47.チャレンジ結果
ベビーレッドドラゴンのテイムに成功したので、そのまま一旦拠点に帰還だ。流石に掃除しながらじゃなくて、既に片付いた道を通ってだけど。
どうやら首輪をつけると主人の意思1つで指示を出す事が出来るようで、ベビーレッドドラゴンは大人しく私達の後をついてきた。だから道中は得意満面というか、ちょっとドヤ顔っぽい空気を纏っていた王子様。
なおベビーレッドドラゴンが大人しくついて来ていたのが、王子様ではなく私だという事が判明したのは、拠点に戻ってきて王子様と私が別々の方向に移動した時だ。
「[何故だ!]」
「まぁ甘い物あげたのは私ですからね」
王子様は結界樹の所に連れて行こうとして、私は門の脇で色々素材やら何からの整理をしようとしたんだが、ドラゴンが私のところから動かなかったんだよな。どうやら首輪によるものとは別に、私の方を主と認識しているようだ。賢いな。
まぁでもここで無理強いして首輪を壊されても困るので、結界樹の場所を教えるのと、屋根の上で待機する事を教えるのは私も付き合った。歩きながらでもスマホの操作は出来るからな。
「[名前は俺様が着けるぞ]」
「どうぞ」
で、一通り終わった所で王子様がそんな事を言い出したし、そこは素直に譲って実際王子様は色々格好いい名前を考えては口に出していったんだが……どうやらこの名付け、今の王子様とベビーレッドドラゴンだと、ベビーレッドドラゴンが納得しないとダメらしい。
ちなみに私のスマホには名付け画面が出ているので、たぶん私が名付ける事になるんだろうなぁ、と思いつつ、名前の候補を考えながら待つこと数分。
「[く……っ! 何故受け入れんのだ!?]」
「この子、女の子なのでは?」
「[いやドラゴンに性別は関係ない筈だ。……甘い物か、甘い物なのか……!? ヤヌシが餌付けした扱いになっていると!?]」
「餌付けって言っちゃいますかそこで」
しまいには欠伸し始めたベビーレッドドラゴンを前に、がくっと項垂れた王子様。可哀そう。でもゲームシステム上仕方ないなんて言えないしなぁ。
「[ベビーだから致し方ないとはいえ……!]」
「名付けって大事なんですか?」
「[大事に決まっているだろうが。名は個を表す基本にして根幹だ。それを与えたという事は実質的な親であり主人という事になる。もちろん成長すればそれを振り切る事も可能だが、そうならないように育てれば良いだけの話だ]」
「うーん毒親の発想……」
「[何だそのドクオヤというのは]」
「……総じて子供に害となる行動をする親の事ですね。特に身体的及び精神的に、束縛、拘束、支配する行動を取って子供を1人の人間ではなく、己の所有物として扱う場合にそう呼称されます。こちらの世界では、ですが」
「[…………なるほど]」
あれ、毒親の説明をしたらなんか王子様に刺さったっぽいぞ。王子様は正直仕方ない部分があるんじゃないか? だって王子様だったんだし。そりゃ、親のものではないけど国のものとして育てるだろうよ。個人より王として育てるならそうなる。
まぁ今の王子様には関係のない話だ。……関係のない話だよな? だって王位継承権剥奪されて追放されてる筈なんだから。まさか今になって王子様に国に戻ってくれなんて縋って来る訳がない。
「え、国に戻って来てくれと縋りつかれる心当たりでもあるんですか」
「[……]」
「あるんですか?」
「[……無い事は無いが、その場合お前はどうするんだ?]」
「私? 何故」
「[何って…………あぁそうか、行動の判断は各自で下せという方針だったな。そうだった]」
「そうですが」
実は王子様、というかジェレック君だな。ジェレック君がお兄さん()達と王子様抜きで行動している時に、王子様に関するあれこれを喋っていたらしいんだ。だから、王子様が国から追放されてるっていうのはこう、公然の秘密というか。少なくとも私は知っていておかしくない状態になっている。
だから、縋りつかれる、という表現になっても特に疑問は無かったらしいし、その表現の心当たりが無くは無いらしい。ただそこで私の意見を求めるのは分からない。まぁすぐ自己解決したみたいだけど。
ただまぁ、そうだな。
「私は私の生活を守るのが最優先ですからね。好きにすれば良いと思いますよ」
「[そうだったな]」
「まぁでもその上で、リットさんが帰りたくないけどちょっと相手の取る暴力の上限が高くて抵抗でき無さそう、とかって状況で、こっちに助けを求めるなら、助ける位はしますよ」
「[…………いいのか?]」
「いいもなにも、私は最初からそういうスタンスです。助けを求められたら良識と余裕の範囲で応じます。最初に避難してきた人達を受け入れた時から変わりません」
それに、国に居る時の王子様は真っ当だった筈だ。強欲傲慢なのは何もかもが不足している状態だから。王子としてあるべき場所にある状態なら、何も問題は無い筈だ。
そんな王子様を追放する国だぞ? それも(ジェレック君が知る限りだと)言いがかりに近いような理由で。そんな国と友好的に付き合えると思うか? むしろこっちからお断りだわ。
そしてお断りである以上はいずれ敵対する可能性がそこそこ高いし、その理由が王子様になるってだけで、最終結論的に大差はない。国が真っ当なのであれば、王子様だってそこまでゴネないだろうし。




