74.敵と味方にクリティカル
で、丸1日地下倉庫で、諸々の設備が出てきた大きさの金属コンテナを開けまくった結果。
「リットさーん、工一さーん」
「[何だ、ヤヌシ]」
「どうした、ツミキさん」
「あ、2人一緒だったんですね。えっとですね、ちょっと倉庫に来ていただけません?」
夕食時間が終わった所で、ちょっとズルをしてスマホで2人の位置を確認し、合流して2階の空き部屋に移動しようとしたところで偶然を装って声をかけた。内容を言わずに移動を促す、という行動はちょっと珍しがられたものの、2人は軽く目を見合わせただけで移動してくれた。
移動先は、地下倉庫への入口がある倉庫だ。モンスター素材を保管してる場所だな。ただ今回の目的はモンスター素材ではなく、しかし地下倉庫でもない。
「[ほう? 見てやろう]」
「……ツミキさん、これは」
「本当にこの家どうなってるんでしょうね……」
私は、罠系統の設備か罠そのものを探していたんだ。だが出てきたのは、王子様がすぐ動いたところから分かる通り、魔法系技術によってつくられ運用されるものである。
そうだな。罠ではある。一応分類は、罠にはなる。今回のボス戦で役に立つものでもあるのは間違いないから、私もわざわざここに持ってきてこの2人に見せたんだし。
それは、見た目は植物素材を組み合わせて作られた大きな鹿だった。それこそ牧場に居た牛より大きい。ただしその大きく太く枝分かれした角は鈍い色をした金属で、その眼は金属っぽい光方をしているが恐らく宝石。つまり、グルスニールや結界樹と同じだ。
「[結界樹があった時点でどういう事だと思っていたが、また随分なものが出てきたな]」
「リットさんが随分って言うって本気で相当ですね」
「って事は、兵器の類か?」
「[お前らは俺様を何だと思っているのだ]」
最初の頃の印象がなぁ。
「[まぁ良い。これは「枯れ森の大鹿」という]」
「名前の時点で既に物騒」
「いやまぁ鹿は増えすぎると森を殺すがよ」
「[実際に森を枯らす訳ではない。要は植物系モンスターを警戒し、自動で駆除する、専用の見張りだ。何しろ小さな種1つでも侵入を許すと一晩で町が呑まれる、そういう類は多いからな]」
「それもそれで怖いんだが」
「……ん? 対植物系モンスター専用見張り……魔道具? って事は」
「[その通りだ。これがあれば、あの忌々しいアルラウネを確実に追いかける事が出来る]」
「リットのあの占い魔法とどっちが上だ?」
「[……ペンデュラムでは、最も近くの蔦しか指し示す事は出来ないようだからな。これの方が確実に本体へ向かう事が出来るだろう]」
それはそれとして、そういう事なんだよな。我ながらよくもまぁ、ヤベー方向でクリティカルなものをこのタイミングで引き当てられたもんだ。
ちなみにこの「枯れ森の大鹿」、この先のエリアのいくつかで待ち構えている植物系ボスには全部クリティカルが入るし、対植物だから、実は苔ゾンビにもクリティカルが入ったりする。
またうちの拠点の防御力というか、防衛戦の時の最大スコアが跳ね上がる事になるだろうが、まぁ現実である以上防衛力が高いに越したことはないし、植物系モンスターって(苔ゾンビの上位/変異種含め)大体全部厄介だから、それを全部問答無用で轢き殺せるこの「枯れ森の大鹿」は大当たりの枠に入る。
の、だが。
「[まぁ問題が無い訳ではないが……]」
「聞く限り、相当良いもんじゃねぇか。何か問題あるのか?」
「[……結界樹との相性がとても悪い。対植物、だからな。「枯れ森の大鹿」自体を制御する事は可能だが、起動した状態で敷地内に置いておくだけで結界の強度が著しく下がる]」
「あー……えっと、リットさん。著しく、を具体的に言うとどのくらいになりますか? 私は3割までならアリだと思います」
「[あの結界樹は、まだ植えて1ヵ月程度だからな……神の恵みを与えたとは言え、まだ影響は大きい。結界の強度に出る影響は、少なく見積もって半減だろうな]」
「少なくとも半減、何なら結界が全く機能しなくなるってか。そりゃ困るな」
結界樹への影響さえ無ければ諸手を挙げて歓迎できるんだけどなー……。ゲームの時も、結界樹か大鹿かで頭を抱えたもんだ。




