3:天に輝く星
『魔女のアリス【3:天に輝く星】』
―銀河衛星:ギャラクシア―
巨大なドームで囲われた場所、"ギャラクシア"。
「星をよく、見てたんだ。最近もよく、見に行くよ。」
ドームの内側には、晴天の星々が輝いている。
「"星は重要"だと、お母様は言うわ。星を見る行為は、意味をもつのでしょうね。…そしてここは、"銀河衛星:ギャラクシア"よ。」
「映してるのか?」
ドームの内側から見える星は、"雷の国:ネオ・ランド・シティ"で見る
映像のように、くっきりと見える。
「いいえ、見ているのよ。"宇宙"を。お母様はいつの日か、星の外へと行きたいらしいわ。…実際、見えるのよ。」
「見えるって?」
「"宇宙を移動する存在が"。だから、存在するはずなのよ。"別の星と、そこに生きる生命"が。」
アリスは語った。
星の外、宇宙に広がる事実を。
「星の外か…。もしかしたら…。」
「あなたも興味があるの?」
「まぁな。」
―スタッ…。スタッ…。―
上を見て雑談をしていると、音が聞こえ始めた。
それは地面を歩く音。
隊列のように整列し歩く、規則性で。
「アリス…!隠れるぞ…!」
―バッ…!!!―
アリス達は、割れた窓を跨ぎ建物の中に入った。
廃墟と化した風貌である。
「グウウウ…!!!」
(ソニア)「あれは…。」
魔物が均等に配置され、その内側を歩く人々がいる。
拘束具などはないが、疲弊しきっている人々。
恐怖や暴力で、抑えられてしまったのだろう。
逃げる素振りはない。
「裏大陸の人達よ…!ここの研究者や、その家族だわ…。」
アリスは少し、窓から身を出している。
「アリス…!後ろに下がれ…。魔物の数が多い。救うべき人も。今出ればあの人達は、最悪殺される…。」
ソニアは状況を分析し、アリスを納得させる。
「じゃあ、どうするの…?」
アリスは悩み迷っている。
道を示さなくては。
「アリス、力を貸してくれ。魔法で、俺の力を強化できるか?」
「未知の力だから分からないわ…。でも、そういった類の魔法はあるから…。」
―スタッ…。スタッ…。―
魔物と人々との距離が、遠くなっていく。
「ならやってみよう…!波動で、魔物達の精神を攻撃する。あんな多くにやったことはないし、魔物に試したこともない。でもやれるはずだ。アリスのお母さんと、俺の考えが正しければ。」
「…。"彼らに悪意はない"…。」
セレスティアは言った。
竜王が引き連れた魔物達が、望んで進んでいるわけではないこと。
ソニアは感じた。
空っぽの気持ちを。
「…!やってみましょう!!!」
―バッ…!―
アリスは両手をソニアに向け、力を込める。
―シュイイイイン…!!!―
アリスの手から輝く光は、ソニアの体へと流れていく。
「よし…!後ろからついてきてくれ。…失敗したら、俺がどうにかする。」
「…ソニア。その時は、私もやるわ。」
「…分かった。」
―バッ…!!!―
アリス達は窓から飛び出し、魔物と人々との距離を縮めていく。
(ソニア)「全員助ける…!殺させない…!!!」
―ダッ…!ダッ…!―
大きく鳴る足音に、後ろの魔物達が気付いた。
「グオオオオオ…!!!」
唸る咆哮は、前方の魔物達を止めた。
「行け、波動!!!力の意義を見せろ!!!」
―ヂュミミミ…!!!―
ソニアが剣に纏わせた波動は、斬撃ではなく波紋のように広がっていった。
(人)「魔女様…!!!」
「安全な場所に行きなさい!ここは私達がやるわ!」
―ダダダ…!!!―
人々は一斉に、その場から去った。
「私の言葉を信じて。彼の背中を、頼りなさい。」
「グググ…!グオオオオオ…。」
魔物達は遅くとも歪な動きで、ソニアに近付く。
「ック…!効いてるぞ…!もう少しか…!!!」
―ヂュミミミ…!!!―
ソニアはアリスがやったように両手を向け、波動を飛ばし続ける。
「グオオオオ…」
―ドサ…!―
魔物達は吠え、その場に倒れた。
「こんな、ところか…。」
波動を酷使したからだろうか。ソニアは少しフラついた。
「ソニア…!」
―バサッ…!―
ソニアは膝を着いた。
後ろで構えていたアリスは、ソニアの元へ急ぐ。
「アリス…!魔物を拘束しろ!!!いつまでもつか分からない…!」
―バッ…!バキン…!バキン…!―
アリスが放った魔法は、魔物達の体に鋼鉄を纏わせた。
「これで、大丈夫だと思うわ。」
―サッ…。シュイイイイン…!―
アリスも膝を着き、ソニアに手を向ける。
「回復か...?」
「えぇ。」
(人)「アリス様…!」
逃げていた人だろう。
一人がアリス達の元へ駆け寄った。
「どうしたの?」
「伝えておきたいことがありまして…。」
―ドン…!ドン…!ギュイーン…!―
ギャラクシアの中央。精密で巨大な機械が動き出した。
「魔物…。何をしてるんだ?」
薄っすらだが、魔物の姿が見える。
「中央にはまだ、強力な魔物達がいます。それとアリス様…。"ルーサット"様が、あの中央部に囚われております…。」
「…!生きてはいるのね…。」
「…それは誰だ?」
「…お母様には"六人の眷属"がいるという、話をしたわね。ルーサットはその一人。銀河の魔法を扱うわ。」
「魔法…?絶滅したんじゃないのか?」
「見たところ騎士様でしょうか?ルーサット様のように眷属の方々は、セレスティア様より授けられた魔法を、扱えるのです。」
「決して弱くない相手よ。その魔法の、探求者達でもあるもの。」
「そうか。…でも、行くよ。」
「…向かわれますか?」
「そうね。人々を救うため、屋敷を出たんだもの。」
「お気をつけください。…あの魔物達には、我々がやれることをしておきます。」
「ねぇ、魔物達なんだけど…」
「…アリス様、分かっていますよ。セレスティア様はおっしゃっていました。叶えたいと。"童話のような理想郷"を。」
「…。あなたも気をつけて。」
「はい。」
眷属の一人、ルーサット。
彼を助けるため、強力な魔物達がいる中央部に向かう。
―――――
―ギギギ…!ギュイーン…!―
ギャラクシア中央には、精密な機械が設置されている。
それは先程起動し、光を発し始めた。
「あそこ…!ルーサットだわ!」
アリスが使用した魔法。
出現した液晶越しに、中央の機械や魔物を見た。
すると機械を囲む魔物達と、そこに取り付けられた、
ルーサットの姿が見えた。
「何が起きてるんだ…?」
機械に取り付けられた人間という、気味の悪い構図に困惑する。
―ジュミイン…!ドオオオオオオオオオ…!!!―
すると機械は回転を始め、陣が展開した。
そして空へと、光線が放たれたのだ。
「ソニア…。止めなければいけないわ。」
アリスは杖を強く握り、その場に立った。
「"星は宇宙を照らした、原初の光"。そう聞いたの。きっと、"誰かの力"なんだわ。それを吸おうとしているのかも。星の力を、何に使うかは知らないけれど…。だってあの機械は、星を吸うものだし…。」
「"クラマドの復活"…。倒したとは聞いたんだ。だから、復活させるんじゃないか?その時は、"大戦"がおこるはずだ…。」
タイダルは以前に語った。
この星に降り注いだ、終焉の災いを。
「対話ができなくなりそうね…。」
「行こうアリス。全部、助けてみようか。」
―バッ…!―
瓦礫から身を乗り出し、ルーサットのいる中央へと走り出す。
「グオオオオオ…!!!」
魔物はその音に気付いた。
魔物達は威嚇し、攻めてくる。
―ヂュミミミ…!!!ザン…!―
向かってくる魔物に向け、剣へ波動を纏わせ、斬りつける。
直接波動を流したからだ。斬られた魔物達は、その場に倒れていく。
「数が多いな…!」
魔物達に囲まれたアリス達。
「グオオ…」
―ファァァ…!!!―
中央から星々の光線が、乱射された。
「グオオオオオ…!!!」
魔物達は穴が開き、倒れていく。
「ソニア…!」
―ファン…!バキ…!バキ…!―
アリスは杖を構え、障壁を展開した。
―フオオオオオ…。―
辺りの魔物は全員倒れ、周りの瓦礫は粉々になった。
「怪我はないかしら?」
「あぁ。…。」
―スタッ…。スタッ…。―
「アリス…。」
中央の方向から、何者かが歩いてくる。
―バッ…!!!―
その者が煙を払い、姿が見えた。
(ルーサット)「…。」
フラフラとした歩き方で、ルーサットは現れた。
―ビュオン…!!!―
指をアリス達に向け、光線が放たれた。
(ソニア)「…!」
―ザン…!ドオン…!―
ソニアは居合で、光線を切り分けた。
分裂した光は、後ろで爆発した。
―ギュイーン…!!!―
ルーサットは再び、指を向けた。
先程より光が集まっている…。
「ソニア…!目覚めたけれど、ルーサットは変よ!!!正しく認識できていないようね!!!」
「なら目覚めさせる…!!!」
―ファァァ…!!!キラ…!キラ…!―
ルーサットは浮かび、手を広げた。すると周りには星々が現れ、光り出す。
(ルーサット)「去れ魔物達…。私は人を、守らなくては…!」
―――――
―バッ…!ズドドド!!!―
ルーサットが手を振り、星々が光線を放つ。
―バッ…!ザン…!バァン…!―
アリス達はルーサットの攻撃を避けつつ、空中のルーサットを狙う。
「ダメだな…!当たらない…!」
「私もよ…!避けるのに精一杯だわ…!」
降り注ぐ攻撃の中で相手の位置を確認し、攻撃することは難しい。
「アリス…!」
攻撃の手は止まない。
―バッ…!―
ソニアはアリスを背負い、走り出す。
「狙えるか!?…俺は避けることに集中する!」
「任せて…!」
―バッ…!ビュイイイン…!!!―
ソニアは波動を纏い、俊敏に避けていく。
アリスは力を込める。
―ギュイーン…!!!ドドドドドド!!!!!―
ルーサットが放つ攻撃の威力や速度が上がった。
―バッ…!―
更に波動を纏い、俊敏に動く。
「構わず溜め続けろ!絶対に当たらない!」
「えぇ…!」
―ギュイーン…!!!―
杖に溜めた力は、限界に達した。
「魔法撃つわ!反動がくるから、気をつけて!!!」
―ドオオオオオオオオオンンン…!!!―
アリスはルーサットに向けて、魔法を放った。
反動でソニアの動きは止まり、アリスは背中から降りる。
ルーサットの攻撃が数発、アリス達に向かう。
―ザン…!ザン…!―
「そのままだ!!!」
ソニアは数発の攻撃を防いだ。
(ルーサット)「ッグ…!」
ルーサットは空を飛び、アリスの攻撃を避け続ける。
「当たらないかもしれないわ…!!!」
―バッ…!―
アリスの肩に手を乗せ、波動を送る。
―ヂュミミミ…!!!―
「大丈夫だ!絶対に当てられる!」
「これは...。分かる!!!」
―バッ…!―
アリスは正確に、ルーサットが行く先を狙った。
(ルーサット)「…!?」
―ドオオオオオオオオオ…!!!―
ルーサットは光に呑まれ、撃墜されただろう。
―サァァァ…。―
光が落ち着き、周りの景色がハッキリと見える。
(アリス)「…いない?」
そこにルーサットはいなかった。
―シュン…!!!―
手に光を溜めたルーサットが、アリスの後ろへと現れた。
(アリス)「…!瞬間移動…!」
「アリス後ろだ…!!!」
―バッ…!―
ソニアは駆け寄り、アリスは後ろへ倒れ込む。
―ヂュミミミ…!!!ザン…!―
波動を纏った剣は、ルーサットの腕に命中した。
―ドオオオオオオオオオン!!!―
上方に向かってルーサットが溜めた光は、大きく爆発した。
―バタッ…!―
ルーサットはソニアの攻撃をくらい、ソニアは爆発に巻き込まれ
その場に倒れた。




