48.ボス戦報酬
というと、何故か王子様は片手で顔を覆って笑い始めてしまったのだが、その流れで何故か私に命名権を譲ってどこかへ行ってしまった。んん? どういう心境の変化?
まぁでも名付けて良いのなら、と、スマホの入力画面に「緋朱」と入れて、「君の名前は「緋朱」でどうだろう」と声をかけると同時に決定ボタンを押した。そうしたらベビーレッドドラゴンもとい緋朱は喉を鳴らして鼻先をこすりつけてきたので、これはオッケーなやつだな。
その後お兄さん()を含めたメイン数人に緋朱の事を伝えて、緋朱自身は中央棟の屋根の上に待機してもらう事にする。屋根の強化は昨日「魔法首輪」を作り終わった時点で王子様がやってくれているので、大丈夫な筈だ。
「ストレートにテイムまでいったから、時間に余裕があるのは良いとして」
何をするかな、とちょっと考えて、中央棟屋根裏部屋の掃除と修理をしておく事にした。ここも部屋だし、かといって他の場所の屋根は修理にかかると時間が足りない。それに午後も探索の予定なんだ。
まだまだエリアには何らかの残骸が残っているんだが、今日の午後はとりあえず緋朱が巣として使っていた場所、すなわち本来のボスエリアを探索する事になっている。次のエリアはその先の筈だからな。
牛がいるのは更にその次のエリアなので、出来れば明日中にクリアして、30日目は襲撃に耐えて、そして2ヵ月目の初日に牛がいる場所に到着、っていうのが理想だが、どこまで上手くいくかは不明だ。緋朱がいるとはいえ、道中の残骸まで焼き尽くす訳にはいかないから。
「まぁとりあえず、午後の探索進捗次第かな……普通に移動時間の問題もあるし」
それで行くとそろそろ車の修理に取り掛かるべきかとも思うんだが、そう言えば自転車の修理の話はどこに行ったんだろうな? 元となる自転車は廃棄せず、壊れた状態だが倉庫に入れている筈だ。もちろん地上の。
それは全体連絡してあるので、王子様が魔法で修理できるのなら既に何台かは修理できてる筈なんだが……探索とドラゴンテイムチャレンジでその辺吹っ飛んでるとかか?
一応徒歩でも移動できなくはない距離なんだが、その場合真っ先に脱落するのはたぶん私だっていうのがな。何しろ、掃除や修理で体は動かしているとはいえ、探索程の運動はしてないから。
「まぁお昼を食べてからの話だな」
とか思いつつ掃除を進めて、全部の部屋が使えるようになった、とはいかないものの、7割ぐらいの部屋は使えるようになったところでお昼ご飯の時間になったので、下に降りる。
まぁ牛がいる場所に辿り着いたら、あそこもかなりの部屋数があった筈だし、引っ越したい人は引っ越せばいいし……あそこの守りを強化する為にもやっぱり石素材が必要だな? あのズリにまた行きたいんだけど理由をどうしようか。
いやこっちは戦闘をしない人で固めて、あっちは最前線でもあるから戦闘できる人に行ってもらって、一時的に住み分けをすれば大丈夫か? でも牛を世話する人は必要だしな。
「うーし、それじゃ行きは探索しながらあいつが居た場所に行くぞー」
「「「うーす」」」
なんて考えている間に出発。もちろん徒歩だ。道を埋めている諸々を回収しながらなら私もそこまで置いて行かれずに済むからいいんだけど。回収自体もだいぶ慣れてきて、スピードも上がって来たし。
という訳で到着した緋朱の巣(だった場所)。ゲームではボスがいた場所には貴重な資源があるのがお決まりだったんだが、現実になった現在はどうかっていうと……。
「何だこれ、馬の模型か?」
「何で出来てるんだ? 金属か?」
「これ目が宝石になってるぞ」
「[――グルスニールではないか!]」
「おっと異世界関係だったか」
「[最高級の「模造の馬」だ。生きた馬と違って自己判断で動く事は無いが、耐久性は段違いだし餌の心配もいらん。しかし、どうしてこんなものがここに……]」
「光物判定だったとか?」
「なぁそのぐるすにーる? っていうの、こっちのごちゃごちゃになってるのもそうじゃね?」
うーん実に都合よく、小回りが利いて丈夫で手間がかからない移動手段が手に入ったな。
……しかしこんな数のグルスニール(ゲーム内にも登場はしてた)があるって事は、異世界も相応に巻き込まれてるって事なんだが。だって数があるのは野生時代(?)の緋朱が集めたからだとしても、少なくとも緋朱の行動半径にはこれだけの数があったって事なんだから。
まぁ、その辺はあんまり深く考えないようにしよう。なんかドツボにはまりそうだし、助かるには違いないんだから。




