92.引っ越しと必要な物
という話を聞いた翌日、転移1ヵ月20日目。
「人の入れ替え、ですか?」
「あぁ。リットが言うには、こっちは本拠地兼育成場所にして、牧場は前線基地扱いにした方がいいだろうとよ」
「なるほど。こっちの方が防御がしっかりしている上に、周囲の大きな脅威もとりあえず一旦排除されてますからね」
と言う事で、牧場に避難していた人の一部がこちらに来て、逆に探索組の人達は牧場に引っ越しをする事になったようだ。理由はそんな感じだったので、それはそう、って感じだな。
逆にそういう移動をする分だけ、こっちの守りは固めておいた方がいいだろうって事で、緋朱の移動は無し。まぁ牛に配慮したのもあるのだろう。どう考えても絶対ストレスになるだろうし。気配がな。捕食者だからな。
まぁ普通に苔ゾンビも一般モンスターもいるし、苔ゾンビは高耐久の奴が混ざるようになってはいるんだが、それでも見通しは良くなっている。
周囲の建物の解体か修理は続けるそうなので、いずれはこの辺り全体に結界を広げるか、建物1つ1つに小型の結界装置を設置して家単位でなら暮らせるようにしたいらしい。
「こっちでも結界樹か結界装置か宝石は探しておきます」
「宝石?」
「魔法で結界を張る方法は教えてもらいましたからね。リットさんに。そして私の部屋の扉は壊れてなかったので、ちゃんとした強度がある事が証明されました」
「そういや壊れてなかったな。足跡はついてたが」
確かに私も、まぁもう仕事を依頼してくる人もいるかどうかは分からないが、こんなに大人数で暮らしているのは初めてだ。正直慣れない。というか、1人で過ごすのが好きだったからわざわざ住込み型の廃屋リフォームを仕事にした訳で。
牧場の事を考えると、一度拠点として認識して整備すれば、他の場所に行っても問題なくゲーム補正は働くだろう。つまり、こういう拠点をあちこちに作り、その拠点を中心にモンスターとゾンビから防御できる体制を整え、生活区画を作っていく、っていうのが理想か。
そうだな。ゲームではずっと同じ拠点に居たが、少なくともエンディングに辿り着いてしまえば(そこから後もやりこみは出来たが)、恐らく主人公枠がいなくても問題は無い。現実になってるんだから、それぐらいはあり得るだろう。
「まぁ理想は、それこそ住宅地単位で、ガッツリ壁で囲んでしまう事なんでしょうけど」
「そらそうだ。まぁそれはそれで崩される危険が無い事も無いし、何かあった時の備えはいくらあっても困らないからな」
という事で、引っ越していく人と引っ越してきた人がわちゃわちゃ入れ替わる日になった。とはいえ、私は引っ越してきた人が来た時に軽く挨拶をしただけで、後はここに来てから長い人が暫定リーダーみたいな形で色々説明していたが。
ただ、引っ越していった人はそこそこの荷物があったのに対し、引っ越してきた人の荷物は大変少なかった。いやまぁ荷物を持っていくのは良いんだよ。牧場への物資とかもあるだろうし、ちゃんとした数の服や家具を持って行けるならその方がいいから。
問題は引っ越してきた人はそういうのを持ってなくて、その人達が自由に持っていく分だけの服を用意しないといけないって事なんだよな。いやー、直前に段ボール箱をたくさん開けておいて良かった。
「それはそれとして、電動だと作業が早いな。楽だし」
まぁ私が開けているのは金属コンテナだし、そこから出てくるのは部屋の中における小さい家電製品なんだが。ミニ冷蔵庫とかケトルとか、部屋にあったらちょっと便利な奴。
工具類というか、便利家電以外のものが出ないなと思いながら、それでもまずは箱の数を減らすのが先、とひたすら開け続けている途中で、ふと気が付いた。
「あれ。この電動工具のバッテリー、宇宙人技術式のお掃除ドローンにも使えるやつでは」
実際試してみたら、どうやら正解だったらしい。地下倉庫でお掃除ドローンというか、お掃除ロボットが動き始めた。いやー勝手に掃除してくれるのは楽だね。バッテリーさえあればゴミの類はステーションに集めてくれるから、とても楽だな。
何より、箱を開ける作業をしながら掃除が進む。自動化と分業がとても大事なのは、外に転がってるアレコレの回収で思い知っていたから、感動もひとしおだ。
……まぁお掃除ロボット1台では到底間に合わない広さだから、バッテリーは何とかもう少し探しておきたいところだが。もしかして現実になった今、宇宙人と取引しないといけないというか、宇宙人から買うしかないのか?




