56.2体目のボス
防衛成功した翌日。転移31日目。あるいは、1ヵ月と1日目。
「リットさーん、昨日言ってたあれってこれですか?」
「[それだ! ……2つか]」
「結界樹と緋朱に1個ずつあげられますね」
「[…………そうだな]」
なお実際は6個あった。思ったより苔ゾンビを倒してたか、お兄さん()達がたくさんボーナスモンスターと遭遇してたか……まぁどっちかは分からないが、あと4個は私の部屋に運び込んでおいたので、王子様には見つけられない。
という事で堂々と「旨蜜珠」を結界樹と緋朱に食べさせる。まぁ結界樹の方は根元に置いて割るって形だったけど。そして割ってすぐにぐぐぐっと高さが伸びて枝が増えたから、効果が出るのが早い。
逆に緋朱はあんまり変化が無かった。踊るのは可愛かったよ。ちゃんと前庭に降りて来て貰ってから食べて貰ったから、踊りで屋根が抜けるって事も無かったし。しかしドラゴンも踊るんだな、「旨蜜珠」を食べると。
「なるほど、これはちゃんと探した方が良さそうだ」
「そうですね」
なおこの後はこのまま2エリア目のボス戦に向かうので、探索班の人達も緋朱のドラゴンダンスを見ている。……お兄さん()に「旨蜜珠」を食べて貰っても踊るんだろうか。身体が勝手に動く的な感じで。
なんて妙な考えは地下倉庫の地下3階に放り込んで、私に鼻先をこすりつけてくる緋朱に留守番を任せ、グルスニールに乗って2エリア目の探索に出発だ。
意味の分からない機械に誘導されたって事で大分微妙な目を向けられていたが、それでも一応王子様のペンデュラムの導きに従って移動した結果。
「……何かデカいのがいるんだが」
「……そして明らかに待ち構えてますねぇ」
「[待て。問題はその後ろだ。あいつの後ろにある看板に「牧場」という文字が見えるぞ]」
「看板? この先車進入禁止の標識なら見えるが」
「あ、いや、その下。標識の下に看板が取り付けられてます」
「標識の下…………あー、あれか。良く見えたなリット」
「[ともかくあれを倒せば牛がいる所に辿り着けるという事だろう! 急ぐぞ!]」
「まてまて落ち着け。お前とジェレック……だけでもいけそうだが、囲んで叩いた方が早いしどういう動きをするかは分からないだろ」
無事(?)ボスのところへ辿り着けた。システム代行王子様本当に便利だな。本人には絶対に言わないけど。
このエリアのボスは、高さ3mぐらいで、球体の胴体が全体の9割を占める丸いロボットだ。胴体にびよんと呼びた腕と平たい脚がついていて、おまけみたいな頭が上に乗っている。
どう頑張ってもあの頭からでは空しか見えないと思うんだが、実はこいつ、ただの背景ですよって感じで周囲に立っている標識の柱みたいなものがセンサーというかカメラになっていて、攻撃しないと回収できない柱みたいなものを排除するとその場で棒立ちになる。
「というかあの腕、どう考えても伸びますよね?」
「[腕が伸びる?]」
「あぁ、伸びるだろうな。ギザギザした筒みたいになってるだろ。あれはたぶん伸び縮みする構造だ」
「[なるほど、見た目で侮ると攻撃が届くという事だな]」
「……ていうか、ものすごく固そうですけど、そもそも攻撃は通るんでしょうか」
「[斬る事は難しいかもしれないが、あれは殴った方が効きそうだな。ジェレック。魔武器の大槌を使え]」
「[はっ!]」
「まぁそうだな。短期決戦の方がいいだろ。腕に気をつけつつ殴るぞ」
とはいえ、それを言う訳にはいかないし、たぶん今回のメンバーだと必要ない。だって突撃野郎じゃなくなったジェレック君がいて、王子様もそこそこ戦力化してるんだから。
そう、戦力的にはこの2人でも十分である。だって2エリア目だし。そんなに難易度が高い訳ではないというか、難易度が高かったらダメなんだよ。……1エリア目のドラゴン? あれは例外。
「まぁ私の出番は無さそうなので、周りのあれこれを回収して場所を開けておきます。距離をとれるようになった方が安全でしょうし」
「分かった」
「[そうだな、退避可能な場所は必要だろう]」
それでも一応フラグは立てておくんだけどな。何しろセンサーだから、例の柱みたいなやつに触ったら一瞬でヘイトが移るんだよ。
……まぁそのせいで、ロボット自身の攻撃で柱型センサーが壊れて回収可能になる、っていう攻略方法があるんだけどな。顔にとまった蚊を潰そうとしてセルフKOされるうっかりさんじゃあるまいし。




