69.修理の予定と順番
という事で屋根裏のスペースの面積や柱と梁の太さを計っている間に、どうやら工一さんが呼ばれてきたようだ。どうやって? と思ったんだが、どうやら今日は普通に牧場の方の警戒をしている日だったらしい。
「あ? 何だこの濡れ方と腐り方。屋根に穴も開いてないのにここまで悪化するのは無理だろ」
「干し草ロールをここに保管していたらしいんですよ」
「干し草……は分かるが、干し草ロールってなんだ? 干し草を固める、いや丸めるのか?」
ほらな。普通は知らないんだよ。
という事をどうやら高師さん夫婦も納得してくれたし、干し草ロールについての説明はちゃんと行われた。重量は? という工一さんの質問にも、干し草ロール1つの重量と数と配置、という形で答えている。
なお私もその話は聞いているんだが、その重量を聞いてもう一度さっき計った色々の数字を思い出す。で、結論。
無理では?
「いや無理に決まってるだろ」
無事工一さんと意見が一致した所で、改めて相談である。
とりあえず私としては、既に腐っている部分の板の交換は必須というかすぐ取り掛かりたいし、重量で床が下がって開いていた隙間はもうちょっとしっかり点検したい。
ただし柱と梁の強化は建物全体のバランスを見直す事になる可能性もあり、とても時間がかかるので申し訳ないが後回しにしたい。干し草ロールを保管する季節までには何とかする予定で動く。
まぁ間に合いそうになければ、最悪隙間が開く部分を、床が重量で下がる前提で塞いでおく事になるが。
一方で高師さん夫婦の希望としては、腐っている部分の交換はすぐしてもらいたい、という事で合意できる状態。ただしその次に柱と梁の強化をやってもらいたいらしい。
というのも問題の干し草ロールなのだが、これを作る時期って言うのが割とすぐそこに迫っているらしい。もちろん牧草ロールを作ってラッピングする方法なのだから外に置いておく事も可能だが、牛が角で突いて穴を開けてしまう事があるそうだ。
だから屋根裏の空間に保管していたんだそうで、更に言うならラッピングする為のフィルムも恐らくもう手に入らない。今ある分を使い切ったら終わりだ。となると、ますます屋根裏での保管が重要になる為、急いでほしいとの事。
で、私と高師さん夫婦の意見を聞いた工一さんはというと。
「悪いがツミキさんに賛成だ。柱と梁の強化は時間がかかる。今の状況でツミキさんがその作業にかかりきりになるってのは、俺らからするとかなり厳しい」
「そんな……」
「というか、ツミキさんの修理技術が何か異次元の域に入りかけてるだけで、そもそもこの2、3日で壁の穴と廊下の穴を塞いだだけでも相当スゲー事してるんだぞ? この建物は新しいんだから、リフォームしてる様子ぐらい見てただろ? その時、どれだけの人数がどれだけの重機やトラックや専用の大型道具を使って、どれだけの時間をかけてたか思い出してみろ」
「…………それは、そうですね。無理を言ってしまい、申し訳ありません」
「あなた」
「ツミキさんは。善意と良識によって、救援に応えてくれたんだ。こうなってしまってはお金なんて大した意味もないだろうし、今の我々には、返せるものが何も無い」
すまないとは思ってるし急ぎたい気持ち自体はあるんだが、出来る事と出来ない事がある。何故ならこのメロ高牧場の建物は、屋根裏部屋の腐っている部分の板を交換すれば、風も雨も入らない状態になるからな。
一方で私所有の家である拠点は、3つの棟の内屋根の修理が終わったのは中央の1つだけ。どちらも雨漏りが発生していた事は確認している。そして屋根の修理には時間がかかるから、出来ればそっちを優先したいんだ。
「繰り返しますが、屋根裏の床に当たる部分の内、板が腐っている部分の交換はこの後早急に行います。ただしその次は外壁を塞いだだけの壁部分に断熱材を入れて内壁をつける作業をする予定ですし、その次は私が本来所有し居住している建物の、雨漏りをしている部分の屋根の修理に取り掛かりたいのです」
「……屋根は、雨漏りはするのでしょうか」
「正確な重量計算をした訳ではないのでおおよそになりますが、干し草ロールあるいは牧草ロールの量と置く場所を適切にすれば、現在の状態でも屋根裏にある空間の床の沈下、及び雨風の侵入とそれによって内部の木材部分が腐るという事態は起こりません」
「手で測る事になるからちと時間はかかるが、その重量計算は俺がやろう。これでも一級の建築士と造園士の資格を持ってるから、仕事は出来るぞ」
は?????
え、なん、はあ!!!???
工一さんそんなすげー人だったの!? 詳しい筈だわ完全なるプロじゃねーか!!!
何でそんな人がよりにもよって釘バット振り回してたんだよ!!??




