62.同意と遭遇
王子様曰く、アルラウネっていうのは植物型のモンスターであり、巨大な花の中心から女性の上半身が生えているという姿をしているが、本体はその、巨大な花の根元にある核なのだそうだ。
植物が何らかの理由で高濃度の魔力を浴びて変異した存在であり、広範囲に根を張って、その根からは自由自在に太い蔦を出現させる上に、根を通じて核を自由に移動させる事が出来るとの事。
とはいえ、核そのものは地下に居続ける事は出来ないし、光合成がメインで地面から栄養を吸い上げる力は弱く、端から削っていけばそのうち再生が追い付かなくなって核が露出するそうだ。なるほど、そういうモンスターだったのか。
「[まぁ元となった植物の種類によって若干特性が異なるし、元が毒を持っていたら毒の霧を吐いたり毒を蔦に含ませて殴って来る事もあるが、リリーローズなら大丈夫だろう]」
「リリーローズだと大丈夫って事は、物理だけって事ですか?」
「[そうだな。まぁ根を広げた範囲で自分が抱え込めるだけの雌を集めるから、村等が巻き込まれると、人間であろうと女性が大量に誘拐される事になる訳だが……まぁ牛なら大丈夫だろう]」
「……つまり攫われるとまずい事があるんですね?」
「[強制的に発情させられるからな。何故かは知らんが、その状態の糞尿を栄養源として好む]」
「妙な具合に植物的で嫌な生態だな」
「そしてここの場合、牧場だったから避難してた人達が無事だった可能性までありますね……」
「……そうか、牝牛がたくさんいたからそこで上限になったって事か。そうだな」
そして牝牛だけを攫った理由はそういう事だったらしい。工一さんの、嫌な生態だな、には同意しか無いんだが、まぁつまり無事ではあるって事だ。人間が巻き込まれていたら、その、尊厳的な意味で大変な事になっていた可能性が高いが。
これは、牝牛を助けて戻ってきたら、牧場でのんびりしている若牛達は大変なんじゃないだろうか。いやまぁ牛乳が手に入るのは妊娠している間と子牛を産んでしばらくするまでだから、牛乳ゲットって意味ならとても都合が良いんだが。
「ところで、えぇと、ツミキさんでしたか。リフォーム、とおっしゃっていましたが……?」
「基本は廃屋を買って綺麗に直して、資産価値を上げて売るという事をしていますが、まぁ傷んだ家屋の修理は慣れていますよ」
「まぁ! で、では、うちもお願いして良いでしょうか? その、恥ずかしながらあちこち手が回っていないもので……」
「いいですよ。壁に穴とか開いてたり、雨漏りの対処とかは流石にちょっと時間かかりますが」
「……お、お願いします」
そしてその流れで、自分だけの会社名を名乗ったからか、高師さん(奥さん)の方からリフォームというか修理の依頼が来た。なるほどこれでいじれるようになるんだな。まだこっちの家も完全に直せたとは言えないが、まぁ出来る限りはしようじゃないか。
しかし今ちょっと目を逸らしたって事は、壁のどこかに穴が開いてるし雨漏りする場所があるんだな? まぁいいけどさ。ゲームの時もそういう場所があったし、直せはしたから。
だが私が家屋の修理にかかると、道路を埋めているあれこれの撤去が大変だ。というかあれこれの撤去(回収)が大変だから私が外に連れ出されている訳で、本当は家の修理を全部してから外回りをしたかったんだが。
「工一さん! ヤベェ奴がいた!」
じゃあ見積もりを、となったところで、外からそんな声が聞こえた。探索組の人で、あのフォークを持った人についていってもらった人だ。直前にグルスニールの足音も聞こえていたので、文字通り駆けてきたのだろう。
当然工一さんも王子様も外に飛び出したので、私も高師さん(奥さん)に断りを入れて小走りで追いかける。まぁ高師さん(奥さん)もついてきたけど。それはそうか。何かしらの脅威があるって事だもんな。もちろん見回りに出た高師さん(旦那さん)の事も把握してるだろうし。
外に出ると、探索組の人がグルスニールから降りた所だった。こっちからは下半身しか見えないが、鞍の後ろ辺りに乗せられてぐったりしているのはあの見回りの人こと高師さん(旦那さん)だろう。無事で良かった。
「ヤベェ奴? どんな見た目だ?」
「見た目は変わんねぇんだけど、どんだけ殴っても死なねぇんだよ! グルスニールで蹴ってようやく腕一本もげたから、囲んで殴らなきゃ絶対に無理だって分かって戻って来た!」
「グルスニールで蹴って腕一本は確かにヤベェな。ツミキさんの爆弾でも効果が出るか怪しいんじゃねぇか、それ」
「[あれ自体に核のような物があった試しは無いから、粘性スライムに近い筈だ。という事は、死ぬまで攻撃しなければダメだろう。ジェレック]」
「[はっ! 警戒します!]」
そして情報の共有と特性の把握が早い。……高師さん(奥さん)がちょっとついていけてないな。フォローしとくか。私の出番は無さそうだし。




