第23話 スパチャ
なんと、僕たちのアカウントが収益化申請に通り、ついに収益化できた!
ということで、僕と結衣で収益化記念配信をすることになった。ただ、どんな配信にするかは僕が考えなくちゃいけないらしい。
そこで、少し前に見た料理配信を真似してみることにした。
でも、普通の料理じゃ特別感がない――だから、今回はローストビーフ丼を作ることにした。
早速、ローブを羽織ってスーパーへ。二千円の牛もも肉の塊を購入。
夜ご飯に二千円も使うのは少し躊躇したけど、お祝いみたいなものだし……と思い切って買ってきた。
「パパ〜、配信何にするか決まった〜?」
「うん。料理配信する〜」
「良いね〜。じゃあ、パパはエプロン着てもらわないとね」
「うん」
料理している感を出すために、結衣から渡されたエプロンを着て、いよいよ配信を始めることにした。
「「こんばんは〜」」
【こんばんは〜!】
【収益化おめでとう〜!】
【エプロン姿可愛い〜】
【エプロン似合ってる!(一万円)】
「い、一万円もスーパーチャットありがとうございます!! え、えっと……今日は収益化記念として、ローストビーフ丼を作ろうと思います!」
突然の高額スパチャに、思わず動揺してしまった。
「え、ローストビーフ丼!? やった〜!」
結衣が嬉しそうに声を上げる。
【豪華〜!】
【美味しそう!】
【想像するだけでお腹空く〜】
結衣にカメラを持ってもらい、料理風景を撮ってもらう事に。
「じゃあ、まずは牛もも肉に塩胡椒をして、両面に焼き色をつけます。そして、ジップロックに入れて――空気をストローで吸って、空気を抜きます」
「パパ、空気吸ってる姿必死すぎて可愛い〜」
必死で吸おうとしているけど、あまり空気は抜けていない。それでも何とか頑張って、ようやく真空状態っぽくすることができた。
【がんばれ〜】
【可愛い〜】
【うんうん】
【その必死さ最高!】
「はぁ、はぁ、はぁ……じゃあ次に、お湯を炊飯器に入れて、その中に牛もも肉を沈めます。浮かばないようにお皿を蓋代わりにして、保温モードで30分待ちます〜。その間に、結衣にすりおろしてもらった玉ねぎを炒め、赤ワイン・はちみつ・ウスターソース・すりおろしニンニク・醤油・酢を加えて――ローストビーフのソース完成です〜!」
ーーー30分後
「30分が経ちました〜。どれどれ〜」
猫の手で薄くお肉を切ると、断面は見事なピンク色で、美味しそうだった。
「パパすごい!良い感じのピンク!」
【わあ〜美味しそう!】
【主婦力高い!】
【飯テロだろ!?】
「どんぶりにご飯を入れて、ローストビーフをご飯の上に敷き詰めソースをかければ〜ローストビーフ丼の完成です!」
【すごい!】
【うまそう〜】
【いただきます!】
【パパ天才!】
「お肉が柔らかくて、少し甘めのソースがご飯にぴったり!めちゃくちゃ美味しい!」
「でしょ〜」
「本当にパパってお肉大好きだよね〜」
「だーいすきだよ〜」
【大好き!その愛にスパチャ!(1万円)】
【お肉代(5万円)】
【もっと食べてほしい!】
【お肉代(5万円)】
【お肉代(5万円)】
【幸せそうで見てるこっちまで幸せ(5千円)】
【大きなお口かわゆい】
【お肉代(5万円)】
【お肉代(5万円)】
ご飯を食べながらコメントを読もうとすると、コメント欄が真っ赤。
一万円や五万円など、桁違いのスパチャが飛び交っていた。
「うにゃぁあああ!?」
「うぁあ〜、すっご!」
僕は驚き、結衣は唖然。
「え、にゃ、にゃああ!?お金は大切にだよ!? お金って、稼ぐの大変なんだよ!?」
「パパに貢ぎたくなるのは分かるけど、程々にね〜」
「もっと、美味しいご飯を食べるとか、有益な使い方をしなきゃダメだよ! 無駄遣いダメにゃ!!」
【賢い使い方しようね!(2千円)】
【ほどほどに!(1万円)】
【無駄遣い注意!(2万円)】
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スパチャは続いた。
「うにゃああ!!ダメだって言ってるのに止まんにゃいいい!」
アワアワしながらスパチャはもう要らないと訴えても、視聴者はスパチャを止めない。ご飯を食べ終える前に配信を終了した。
「パパ凄いことになってるよ」
配信が終わったあと、結衣が見せてくれた画面には――日間スパチャランキング1位になっていた。
「にゅうう……ダメだって言ったのに。おじさんに、そんなにいっぱい要らないのに」
少し落ち込むけど、嬉しいことではある。
「だけど、スパチャの5割近くを投げた『貴方のマスター』って人、やばいね」
「うん。僕がお肉大好きって公言したときの、『お肉代』って名目のスパチャが止まらなかった……怖かった」




