第21話 配信事故
カレーを食べ終えて、少しすると、配信の時間になった。
「じゃあ、パパ。配信するよ〜」
「ん〜」
もう慣れたものだ。配信をするのも、最初のころよりずっと気楽になってきた。
「「こんばんは〜!」」
【こんばんは〜!】
【きたきた〜!】
【うわっ、今日のミケちゃんかわいすぎ!】
【ワンピース!?似合いすぎでは!?】
【まぶしい……!】
「こ、これは、ユユが勝手に着せただけで……」
「だって〜お風呂のあと、ちゃんと体洗ってあげたんだもん。服も選んであげたの〜」
【えっ、お風呂で!?】
【尊い……】
【ユユちゃん有能】
【お風呂で洗われるミケちゃんとか破壊力高すぎ!】
「今日はね、パパとゲームをしてみたいと思いまーす!」
「ゲーム久しぶりだな〜」
結衣が持ってきたゲームをセットする。
配信画面には、ゲーム映像と僕たちの姿が並んで映し出されていた。
正直、こんなことまでできるなんて、結衣の技術力にびっくりした。
「今回は、順位を争うレースゲーム! マギカートをしていこうと思います!」
「ふぇ〜、初めてやるゲームだなぁ〜」
【おお、マギカート!】
【魔力で走るやつだね!】
【これは熱い展開になりそう】
【ミケちゃん、運転できるのかな〜?】
「よ〜し……!」
「パパ、勝負だよ!」
ゲームが始まる。僕と結衣は、魔法のカートで順位を競い合った。
「にゃ、にゃあ〜〜、にゃー!」
【ミケちゃん傾いてるww】
【体ごと動いちゃうタイプだ!】
【必死で可愛いw】
【あ〜今の舌ペロ見た? やばっ、可愛すぎ!】
「うにゃ〜、負けちゃった〜」
「パパ弱すぎ〜!」
結果は、結衣が一位、僕が八位。
うう、けっこう難しいゲームだ……魔力の使いどころが本当にむずかしい。
「パパ〜、少し練習したら?」
「やる〜!」
「じゃあ今日は、パパのマギカート練習配信に変更〜!」
「えっ、一人で……?」
不安そうに言ったけど、結衣は笑って画面の外に消えた。
仕方なく、僕は一人で黙々と練習を始める。
「にゃ、にゃあ、にゃ〜〜!」
【集中してるミケちゃん可愛すぎる!】
【あっ、また体傾いてるww】
【真剣な顔なのに舌が出てるのギャップすごい】
【この努力する姿……推せる(確信)】
【がんばれミケちゃん!】
「ふぅ〜……とりあえず、目標の三位でゴールできたので、今日の配信はここまでにしたいと思います〜。ばいニャ〜!」
そう言って、僕は配信を切った。
コメント欄には、まだ「おつかれ〜」のコメントが流れ続けていた。
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「配信終わったよ〜」
「おつかれ〜」
「ふにゃあああ〜〜」
ミケちゃんは、のび〜っと背伸びをして、大きなあくび。
そのままソファに腰をおろし、気の抜けた笑顔を見せた。
【あれ?配信……まだついてない?】
【まさかの放送事故!?】
【これは神回の予感】
【ミケちゃんオフモードかわいすぎ】
「アイス〜」
冷凍庫から小さなバニラアイスを取り出す。
包みをペリと剥がして、舌を伸ばし舐め始めた。
「ん〜、つめた〜い……でも、おいしい〜」
【アイス食べてるだけなのに破壊力高い】
【口元にちょっとついてるのかわいいw】
【ミケちゃんの癒し力やばい】
【真顔で見守るしかない】
アイスを食べ終えると、ミケちゃんはソファにゴロン。
尻尾がふにゃりと動いて、心地よさそうにまどろんでいく。
「ふぁ〜……少し横になろ……」
【おお……寝落ち配信突入w】
【寝息くるぞ寝息くるぞ】
【今日いち癒された】
「ふぁああ〜」
【ぐはっ……尊い】
【これは保存案件】
【寝息が聞こえるのヤバい】
【絶対天使だろ……】
そこへ、結衣がひょこっと画面に顔を出した。
「……パパ。配信、まだ切れてないよ?」
「ふぇっ!? にゃあああっ!?///」
【wwwww】
【パパあわててるw】
【このオチ最高すぎる】
【癒しと笑いのダブルパンチ】
「もぉ〜、恥ずかしいにゃあ〜!」
「はいはい、今度こそ配信終わりね〜」
結衣が笑いながらカメラを止める。
画面がフェードアウトしていく中、コメント欄には「おつかれ〜」のコメントが改めて流れた。




