72.順調と足踏み
夕方まで作業を続け、穴が開いた部分にはビニールシートを張っておく。と、案の定緋朱がビニールシートに興味を示していたので、障子戸だったらしい枠に比較的古くなったビニールシートを張ったものを触らせておいた。
濡れた和紙よりもあっさりと破れて穴が開いたのを見せてから、これは弱いから触ってはいけない、と教えると理解したようなので、これでよし。そして中に戻ってから緋朱が落ちた部分の部屋を見ると、まぁ、部屋の天井まで穴が貫通していた。
知ってたけどな。緋朱がどいた後に確認はしたから。だから夕方までの残り時間で、部屋の中に落ちた残骸や木くずを掃除しておく。修理箇所は増えたが、1つ1つ板を外して切って運び込んで、よりは早く済んだ。
「まぁ、どこかで何か壊すだろうなとは思ってたけど」
リカバリーが比較的簡単な所で良かったまであるな。うん。屋根の修理が終わった所で緋朱がダイナミック着地して、屋根裏部屋どころか2階まで突っ込む、みたいな事になってたら大惨事だから。
部屋そのものは当然大変な事になるし、特殊な部屋だったら被害が考えたくなくなるが、何よりも屋根の板金が取り返しつかない。周りの家の屋根から流用って訳にはいかないからだ。当然、予備なんてものもない。作るのも無理だな。
結果、屋根がちゃんとした形になるのは、それこそ宇宙船を作れるような技術者宇宙人が仲間になる時まで待たなきゃいけなくなる。そこまでの間ずっと、何%かとはいえ、拠点本体の防御力と耐久度が下がりっぱなしっていうのは、ちょっと無視できない。
「いや、それこそ緋朱がいるんだから、どうにかなると言えばなるのか」
うん。うんまぁそうかもしれないけど、とりあえず被害は少なく抑えられたからヨシ。
みたいな事を自分の部屋に戻って扉に鍵をかけてから考えていたんだけど、その間も設備の強化をしたり解体機のチェックをしたり倉庫の整理をしていたりしていた。
「ん?」
ん、だけど。
地下倉庫への入口がある、大きくてすぐ使わないものが入った倉庫。ここは主に爪とか牙とか骨とか毛皮とか、まぁモンスターの素材が保管される場所になってるんだが、そこに、昨日までは絶対に無かった、大量の巨大蔦……リリーローズ・アルラウネの復活ポイントを構成する木材があった。
私込みでメロ高牧場に到着したその日に元々あったポイントの蔦は全部回収していた筈なので、こんな量が倉庫に追加されている理由は1つだ。
「え、王子様達、もうボス戦してきたの?」
いつの間に、だよ。まぁゲームじゃないんだから、プレイヤーが動かなくても戦闘する事自体は可能なんだろうし、実際戦闘してきたんだろうけど。
ここでもう一度、晩ご飯の時に見かけた探索組の人達の様子を思い出す。……怪我は無かったな。怪我してる感じは無かった。あぁでも、いつもと比べると若干硬いというか、強張ってるというか、そういう感じはあったな。
という事は、ボス戦に挑んで、ある程度戦って無傷だったのはいいんだけど、仕留めることも出来なかった感じか。何度も何度も回復ポイントを潰したから、あの巨大蔦が大量にあったんだな。
「ボス自体の素材で作ったからって攻撃力が減衰する訳もないだろうし、あの蔦で作った武器を持って削り切れなかったって事は……手数が足りなかったって事かな」
いやまぁこの蔦は大変性能が良いものだから、たくさんある分には困らないんだけど。若干ゲーム脳的な考えで、このまま何度も挑んでは削り切れずに大量の蔦を持ち帰り続けてくれないかなとか思っちゃったけど。
でもあんまり長引くと王子様の機嫌が酷い事になりそうだしなぁ……。
「…………、屋根修理が終わるまでは様子見するか」
屋根修理が終わってもまだダメそうだったら、地下倉庫から役に立ちそうというか、少なくともあのボスに対しては役に立つ設備を出して設置してみよう。私が倉庫の中身を、少なくとも後から入れた分は把握できるっていうのは、既に皆知ってる事みたいだし。




