89.後始末開始
キウリさん(本体)はどうやら、専用ケースに入れられていたらしい。キウリさんの体(行動補助ユニット)を近くまで持っていくと、それこそゾンビっぽい動きで勝手に動き出して、玄関の隅にあった箱を開けて、そこに入っていたものを目の部分にはめ込んでいたから。
現在進行形でゾンビに怖い目に遭っている住人はドン引きしていたんだが、まぁこれは仕方ないな。キウリさん自身は、行動補助ユニットに大きな異常が無い事を喜んでいたが。
そうこうしている間にジェレック君と工一さんも、外まで追いかけてきていた宇宙人を返り討ちにして戻って来た。私が倉庫で無力化しておいた奴も含めて、一応まだ全員生きている宇宙人を本体状態で集めて、これをどうするかって言うと。
「ワタシタチ、シニニクイカワリ、フエニクイ。カエスカワリ、イロイロモラエル。ナニカホシイ?」
「[なるほど、人質交渉のようなものか]」
「……ちょっと思ったんですけど、もしかしてそれ、モンスターの素材とか、魔法核とかも使えるのでは?」
「アァ! タブンダイジョウブ。リョウシツノケッショウ、メズラシイユウキブツ、オオヨロコビ」
「[ほう? 有用な資源ではあるが、活用できているとは言えなかったからな。……とはいえ、何が手に入るのか分からんのでは要求のしようもないが]」
「とすると、何か一覧みたいなものがありゃ助かるな」
……ゲーム時代、モンスターと宇宙人からだけドロップする「ジュエル」ってものがあったんだよ。スマホゲームだったから要するに課金通貨だな。モンスターと宇宙人を比べると、宇宙人の方が圧倒的に多くの「ジュエル」を落としたんだが、あれってこういう事だったらしい。
「ジュエル」では本当に色々なものが買えたし、特殊技能を持った住人も購入する事が出来た。それこそ結界樹や壁を作る道具も一覧に並んでいた訳だが、それが現実になったら宇宙人から買えるって事は、あっちが集めていたものをこっちに流す、という形になるんだろう。
もちろん強力な武器もあったし、値段がバカではあったが「拠点の無いエリアに拠点を作る」事が出来る、それこそキウリさんが居た生活区画みたいなものもあった筈だ。
「あ、でも確実にありそうで欲しいのは、通信系統ですね。1ヵ月の時点でスマホも繋がらなくなりましたし、牧場といつでも連絡が取れると助かります」
「あぁ、確かにそれが一番優先だな。ならついでに電動工具も無いか? 流石に手作業だと限界があってな。欲を言えばグルスニールかそれに近い乗り物もあるといい。人数が増えるなら足も必要だ」
「[なるほどな。そういう方向なら俺様は金属加工用の炉だ。白鋼の素材そのものは鉄と炭と魔物の骨だからな。後は十分な火力があって扱いやすい炉があれば良い]」
「イイヨー」
ただここで希望を出すなら、ゲーム知識が無くても思いつく範囲かつ必須の設備、って事で、通信基地というかアンテナというか、そういうものにしておいた。ある事自体は知ってるんだ。宇宙人の技術の方で行くと「星間通信用アンテナ」だった筈だ。
で、私が具体例を出すと、工一さんが電動工具と乗り物、王子様からは金属加工が出来る炉の希望が出てきた。電動工具は私も使いたい奴だし、移動手段は大事。白鋼っていうのは魔法武器の基本素材だから生産できるに越した事はない。2人共助かる。
と言う事で、他の宇宙人の本体と魔法核、モンスターが体内に持ってる結晶と、いくつかのモンスター素材を持って、一旦キウリさんは外に出て行った。宇宙人の本体に関しては工一さんとジェレック君が外で戦って倒した分も集めているから、間違いなく全部の筈だ。
「……しかし、何故全ての扉を壊していったのか……」
「扉自体が割れたり歪んだりしてるし、蝶番もほぼ壊れてるから、総とっかえだなこりゃ。手伝うぜツミキさん」
「助かります。とりあえず扉の枠に残っているねじの撤去をお願いできますか。私はその間に、ひとまず入口を塞ぐだけの板を作ります」
「そうだな、流石に取っ手までつけてる暇はねぇ。倉庫は明日でもいいとして、人がいた所は何とか寝るまでに間に合わせねぇと寝れねぇだろ」
「幸いなのは、蝶番とねじそのものはまとまった量があるって事ですかね。取っ手代わりの穴を開けただけの板を取り付けるだけならギリギリ間に合うと思うんですが」
なお、私としては一番の被害はこれだ。本当にさ。誰が直すと思ってんだ? しかも夕食の時間の前に始まったから、本来ならもうとっくにご飯を食べ終わってそれぞれ休んでる時間だぞ?
鍵に関してはドアノブをそのまま流用すれば良いとしても、扉そのものが全部砕いて燃やすしかない状態になってるんだが? 板を切り出すだけでどれだけかかると? ゲーム補正あっても1日か2日はかかる作業になるんだが?




