78.牛を護衛
ドガン、ドゴン、ズドン、とバズーカで爆弾を撃ちまくり、ある程度以上近付いてきた高耐久型ゾンビには爆発する投げナイフを投げていれば、当然ながらその爆発音はすごい事になる。
苔ゾンビに仲間意識的なものは無いが、大きな音には寄って来るので、私の方に来る苔ゾンビは順調に増えていた。と言う事はつまり、どこから湧いてきているか分からない苔ゾンビの動きが変わるって事だ。
まぁ数が増えただけならどうとでもなるというかむしろ効率が上がって輝くのが範囲攻撃であり、私は高耐久型ゾンビへの対策もしている。グルスニールに乗っている以上半ば自動回収的にお饅頭型の苔の塊も回収できる為、足場が悪くなるって事も無い訳で。
「[――やはりヤヌシか!]」
「ツミキさんか!? 助かった、もうちょいそのまま頼む! しぶといのはこっちで叩くから数だけ減らしてくれ!」
「はーい分かりましたー!」
ゾンビの群れの向こうから、たぶん王子様が私を見つけたんだろう。そんな声が聞こえた。しかしあの王子様ほんと視力良いな。指揮官なら目は良くないといけないとか、そういう条件でもあるんだろうか。
とりあえずグルスニールのオート回避コマンドは解除しておいて、体重移動で軽く動かしてお饅頭型の苔の塊を回収しつつ通常ゾンビの一掃を優先する。一応、半径2m位の距離まで来た高耐久型ゾンビは投げナイフで撃破するけど。
ちょっと遠くまで狙ってバズーカを撃ち、時々後ろというか来た方向を気にしながら位置調節をしていると、やがて遊歩道の周りを囲むような形で工一さん達の姿が見えた。
「帰って来るのが遅いから、何かあったのかと思いましたよー!」
「そうだな、すまん!」
「[致し方なかろう!? アルラウネを仕留めて牛を見つけたら、こいつらが何処からともなく湧いて出てきたのだからな!]」
うーん王子様の機嫌が悪い。それはそうか。ようやくアルラウネを倒して牛を見つけて牛乳が手に入る、と思った所でどこからともなく恐らくは文字通りに湧いて出て凱旋を邪魔する苔ゾンビの群れ。しかも高耐久個体が混ざっている上に数が多い。そうだな、イラつく要素しかないな。
遊歩道の周りを囲むような形でグルスニールに乗って移動してくる工一さん達。その外側に集まって来る苔ゾンビを出来るだけ一発で沢山巻き込む位置に爆弾を撃っていると、やがて遊歩道を、思ったよりは大人しく歩いてくる牛の群れが見えた。
「最後尾は大鹿に任せてる。だからツミキさんは悪いがこのまま先頭から左右と正面に対して数を減らしてってほしい」
「分かりましたと言いたいですけど、流石に前後両方は難しいんで前はお願いしていいですか」
「そらそうだな。分かった」
まぁもちろんその速度は遅いとしか言えないし、その間もひっきりなしに苔ゾンビは集まってきているので、周りを囲む探索組の人達は大分忙しそうだが。
それでも一番危険なしんがりを「枯れ森の大鹿」に任せられているだけマシなのだろう。私が左右に加えて正面も攻撃範囲に入れるようにお願いされているが、仕方ないな。だって範囲攻撃手段を持ってるんだから。
だがいくら何でもグルスニールに乗った状態で前と後ろを同時に気にするのは難しい。ので、工一さんと王子様が揃って先頭に居るのを確認して、正面はお願いする事にした。左右は頑張る。
「[緋朱は連れて来ていないのか]」
「留守番ですよ。アルラウネとかってのが倒せたかどうかわからなかったし、倒せていても山を丸ごと燃やしかねないでしょう」
「[それはそうだな。ベビーにその手の加減は不可能だ]」
その状態で移動する事になった辺りで王子様が聞いてきたが、緋朱は留守番である。とりあえず分かる範囲の真っ当な理由を述べたら王子様は納得してくれたんだが、実はもう1つ理由があってな。
確かにドラゴンは強力だが、実は「護衛イベント」って、護衛対象へのフレンドリーファイアが発生するんだ。そして緋朱ぐらいのドラゴンにとって、今回護衛対象の牛って、その、言い方がアレになるんだが「丁度良いサイズのお肉」になってしまうんだよな。
つまり、緋朱を連れてきていた場合、緋朱がうっかり「美味しそう」と思ってからの丸ごとこんがり牛を焼いてしまう……みたいな事になる可能性が、ちょっと無視できない程度に高かった訳だ。だから私が消耗と最悪の事態覚悟で、単独で来たんだが。




