88.一掃と理由
という事で、物陰から玄関前に、閃光手榴弾を投げ込んだ。
「グワァァアアアアアッ!!?」
という第一声は、恐らく指揮官だろう。もちろん私はその間に、近い方の見張りの宇宙人に「麻痺毒の投げナイフ」を突き刺して、遠い方の見張りの宇宙人に同じ投げナイフを投げている。
「――Þunraz!」
で、私が2人を無力化したタイミングで、どこかに隠し持っていたらしい杖で、王子様が指揮官に魔法を放っていた。お、おう。殺意が高いな。それ単体対象の結構デカいダメージが入る奴だろ。対象指定できる雷みたいなやつ。大丈夫? 生きてる? 指揮官が。
「[ヤヌシか。被害は確認できているか?]」
「住人の被害はたぶん怪我だけで、そこの怪我してる探索組の皆さんが一番重傷、工一さんとジェレック君はまだ逃げているようですが、敷地内にいた宇宙人は倉庫で無力化した1人含めてこれで全部片付いた筈です」
「[なるほど]」
「……ところで、誰かキウリさん見ました?」
全部片付いた、と言った所でほっとした空気が流れたのはいいんだが、キウリさんの名前を出すと、あれ? って首を傾げたり周りを見たりする人と、不自然に固まった人に分かれた。あー、見ちゃったかー。
いや、私も最初その情報を知った時は驚いたよ。普段ミニキャラでデフォルメもされてるのに、そこだけ何故かはっきり描写されてたからな。まぁ後で宇宙人の詳しい事を知って納得したけど。
何の事かって言うと、宇宙人による「拠点襲撃イベント」があった時に、住人に宇宙人がいると、だな。
「……すごい悲鳴は、聞こえました」
「あぁ……俺も聞こえた」
「私も……」
「お……俺は、キウリさんと、一緒、だったけど……」
「[何があった?]」
「……め、を。えぐり、とられて……う、動かなく……」
うん。そうなんだ。何故かきっちり、「両目が空洞になったミニキャラ」が用意されてて、それを発見する流れがあるんだ。突然のホラーに驚いて、最初見た時は端末投げちゃったからな。
もちろん人間だって目を抉り取られれば、高確率で死んでしまう。その後何の対処もしないならまず死ぬだろう。
が。
『イキテル、イキテル。ダイジョウブ』
死んでないんだよなぁ。と、思った所で、その、こう、きらきらした感じの声……? が聞こえてきた。当然ざわつくんだが、その、だな。
『キウリ、イキテル。ダイジョウブ。タダ、ウゴケナイ。コウドウホジョユニット、モッテキテクレルトタスカル』
「[……行動補助、までは良いとして、ユニットとはなんだ?]」
『ニンゲント、オナジカタチ。……モシカシテ、モウナイ? ヤカレタ?』
「[人間と同じ形……? と言う事はキウリ、お前の、所謂本体は違う形だったという事か?]」
『ワタシタチ、ニンゲンノメニトテモチカイカタチ。ワタシタチカラミルニンゲン、トテモキレイ。ミンナチョウガツクビジン。ムゲンニミテラレル』
「[……、ん?]」
そうなんだよな。
宇宙人の本体、目に見える部分なんだよな。なおゲームの中では人間側の科学者が「双晶型思念体系星外生命体」という名前を付けていた。
すなわち、宇宙人の本体は目であり、人間っぽく見えている為に「纏っている」部分は行動補助ユニット。もっと言えば人間を怯えさせない為の着ぐるみみたいなものなんだよな。
そういう種族? なもんだから、美的感覚も人間とは大幅に違う。でもって彼ら的美人美女っていうのは「2つの結晶がより同一に近く」「透明に近く」「内部に液体を有していて」「有機物で構成されている」となるらしいんだ。
「[に、人間の、目……? 目玉が本体という事か……?]」
『カタチハチカイ。ウツクシサ、ゼンゼンチガウ』
「あー……とりあえず、キウリさんの、身体? だと思ってたもの? を持ってくればいいんですかね?」
『ソウ。オネガイ』
つまり人間の眼球っていうのは、もはや存在が奇跡ってレベルで「美しい」らしい。そして「美しい」事が、キウリさんが長年地球観察をしていた理由であり、宇宙人が人間を狙う理由である。
「[……目が美しいのは分かったが、だとするなら何故お前の同族は危害を加えようとするのだ]」
『キレイダカラ、ホカンスル。ツカマエテ、ホゼンスル。マッタクワカッテナイ。ニンゲンノウツクシサ、イキテルカラコソ。ケッショウカシテモ、タイムコールドシテモ、ホントウノウツクシサノコラナイ』
「[結晶化? タイムコールド?]」
『ニンゲンノコトバニスルト、ケッショウカハ、ハクセイ。タイムコールドハ、ロウニンギョウカ。ニンゲンハ、イキテウゴイテルノガイチバン。ジユウニスゴシテルノガサイコウ。ワタシタチ、ミテルダケガイイ』
そういう事なんだよな。システムガイド代行王子様ありがとう。
まぁ王子様も流石に顔が引きつってるが。全く持って驚愕の事実だよなぁ……。
だから「通常の感性の」宇宙人とは相容れないし、容赦なく返り討ちにするしかないんだが。




