67.応急処置
水と食べ物に関してはとても喜ばれたし、掃除に関してはこちらでやりますと言われたので、一応持ってきておいた掃除道具を渡して、壁の穴を塞ぐ作業に取り掛かる。修理ではない。とりあえず風が吹き抜けるのを防ぐだけだ。
午前中の内にとりあえず壁を塞ぐ事は出来たので、牛舎に開いた一際大きな穴に取り掛かる。まぁ穴を塞ぐって言うかほぼ壁の作り直しなんだけどな、ここに限ると。それぐらいデカいから。柱も折れてるし。
それでも牛舎の屋根が落ちてないのはちゃんとしているというか、たぶん新しくした直後だったな? って感じなんだが、まぁ世界が変わってしまったって言うのは仕方ないな。という事で、お昼まで頑張ってみた結果。
「いや流石に穴がデカいわ」
下から何とかしてるんだが、それでも全体の3割ぐらいしか進んでいない。今日中に出来るかちょっと不安になって来たぞ。いやまぁ屋根にかかってる部分の修理はどっちみち苦戦するだろうとは思ってたけど。
どうやら流す事だけは出来るらしいのでトイレは使えるんだが、あんまり水を無駄にする必要は無いだろうって事で、声だけかけてグルスニールで一旦拠点に戻る。いやー、移動が快適だわ。もちろん途中で道に詰まっているものは出来るだけ回収するんだが。
で、お昼ご飯とトイレを済ませ解体機に追加を入れて、ついでに思ったよりも消費した板を補充し、再び牧場へ。グルスニール快適だなー。目的地が分かっていればほぼ自動運転だろこれ。苔ゾンビも振り切れるし。
「も、もうこんなに!?」
「穴を塞ぐだけの応急処置ですけどね。風は入らない方がいいでしょう」
なお午後の途中で様子を見に来たらしい高師さん(旦那さん)は驚きの声を上げていたが、これってたぶんステータス補正なんだよな。私がすごいとも言い切れないが、他の人にも出来るとも言えない。
結果として淡々とした言い方になった訳だが、そこで尊敬の視線を向けてくるのがこの高師さん(旦那さん)なんだよな。やめて、そんな真っすぐに綺麗な目を向けられていいものじゃないからこれ。ほぼズルだから。
まぁそんな事を言えるわけもないので、引き続きお借りしている脚立を使って黙々と作業を続けるんだが。なおその後交代かなんかみたいな感じで牧場の人が私の作業を見に来たが、どうやら高師さん(旦那さん)、作業してるツミキさんってスゲーの! みたいな事を広めてくれたらしい。何故だ。
「そこがあの人の人徳というか、まぁ、人たらしなんですよ」
「あぁ……」
確かに嫌な気分ではないけどもさぁ。そして高師さん(奥さん)、それは惚気かな? 幸せそうで何よりだけども。しかし、2人もお子さんが居るとは思えない若さだな。夫婦共々。
まぁでも、牛舎の作り自体は普通の家より簡単だ。応急処置であれば、極論風と雨を防げればいい。だから何とかその日のうちに屋根の一部まで含めて塞ぐ事が出来たんだが、出来ました、と言ったら拍手が沸き起こるのはどういう事だよ。
いや分かってるんだけどな。もう少しで夕方、ってぐらいの時間に来た高師さん(旦那さん)に進捗を聞かれて、もうちょっとです、って答えたら、何故か人を集めて来たんだよ。どうして?
「ありがとうございます! 助かりました!」
「応急処置は応急処置なので、追加でペンキを塗るなりなんなりして下さいね」
「分かりました!」
目が綺麗で真っ直ぐなんだよなこの人。この辺が奥さん曰くの「人たらし」なんだろうけど。たまにいるんだよな、他人の良い所を見つけて悪意無しで広める上に、その話を聞いてもあんまり嫉妬とかする気にならなくなる人。その手の人だろう。
ともあれ、応急処置はとりあえず終わった。どうやら掃除もだいぶ終わったらしい。だから私は一旦引き上げだな。明日は廊下とか壊れた扉とかの修理だ。
……そういえば、工一さん達は今日何してたんだろうな? いやまぁ私が断熱材の回収をお願いしたし、不思議回収方式のドローンが使えるようになったから、1エリア目か2エリア目の探索を改めてやってるんだろうけど。




