86.残りは果てしなく
転移1ヵ月17日目。この日は牧場の大型機械の倉庫の修理をしていた。いや、元がしっかり作られてなければ、そして作ったばかりで新しくなければ、崩れて中に入っていた大型機械が全滅していただろう。
そんな感じだったものだから、1日仕事である。地味に大変だったな。まぁ修理したら、こんなに広かったかな? って高師さん夫婦は首を傾げていたんだが。ゲーム補正は無事に(?)入ったようだ。
で、転移1ヵ月18日目。いくつかの建物の殻が順番に消えていくのを確認して、燃料が必要であれば「ジェル」を補充して、その間に私は地下倉庫で再び箱を開けまくる作業をしていた。
「本当は掃除がしたいんだけど、流石にちょっと広すぎるんだよな……」
とりあえず未開封の箱の数を減らすのが優先だ、って事で、今はひたすら段ボール箱を開けている。これが一番開けるのが楽だからな。中身は休憩の時に整理するついでに確認する。とはいえ、大体は服とか紙とかの消耗品なんだが。時々調味料か。
一番開けたいのは金属の箱なんだが、あれを開けるのは大変なんだよな。特に大きいやつ。横の、一番小さい面だけを開ければいいって言っても何本ねじを外さないといけない事か。
まぁねじって言うかボルトなんだけどな。だから可変レンチなんだし。箱のサイズによって太さが変わるのは分かるが、大変なんだよなあれ。
「電動のやつが欲しい……」
なおレンチといってもサイズ可変の場合はほぼスパナである。なんであれだけレンチって言うんだろうな?
みたいな方向に思考が逸れたが、それでもやっぱりゲーム補正がかかってるのか、段ボール箱に絞ったのが良かったのか、かなりの数を開ける事が出来た。外に出して大丈夫な奴は倉庫に入れて、「魔法契約用紙」とかいう名前の奴はそのまま倉庫に眠らせておく。
とはいえ、そんなピンポイントな道具なんて誰も持ってないだろうし、周りの家にある可能性も低いだろう。その実私も持ってると言えば持ってるんだが、サイズが合わなかったんだよなぁ。あれが使えていればもっと楽なんだが。
「……まぁ、掃除は地道に進めよう」
電動、で思い出したが、充電器が必要なタイプのドローンは見つかっても、充電器が見つかってないんだよな。一応スマホを使って開けてない箱を並べ替えるが、やっぱり開けにくい金属コンテナが一番残っている。
しかも設備狙いでそこそこ大きなものを狙ったから、小さいのがたくさん残っている。……って事は、こっちに充電器とかがありそうな感じか? というかそもそも、ここを探せば電動工具が見つかる可能性がある?
ゲーム内部ではそれっぽいものを使っている描写は無かったが、あったら便利なのは間違いないし、電動工具が無くてもそれこそケトルとかスポットクーラーとかヒーターが増えれば便利になるのは確かだからな。
「頑張ってみるかぁ……」
とりあえず明日からな。今日は段ボール箱をたくさん開けるのを頑張ったから。
王子様もキャラメルが手に入るようになって落ち着いたみたいだし、4エリア目の攻略が開始されるのは、追加の壁が出来上がってからになるだろう。家本体と元々の壁の強化が完了するのが、追加の壁完成と同じタイミングになるようにスタートはしたし。
と言う事で、スマホで夕方というか晩ご飯の時間になった事を確認して、地下倉庫から上がる。
と。
「テヲアゲロ!!」
「……手を上げたら、落下して死ぬんですが……」
「ム!? ム、ムム、ムムゥ……ワカッタ、ユックリトソノママアガレ! サクカラデタラテヲアゲロ!」
じゃきっ、と、恐らく銃に類する武器をこっちに向けた、キウリさんより若く見える宇宙人がいた。
私としてはとても頭が痛い訳だが、とりあえず動かずに従えない理由をシンプルに告げる。宇宙人は私の態勢を見て、下が見えない地下倉庫までの深さを見て、落下して死ぬ、を納得してくれたようだ。
なので言われた通りゆっくりと上がり、進入防止柵の鍵を開けて、ゆっくりと柵の扉を開けて、そこを通り。
「ム!? グゥンッッ!!??」
自分の体で隠したスマホを素早く操作、閃光手榴弾をちょっと離れた所に軽く投げた。コン、と小さな音がした方向にその宇宙人は顔を向けて、案の定閃光の直撃を食らう。
私はミラー処理されたフルフェイスヘルメットをかぶっているので、視界に問題は無い。ので、即座に宇宙人の後ろに回って口を塞ぎ、同じく取り出しておいた「麻痺毒の投げナイフ」を握りこんで宇宙人の腹に突き刺した。
流石魔法世界の大型モンスターにも通用する強度の麻痺毒、と言うべきか、その宇宙人は動かなくなる。
「……確かにこれも「拠点襲撃イベント」だけどさぁ……」
スマホで認識する事で、全ての装備をはぎ取る。楽で良いな。そして背中側で腕を縛り、足を縛り、その上で毛布でギチッと音がするぐらいキツく巻いて更に縛って、しっかり猿轡も噛ませた上で目隠しをして荷物の陰に隠した。
そう。これも「拠点襲撃イベント」である。……宇宙人による、だが。




