75.メタ装備
「……この大鹿は、基本牧場で預かって貰う、っていうのは? 流石にあそこまで離れても影響が出る、って事は、無いですよね?」
「[そこまでの効果は無い。だからそれが一番手軽で確実で現実的で、関わる全員に利益がある提案だろうな]」
「あぁそうか。結界樹まで対象って事はあのゾンビみたいなのも対象に出来るし、何なら全自動で駆除してくれるのか。鹿なら牛を食う事も無いだろうし、牛も多分怯えやしないだろう」
そういう事になった。まぁ普通に考えたらそうなるよね。結界樹以外にも防衛設備はあるんだし。そもそもこっちには緋朱が居る。そして拠点として発見した以上、月一の防衛戦は、こっちとあっちの同時に発生する可能性まであるんだから。
まぁその話をしたのは夕食後だったし、「枯れ森の大鹿」を動かすのは明日って事で一度解散。そして就寝。「枯れ森の大鹿」を全力で使う王子様が、何なら明日にもリリーローズ・アルラウネを仕留めるかもしれないな、なんて思った。それぐらいの性能はあるからな、あれ。
とはいえ流石にあれ任せでは、逃げられまくるのは変わらない。だからもう一手何か必要である可能性は高いんだが……なんて考えている間に寝ていて、朝起きて、転移1ヵ月9日目。
「ツミキシ、ドローン、ツイカデキタ。コレデ5ダイナル」
「仕事が早くてありがたいですね」
相変わらずにっこにこで幸せそうに朝ご飯を食べていたキウリさんから、そんなお知らせが来た。おっと、もうゲーム時代の最大数になったのか。本当に仕事が早いな。
でも助かる事なのでドローンを認証して、同じ設定をしておく。玄関脇のドローン待機所はもう設置してあるので大丈夫だ。
「ザイリョウ、マダアル。デモ、ヒトリ5ダイマデ。マダツクル?」
「……ちょっとリットさんと工一さんに相談しましょうか」
で、ゲーム時代のドローンの最大数が5台だった理由がそういう形で判明したし、今はドローンを動かせるのは探索組の人達全員なので、探索組代表の工一さんと戦略指揮担当の王子様に相談する事にした。
王子様は流石の賢さであり、集団で動いても1人5台までなのか、途中で合流した場合はどうなるのか、という事を聞いていたが、どうやらこのドローン、衝突事故を防ぐための対策として、5台までしか同じグループとして相互認識が出来ないらしい。
だから1人5台までであり、認識している相手が変われば集団で動いていても大丈夫だが、その場合は1人1台までにした方がいいだろう、との事だった。一応「障害物は自動で避ける」すなわちドローン同士がぶつからないように動きはするが、数が増えると「事故」は発生しやすくなる、という理由だ。
「まぁそりゃそうなるな」
「[だが非常に有用だ。それにその理屈でいくと、5人までの集団を作って1人1台で行動すれば問題はあるまい]」
「ソレナラダイジョブ」
「[周辺の探索をする希望者も増えてきたところだ。ヤヌシはこちらの防衛目標でもあるのだから、他の手段で代替できるならその方が良いだろう]」
「わぁ。ありがとうございます?」
「デ、ナンダイツクル?」
「ひとまず探索組に1人1台で、11台、探索専門の別動隊を作るとして、希望者の数的に2班になりそうだから、護衛につく分も含めると8台か?」
「[いや、思いのほか希望者が多い。護衛はドローンを無しにしてついて行かせる形で、護衛担当と回収担当を別にしても3班にはなるだろう。回収担当が15人になって合計26台だから、この5台を除くとあと21台だ]」
「ワカッタ。ジカンカカル、イイ?」
「出来た分だけちょいちょいお知らせしてくれればいいですし、とりあえず今5台ある時点でだいぶ楽になってますからね。ゆっくりで大丈夫です」
「ワカッタ。ニンゲンヤサシイ」
そういう事になった。……26台、並ぶか? もう一個待機所扱いの棚を設置しておいた方がいいかもしれない。
「[ところでヤヌシ、「枯れ森の大鹿」は?]」
「結界樹に影響あるって事ですし、起動させて歩かせる形で動かした方が楽でしょうから、門のすぐ外ですよ」
「よく分からん力だが助かるな」
そして案の定、王子様はやる気いっぱいなようだ。いやまぁそりゃここまで苦戦させられてカリカリしてるところに「枯れ森の大鹿」なんてほぼメタな武器を手に入れたら、ヒャッホー! にもなるだろうけどさ。




