64.応急処置と便利装置
王子様はちゃんと探索組全員分に、それも剣と棍棒の2本を1セットにして配れる数を作ってくれていた。まぁジェレック君は自前の剣があるから棍棒だけだったし、私には無かったし、自分はきっちり杖の土台を作っていたけど。というか蔦の皮を1本分独り占めしているから絶対にあれが一段良い物だ。
まぁでも加工したのは王子様だし、王子様の火力が上がるのは良い事だしな。それにこのエリアのボスは火気厳禁である以上、火属性以外の魔法を使おうと思うと、杖を良いものにしないと火力が足りないんだろう。
とはいえそこそこ時間が経っていて、既に昼を過ぎている。とはいえ今から牧場の人達を連れて移動って言うのも大変だ。という事で。
「私は出来る範囲で修理に取り掛かっておきますから、工一さん達は代表の高師さんを連れて事情説明と案内をお願いできますか。ついでにご飯もお願いします」
「そうだな。つっても他にも何人か置いていくから、具合の悪い人とかは連れてった方がいいだろう」
シンプルに手分けする事になった。そうだな。流石に薬は無いけど、ちゃんとご飯が食べられてお風呂に入って着替えて清潔に出来れば、人間の体調って言うのはだいぶ改善するものだから。
という訳で、私は牛舎まで含めて建物の点検。……うん。何ヵ所か壁に大穴が開いてるし、天井もこれ放置してたら崩れ落ちるぞって場所があるな。もちろん手入れが行き届いていない部屋もたくさんある。
なお大穴は最初の混乱の時に蔦が開けていったものらしい。その割には変な所に開いているが、良さそうな雌を探していたんだろうか。まぁ牛舎にひときわ大きな穴が開いていたから、ここから牝牛を攫って行ったんだろうが。
「この穴はちょっと今すぐには無理ですねぇ……」
「そうですか……」
案内してくれた高師さん(奥さん)は残念そうだったが、屋根の一部まで壊れてるぐらいの穴だぞ? 何の準備も無しだと無理だよ。そんな大きな板は流石に用意してないし。
まぁでも生活空間に近い場所の穴から塞いでいく事にして、ギザギザになった縁をノコギリとヤスリで整え、板の大きさを計って縁をぴったり合う形にしてはめ込んでいく。その上で内側、断熱材が入っていた場所から追加の板を当てて釘を打つ。
それを下から順番に繰り返して、途中で脚立を借りて作業。外側の応急処置はこれで良い。問題は、一緒に吹き飛んだ断熱材だな。あれが無いと夏は暑いし冬は寒い。とはいえ手に入れるのは難しいし……。
「……ちょっとここまで来る時の家を解体して、断熱材を取ってこないとダメだな」
2エリア目のギミックが設置されていた家とか、半分壊れてたからな。もちろん住んでいた誰かは分からないから無許可なんだが、非常事態だから許してほしい。既に生きてない可能性も高いんだが。
まぁでも風が通らなくなるだけでも大分違うし、とりあえず応急処置する事が優先だ。という事で次の穴に取り掛かって、半分ぐらい進んだところで、工一さん達が戻って来た。思ったより早かったな。グルスニールの機動力バンザイってとこだろうか。
「そうだツミキさん、キウリが何か、ツミキさんの不思議な力の補助になれるかもしれないって言ってたぞ」
「私の。は良いとして、どの辺ですか?」
「主に道路に転がってるものの回収だな。宇宙人の技術でも、宇宙ゴミとか隕石とかを回収するのにそういう技術があるんだと」
「へー。だとしたら私は家の修理に集中できるので、とても助かりますね」
…………。
あ、もしかしてあれか? ある程度進むか宇宙人の技術者を仲間にしたら、プレイヤーの周りを何か小型ドローンが付いてくるようになって、道路に転がってるあれこれをある程度自動で回収してくれるようになるんだ。
1度に回収できる数が小型ドローンの数だけ増えるんだが、宇宙人を仲間にしてそれが技術者であるかどうかで判定1、その技術者宇宙人が2階にある特殊施設部屋の「ドローン開発室」に入ってくれるかどうかで判定1。
後はマスクデータなんだが技術者宇宙人の好みで最初に解放されるドローンが変わるからそこでまた判定1と、判定が3回噛むから、大体の場合は後半に入ってからしか使えなかったんだが。
「で、それに必要な機材がある部屋が2階にあるって事だが」
「あの家、少なくとも私が購入した時と、こうなってからで、明らかに間取りが変わってるんですよ。100人以上が暮らせる部屋なんてある訳なかったですし」
「……まぁそういう事もあるか。じゃがいもが半日で育って収穫できるもんな」
「川も海も問わず釣りが出来る草も生えましたからね」
「米俵と小麦の袋が木に生るんだもんなぁ……」
「結界を張る木も植えたら成長している上にドラゴンも住んでいます」
ほんと、冷静に考えるとどうなってるんだろうな。もはや一周回って笑えてくるんだが。




