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転職活動中のアラフォーパパに猫耳が生えた〜獣人猫配信者としてアラフォーパパは再就職しました〜  作者: 暁 とと


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第18話 お姉ちゃん腐ってる

僕の服を、結衣と菜奈さんが選んでくれたらしい。「かっこいい感じの服かな?」「流行の服を選んでくれたのかも」

なんて少し期待しながら、渡された袋を家で開けてみた。


中から出てきたのは――ワンピースだった。


思わず袋をまじまじと見つめる。

……いや、どう見ても僕のじゃない。


「結衣、これ袋間違えてるよ〜」

「え? それ、パパの服だけど?」


一瞬、言葉を失った。

念のため、もう一度中身を確認する。


「……これ、だよ?」

「うん、そうだよ」


信じられなくて、袋の中身を全部取り出して見せたが、結衣は首をかしげることもなく、満足そうにうなずいた。


「こんな可愛い服、着れないよ……」

「パパは可愛いから、似合うと思うよ?」


似合うと言われても、恥ずかしい。

――いや、これはさすがにハードルが高い。


「あ、その服。1着で三万円くらいしたからね。レシートはもう捨てちゃった」

「さんまん……!? そんなに高いの!?」


思わず声が裏返る。

冗談であってほしいと願ったが、結衣はケロッとした顔で続けた。


「あ、でも、結衣が着れば――」


そう言いかけると、結衣はすぐに首を横に振る。


「パパのサイズで買ったから、私には着れないな〜」


三万円もする服を、着ないままにしておくのももったいない。


けれど、着る勇気は出ない。


……いや、そもそもワンピースだ。どう考えても僕にはハードルが高すぎる。


とはいえ、結衣と菜奈さんが一緒に選んでくれた服だ。値段以上に、その気持ちがありがたい。だから、捨てるなんてできるわけがない。


結局、いつ着るかもわからないまま、そっとクローゼットにしまおうとすると、

結衣はどこか不満そうに頬をふくらませていた。


「せっかく選んだのに〜。パパ、絶対似合うのになぁ〜」

「い、いつか、着るよ」


背中越しにその言葉を聞きながら、僕は苦笑を浮かべた。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


映画館から帰ってから、翔太の様子がおかしい。


「翔太、どうしたの?」

「う、うん。なんでもない」


なんというか、魂が抜けたみたいな感じだ。

もしかして映画がつまらなかったのかな?

心配して聞いてみた。


「映画が面白くなかったとか?」

「違う」


そっけない返事。

うん、これは絶対になにかある。

そういえば、映画の前からこんな感じだったような……。

でも家を出る前は元気だったし。

あれ? 私が結衣と一緒にミケちゃんの服を選んでたときから、様子おかしくなかったっけ?


――さては。


「ねえ、ミケちゃんと何かあったでしょ?」

「う、なんもなかったよ!」


はいビンゴ。これはもう確定で何かありました〜!

あ〜もう、そういう時の翔太ってほんとわかりやすいんだから。

これは聞き出すしかないでしょ!


「へぇ〜、ゲーム欲しいって言ってたよね?」

「う、うん」

「そのゲーム、買ってあげるよ」

「え……で、でも、内緒にするって約束したもん」


……なにそれ。内緒の約束!?

やっぱり! 匂う、めっちゃ匂う。私の勘がビンビンに反応してる。


「お姉ちゃんにだけ教えてよ。絶対誰にも言わないから。

お姉ちゃんが話さなければ、約束を破ったことにはならないでしょ?」

「そ、そうかな……」


私は翔太から話を聞き出したいがあまり、適当な理屈を並べた。


「そうそう」

「じ、実は……」


翔太の口から話を聞き出せた瞬間、心の中でガッツポーズを決めた。

――ゲーム代約一万円の投資、見事に回収ッ!


ミケちゃんに連れられて密室の男子トイレで二人きり?

ミケちゃんが積極的に服を脱いで?

翔太が触って確認……?


いやいやいや、ちょっと待って。

着ぐるみかどうか確認って言ってるけど、それって完全にそういうシチュじゃん。


「密室」「息づかい」「思春期男子」――はい尊い。


自分の弟が攻めか受けか、真剣に考え出す私。

ミケちゃんがあの見た目でちょっと天然っぽいから……うん、これは弟が攻め!


ミケちゃんに偶然出会って、弟を偶然預けたら、ものの数分でその展開って……

むしろ私、立派なキューピッドじゃない?

翔太をミケちゃんに預けた私、天才かもしれん。


脳内で再生されるシーンは、もう完全に尊みの極地。

あ〜もうダメ。これは供給。新しい推しカプ、誕生の瞬間。

翔太×ミケちゃん、今夜から連載開始です(脳内で)。


――はぁ……尊い。


「ふぅ、ごちそうさまでした」

「え? お姉ちゃん、何か食べたの?」

「ま、まあ、そんなところかな」

「お姉ちゃん、息が荒くなってるけど……大丈夫?」

「だ、大丈夫! これはね、健康的なやつだから!」


翔太の心配そうな顔を見て、私は慌てて手を振る。

いや、ほんとに健康的だから。酸素が足りてないだけ。

尊みを吸いすぎて酸欠になってるだけ。


――弟よ。最高の供給をありがとう。

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