
ソニアは身を起こし、床に足をつけた。
「もう動ける。何かあれば手伝うが?」
「そうですね…。外へ行ってみてください。色々と、見えるものがあると思います。」
―――――
「アリス。」
建物が幾つか、建っていたのだろう。広いスペースがある。
崩れた瓦礫を巧みに使い、簡易拠点が建てられていた。
「動けているから、大丈夫そうね。」
―シュイイイン…!!!―
背中を向けたまま、アリスは言う。
「アリス…。ずっと、治しているのか?」
そこには中央部にて、ルーサットの攻撃をくらった魔物達が並べられていた。
「まぁね…。この子達が、動けるようになれば…。」
一日中だろうか。振り返ったアリスは疲弊していた。
「君か、ソニア。」
―スタッ…。スタッ…。―
後ろから呼ぶ声がする。
その者はこちらに近付いてくる。
(ルーサット)「アリス様は治療すると言った。もう、彼らに息はないが…。」
ルーサットの放った光線は、魔物達の肉体に穴を開けた。
ある者は、穴だらけになってしまっている。
「少し、離れて話そう。アリス様には話したが、君にはまだ話していない。」
アリスが離れて見える位置まで、ソニア達は移動した。
―――――
「あの時、正気には見えなかった。」
「…ある日魔物の軍勢と戦った。が、敗北した。しばらく経った後、私は魔法をかけられたんだ。そこまでが、私にある支配の記憶だ。」
「魔物は、ルーサットや人々を、拘束していったのか?」
「そうだな。あまり長くは見ていないが、殺しはせず生かされていた。…ソニア。私は思う。”魔物が魔法を使えるはずがない”。であれば、セレスティア様に何かあったのではないか?そう考えてしまうんだ…。」
「俺は次の目的地に進んで行く。アリスもそのはずだ。眷属達や大魔女も、魔法の影響を受けているかもしれないな。」
「やはりそうなるだろうか。アリス様から聞いたが、私は暴走した。眷属達やセレスティア様は、二人の敵になる可能性がある。」
「ついて来る気はないか?」
「竜王への旅…。賛成したいが、ここを守る力は必要だと思う。ひとまずドームに、魔物へのバリアを付与してみようと考えている。」
「…それもそうだな。」
「ソニア。私はここに残るが眷属の中には、旅へ同行したいと思う者もいるだろう。どうか、アリス様と裏大陸を頼む。…魔物との対話は、修羅の道だ。その果てに、幸福があるのかもしれないが…。」
「任せてほしい。俺は覚悟をもって、裏大陸に来た。」
ルーサットと対話をしたソニア。
ルーサットはギャラクシアに残る選択をした。
これから行く目的地でも、眷属達と会うだろう。
その者達が仲間となるか敵となるか。
定かではないが、向かわなくては。
―数日後―
「大丈夫か?」
「えぇ。だいぶ楽になったわ。まだ治せていないことが多いけれど、行かなくてはね。…結局あの魔物達は、動かなかったわ。治した意味は、あったのかしらね…。」
(ルーサット)「拘束された魔物達は、見ていたかもしれません。であればあなたの行動は、彼らとの対話を、近付けるものになりうる。…ですからどうか、ありのままで進んでください。…アリス様、またお会いしましょう。」
「…えぇ。出発よ。」
次なる地へ向かう二人。
静かな森を進んでいく。
こんばんは、深緑です。
次の区切りまでの話は、数日開いて投稿します。




