44.作戦会議
私がぱっと見ノリと勢いの提案を出して、まさかその提案に王子様が乗り気になるとは思ってなかったらしいお兄さん()は頭を抱えてしまったが、私と王子様の意見が一致しているという事は、それなりに成功率が高いのでは? とも思ってくれたらしい。
まぁ私は提案だけして王子様に丸投げのスタイルなんだけどな。現実になった場合の、ドラゴンの飼い方なんて分からない。
「[精霊を祖とする説がある程だから基本的に糞尿の世話はいらない。寝床も結界樹があるなら勝手にそこで寝るだろう。だから必要なのは普段の待機場所だ。開けていて高い場所だとなお良い]」
「じゃあ屋根の上は? 正面の棟の屋根修理は終わりましたし、屋根は鋼材、金属の板を並べるものでした。つまり三角屋根ですけど比較的平らです」
「[ならば、屋根の強度を魔法で上げれば良さそうだな。次、具体的な捕獲の方法だが、ヤヌシ。俺様の杖に使ったのと同じ宝石をありったけ用意しろ]」
「同じ宝石はあと2つしかないですけど」
「[……本当か?]」
「ここで嘘ついてどうするんですか。杖の修理に宝石が必要なのかなーって思ってたから探すつもりではいましたけど、まだ追加は見つかってませんよ」
どことなく諦めている感じのお兄さん()の前で、王子様が出した指針に私が提案するという形で、ドラゴンテイムチャレンジに必要なものや準備をピックアップしていく。
ついでに王子様がちゃっかりしていた部分は素知らぬ顔でシャットアウトするが、嘘は言って無いぞ。王子様の杖に使ったのと同じ赤いサファイア=ルビーは「同じ大きさのものは」あと2つしかない。
結界樹がドラゴンの寝床になるのは知っている。屋根を提案したのは、ドラゴンテイムチャレンジに成功した1回の時に試行錯誤したからだ。そしてテイムに必要な宝石は、王子様の杖に使われている宝石と「合計で同じ体積があればいい」って事も知っている。テイム協力者がそう言ってたし実際成功したから。
「[なら後は、宝石を使った首輪だな。相手はベビーとはいえレッドドラゴンだ。熱に強くしなやかな金属が良い]」
「流石に金属加工技術まではありませんから、金属の輪を探すところまでは出来るとして、大きさぴったりにするのは厳しいですよ」
「[……致し方ないな。俺様が自動で大きさを変えるように魔法をかける。金属の輪か、無いなら棒で良い]」
「棒でいいなら標識の柱が使えますかね」
「そういやいくつかあったな。だがあれは熱伝導率が低いが、大丈夫か?」
「[いや、熱が伝わりにくいのであればむしろ好都合だ。しかし標識の柱というと、中が空だったな? 出来ればあそこに銀を流し込みたい]」
「そんな大量の銀は流石に無かったような……」
「銀は錆びやすいからな。必要な性質は何だ? あぁいや、魔力は分からんぞ。靭性とか電気伝導率とか、類似する性質で言ってくれ」
「[難しい事を言う。それならいっそ水晶の粒でも詰めてみるか。それでもほぼ変わらないぞ]」
「……。ガラスと水晶って違う物ですか?」
「いや待て、山の方に行った時、ズリらしい岩場があった。あそこなら水晶が拾えるかもしれない」
「[ずりとは何だ]」
「鉱物を掘った時に、いらない石を捨ててた場所だよ。金属を探してる途中に出てくる水晶はいらないものだ。だから混ざってる事が多い」
「警戒だけはしっかりして行ってみますか。標識丸ごと1本埋める必要は無いんでしょうし」
途中からお兄さん()も参加して話し合う。気を引く方法、動きを止める方法、もし途中で首輪(仮)が壊れた時の備えといろいろ話し合っていったら、お兄さん()も行けそうな気がしてきたようだ。
まぁ一番いいのは倉庫から「大型魔物用魔法首輪」ってやつが出てくる事なんだが、今探してる暇は無いしな。それにどっちみち、最初にテイムの魔法をかけるのは王子様だ。
こっそり首輪を付け替えて主人を入れ替えておく、という手札を手元に置いておくためにも、明日もしくは今日の午後は水晶拾いを頑張るとしよう。




