第4話 配信調査
結衣が配信しているというチャンネルを教えてもらった。
チャンネル名は『ユユ』というらしい。配信サイトで検索してみると、本当に登録者数が一万人もいる、有名な配信者だった。
動画の再生数も千回前後を維持しており、安定した人気があるようだ。
ただ、配信活動をしていると聞かされ、僕は少し不安になった。
もしかすると、何か失言でもして炎上しているのではないか……。親としては確認しておく必要がある。
そこで、動画のコメント欄を開いてみた。
しかし、書き込みは「お疲れ〜」「あそこのお店に売ってるお肉美味しいよ〜」といった感想ばかりで、炎上の気配はまったくない。ひとまず安心した。
社会人になってからは配信動画を見る機会もほとんどなかったので、今はどんな配信が人気なのか少し覗いてみる。
どうやら現在は、ダンジョンに潜って魔物を倒したり、探索したりする“ダンジョン配信”が流行しているらしい。
昔はゲーム配信が主流だったのにな。
やはり、ダンジョン撮影用ドローンが開発され、比較的手頃な価格で購入できるようになったことが大きいのだろう。
僕も副業でダンジョンに魔石採掘に向かったとき、すれ違った人たちがドローンを飛ばしながら何か話しているのを見かけたことがある。
あれは配信していたのだと、今になって気づいた。
ダンジョン配信では、十階層や二十階層まで到達する人は珍しくなく、登録者が百万を超えるような人気配信者ともなると、「五十階層突破!」などとサムネイルに掲げている。
やっぱり、生まれたときからダンジョンがあるのが当たり前の世代は、適応する子が多いんだな……と、年齢差を感じた。
この姿がバレてしまい、いろいろとごたついたせいで、お風呂に入れなかった。
お風呂に入るのは正直面倒だが、入ってしまえば好きなので、今日はしっかり浸かることにした。
「ふう〜……」
湯船に浸かりながらいろいろ考えていたけれど、娘に話せたことで、だいぶ肩の荷が降りた気がする。
ずっと、このまま隠し通せるのか、バレたらさらに嫌われるんじゃないか……そんな不安があって、落ち着かない日々だった。
だけど、バレてしまった今では、その不安が消えたおかげで、今日はかなり長湯してしまった。
身体を拭くのは、人間のときよりもずっと面倒だ。
全身が毛に覆われているせいで、どうしても時間がかかってしまう。
特に胸元あたりは毛が多く、もふもふとしている。
おそらくだが、急所を守るために毛が密集しているのだろう。
そのため、タオルで拭いても水気が残り、結局ドライヤーでしっかり乾かさなければならない。
切ってしまえば早いのかもしれないが……もし元の姿に戻ったとき、どんな影響が出るのか分からない。
だから今のところは、何もせずに放っておくことにしている。
身体を拭き終わり、寝巻きを手に取った。
いつもなら体を隠すために大きめの服を着ていたが、もう結衣にはバレてしまったので、今日はいつもの寝巻きを着ることにした。
身長は変わっていないから着ることはできるが、胸毛が多くてボタンが閉まらない。
なので、第二ボタンだけを外したまま、第一ボタンを閉めてなんとか形にした。
「……あれ、自分の部屋に戻ってなかったの?」
ソファに座ってスマホをいじっていた結衣が、ふと顔を上げた。
「あ、パパ。こっち向いて」
「ん?」
『パシャッ!』
返事をして結衣の方を向いた途端、いきなり僕の写真を撮ってきた。
「ねえ、パパ。この写真、ネットに投稿してもいい?」
どうやら、さっき撮った写真をネットに投稿するらしい。
いや、僕の顔なんか載せても誰も得しないと思うんだけど……。
結衣がノリノリだったので、仕方なく許可した。
「いいよ」
「ありがとう」
そう言って、結衣は自分の部屋へ戻っていった。




