87.最適化された解
地下倉庫の入口に来た宇宙人をとりあえず無力化して、派手にぶち破られて扉自体を交換しないといけない状態に小さくため息を吐く。もっとも、呑気にため息を吐いて頭を痛めている時間は無いんだが。
とりあえず見える限りの扉が同じようにぶち破られている。倉庫の扉は開けていたから、一旦スルーしていったんだろう。どうしていちいち壊していくんだろうな。価値観の違いか。
倉庫を出て近くの部屋を確認し、扉の陰に移動してスマホを取り出した。拠点の全体マップを確認すると、どうやら全員玄関の所に集められているようだ。ただ、宇宙人のミニキャラがあちこちをうろうろしているし、どうやら外をそこそこの数が動いているようなので、たぶん全員は捕まっていない。
「(ってーか、集められてる中に工一さんとジェレック君がいない。あの2人は逃げてるのか)」
まぁ逃げられるだろうな。あの2人なら。人間の中では、うちの直接戦闘力トップ2だし。
一方指揮官属性が強い王子様はというと、既に捕まっているのが見えている。宇宙人たちはどうやらご丁寧に屋根裏部屋まで捜索しているようだから、そっちは一旦放置するとして。
掴まっているうちの住人を囲んでいるのは9人。うち3人は固まっているから、これの真ん中が指揮官だろう。ちょっと多いな。
「(こいつらが乗ってきた宇宙船はどこだ? 結界樹と緋朱をスルーしたんだから、たぶん壊れかけの車か、それこそグルスニールに擬態してる筈なんだが)」
だがあいにく私は『サバイバルクラフターズ』をやりこんでいた。よって、宇宙人による「拠点襲撃イベント」も慣れている。だからまずはどこを叩けば被害を大幅に小さくできるかは知っているんだ。
全体マップで探した結果、不自然な場所にグルスニールっぽいミニキャラがあった。グルスニールの数を数えると、その不自然な奴を入れると10台となる。だが今日は5人が牧場で警戒する日なので、グルスニールは9台の筈なんだ。
そもそもグルスニールは、変な所で降りても、それが敷地内であるなら、しばらく放置していたら勝手に定位置に戻る。つまり、この不自然な場所から動かないグルスニールっぽいものが宇宙船だ。
「(外にいる宇宙人は、全員壁の外で何かを追い回してるのか。っていうか、たぶんこれジェレック君だな)」
自分の家だ。窓の位置位は把握している。ということで、その部屋の窓から出て家の外壁を伝うように移動。さてこの見た目グルスニールの宇宙船をどうするかだが、宇宙船っていうのは、当たり前に迎撃兵器が装着されている。
つまり不用意に近づこうものなら攻撃されるし、宇宙船に近付いた何かが居るって事で宇宙人が一気に集まってくる訳だが……まぁ、私は慣れているので。
幸い今は建設中の設備を示す建物の殻がたくさんある。そこに隠れて、手に持つのは雷マークが描かれた手榴弾だ。しかもワイヤーで5個くっつけている。これをどうするかって言ったら、まぁ、当然、宇宙船に向かって投げる訳だ。
すると宇宙船は飛んでくるものに反応し、それを迎撃する。
だが投げたのは電撃手榴弾の塊だ。と言う事は。
――――ガッッッシャァアアアアアアア!!!!!
特大の雷が、至近距離に落ちたような轟音が響いた。当然その音は敷地中に響くし宇宙人にも聞こえる。のだが。
「ガァアアアアアッ!!」
当たり前だが、昼に切り株を引っこ抜く仕事(遊び)をやった結果、今日は早めに結界樹の根元ですやすや寝ていた緋朱だって飛び起きる。
寝起きのドラゴンは機嫌が悪い。そして飛び起きて自分のテリトリーを確認した結果、偽装が剥がれて明らかに見覚えのない円盤があったら、そんなのぶっ壊すに決まってるんだよな。
宇宙空間で活動できるだけの頑丈さはあった筈の、円盤型の宇宙船。それが水に落としたダンボール製の大道具みたいに壊れていくのはいっそ見事だったが、まぁ、さっき言った通り、さっきの轟音は当然、宇宙人にも聞こえている訳で。
「(いくら宇宙人と言えど、対人間装備程度しか持ってないやつが20人もいないなら、緋朱に勝てるわけがない)」
飛び出してきて、自分たちの宇宙船をギッタンギッタンにしている緋朱を見て、戦闘を挑むのは当然の判断なんだろうが……まぁ、相手になる訳が無いんだよな。
悲鳴と共に文字通り蹴散らされる宇宙人達。なお私はその結末を確認する事なく、窓を経由して家の中に戻った。で、耳を澄ますと、バタバタしてるなぁ、さっきまでとは違う意味で。
スマホの全体マップで宇宙人の位置を確認するが、どうやら家の中を探索していた6人はもちろん、見張っていた9人の内7人、側近らしい2人も宇宙船の方に向かわせたようだ。なお、既に全滅している。早い。
「(3人なら何とかなるな)」
指揮官を潰して、さっさと「拠点襲撃イベント」を解決するとしよう。ヤケを起こされても迷惑だし、たぶん全体マップを見た感じ、キウリさんが無事じゃないんだ。




