2:光を目指して
『魔女のアリス【2:光を目指して】』
屋敷の庭へと出たアリス達。
―キィィィ…!―
門が開く。
ここから先は未知の地。
「さぁ、行きましょう。」
―サッ…。―
「どうかお気をつけて。」
人形は静かに、屋敷の前に立っていた。
「えぇ。必ず戻ってくるわ。…ソニア。屋敷の外にある森を出たら、魔物達が必ずいるわ。私の結界では、そのくらいが限界なの。」
「分かった。…行こう。」
門を潜り抜け、森へ入っていく。
裏大陸解放の旅へ。
―――――
森を抜けたアリス達。
結界を抜けた先は、黒く歪んだ不気味な景色だった。
「気分が吸われていきそうだな…。」
―ヂュミミミ…!!!―
突然、ソニアは波動を纏った。
「アリス…!構えろ!!!」
―ザッ…!ザッ…!―
草木を踏みしめる音がする。
(魔物)「グァァァァ…!!!」
瘴気を纏った魔物が現れた。
「表大陸にいる魔物とは違うな…。なんて言うか、"空っぽな気がする"。」
魔物がもつ殺気や、思いを波動で感じたソニア。
だがそれは、今までとは違う感覚がした。
「お母様も、似たようなことを言っていたわ。"彼らは生を受け、悪の道を歩いているけれど、それを望んでいるわけではない"って。」
「悪の道を、望んではいないか…。」
「グオオオオオ…!!!」
魔物は距離を詰め、戦闘の意志を示した。
―グッ…!―
杖を握り、アリスは言う。
「でも、私には分からない。"彼らとの対話"ができるのか…。」
「…今じゃなくていいさ。分かった時に、対話すればいい。でなきゃ、死ぬ。」
「グオオオオオ…!!!」
魔物は勢いをつけ、飛びかかってくる。
―ザン…!―
ソニアは踏み込み、攻撃を避け魔物を斬った。
「今は戦おう…!俺達が死んだら、何も残らない…!」
「えぇ…!」
魔物は立ち上がり、更に目を鋭くした。
―――――
ーキュイン…!ズドン…!!!ー
アリスの放った光線は、魔物に傷を負わせた。
「ギャオオオン…!!!」
魔物は堪え加速し、アリスへ近付いていく。
―ヂュミミミ…!!!―
ソニアは波動を纏い、魔物より素早く加速した。
―ズサン…!!!―
加速を受け振りかざした一撃は、魔物に深く食い込んだ。
―ドサッ…!!!―
血を流し倒れた魔物。動きがない。
「終わったかしら…?」
「そうだな。」
―シュウウウ…。―
波動が薄れ消えていく。
「不思議な力だわ…。」
アリスはソニアに近付き、体を重視して見る。
「波動って言うんだ。…色々できるんだよ。」
「"魔法"とは違うわね。"どこからそんな力"が…?」
「さぁ?突然使えるようになったからな。…じゃあ、魔法ってなんだ?」
「んー…。」
アリスは例えを考えた。
「生身の状態で火は起こせないし、水を生み出せたりはしないでしょう?でも、魔法にはそれが出来る。…"神が創った理を、無視する力"。そうやって、お母様は言っていたわ。」
―スタッ…。スタッ…。―
二人横並びで歩いて行く。辺りに気配は無い。
「魔法を使う存在は、もう二人だけなのか?」
「一族は遠い昔に、滅ぼされたそうよ。」
「…悪いな。」
ソニアは自分の過去と比べた。
すると自然に、謝罪の言葉が出ていた。
「別にいいのよ。"滅ぼされるべき種族"だったらしいから。…生命全てが神から創られたのなら、私に流れる血は、"悪の神:クラマド"からの生まれかもしれないわね。」
ソニアは可哀想だと思った。アリスが何年生きているのか定かではないが、
年端もいかない少女が世界の真実を知り、それを平気で話していることが。
「…もしそうでも、アリスは大丈夫だな。俺には、滅ぼされるべき命だとは見えない。」
「…。」
―ギギギ…!ギギギ…!―
様々な装置が動いているのだろう。音がする。
巨大なドームで囲われた場所が、目の前にある。
「人を、救うんだろ?」
ソニアはアリスの方を見た。
「そうね。」
とんがり帽子で顔が見えない。
アリスの返事は平坦に聞こえた。
人を救うという意義は、もっているのだろう。
だが自身や魔物の命については、答えを出せていないようだ。
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