42.待ち受けるもの
まぁそういう方針が決まったので、今日から私も外回りだ。それもお兄さん()達にひっついて、道路をみっしりと埋めている色々な残骸を回収する形で。たまに車とかを回収したら中に居た小型モンスターが取り残されたりするから、なかなか緊張感がある。
ちなみに私は牛がいる場所を正確に知っている訳ではない。当たり前だが、ゲームと今目の前の現実では地形が違うからだ。そしてゲーム知識である事を説明できない以上、ゲーム知識抜きでお兄さん()達を次の次のエリアへと導かなければならない。
とはいえ、そこはまぁ何と言うか、どっちかというと得意分野だからな。状況証拠から辻褄合わせして言い訳するっていうの。割と便利だぞ、この特技。
「私は世界がこうなる前日に、あの家に越してきたんです」
「ふむ」
「だから周辺の地形には詳しくないんですけど、確かこっちの方に牧場があるっていう看板をちらっと見た覚えがあって。そこに乳搾り体験って文字と牛の絵が描いてあったような気がするんですよね」
「あぁなるほど、だから牛か」
なお実際にそんな看板があったかどうかは分からない。実際にあれば良し、無かったとしても、こんな訳の分からない状態になってるからな。モンスターとかに壊されたと判断される可能性が高いだろう。
という事で「どこか割と近くに牛がいる」っていう証拠(偽)を提示もとい牛がいる発言の根拠を説明し、その看板の記憶(偽)ではこっちだった筈、と、マップから推測できる次の次のエリアへ向かっている。
まぁ違うと言っても『サバイバルクラフターズ』の初期エリアと構成要素というか、大物の位置はほぼ同じだ。分からなくはない。とはいえつい周りをきょろきょろと見回してしまうが、周辺の地形に詳しくないと言ったし、看板を探していると言い訳すればたぶん誤魔化せるだろうけど。
「警戒!」
『サバイバルクラフターズ』のエリア分けは、大きな障害物で遮られている形だった。その障害物も回収できるんだが、その大物を回収するにはボス戦をする必要がある訳だ。専用ツールが必要とか、回収に時間がかかってその間に襲い掛かって来るとかで。
なおゲームではエリア全部を綺麗にしないとそもそも回収が出来なかった。だから最短ルートで進んでいる現在はどういう扱いになるんだろうなー、とは思っていたんだが、多分もう少しでエリア境界、ってところで、ジェレック君が声を上げた。
即座に全員が背中合わせで周囲を警戒する。私は王子様と一緒に、その輪の中で守られる形だ。仕方ないな。近接戦闘は出来ないから。
「[……それなりに強い個体が居るようだな]」
「分かるんですか?」
「[魔力感知の初歩だ。生き物は皆……いや、こちらの生き物はほぼ例外なく魔力を有している。そして有している魔力が多い程能力が高い。だから強い魔力を感じた場合、そこには強力な個体が居る場合が多い]」
「なるほど」
なお私の内心としては、王子様が索敵も出来るだと!? と、そりゃまぁここのボスあれだしなぁ。だ。
このエリアは『サバイバルクラフターズ』では、最初のエリア。ステージ1である。そしてジェレック君がさくっと首を落としていたあの棘の生えた熊。あれは実は、中ボス相当のやつだったりした。
最初のボスにそこまでギミックがある訳でもなく、同時に、そこまで強い訳でもない。しかしボスとしての迫力は必要、という事で、ここのボスは大型動物系のモンスターだ。
なおかつ、私は何度も周回したから知ってるんだが、とあるフラグというか伏線というか、私なら、このボスの攻撃パターンを良く覚えておけよ? って初心者にアドバイスする点があって。
「[伏せろ!]」
周囲を警戒していた王子様の号令に応じて、全員がその場にうずくまる。その上を、ゴォッ、と、大きな何かが通り過ぎて行った。
私は正体を知っているが、顔は伏せていたので見ていない。だが恐らく、王子様とジェレック君は見ていたのだろう。たぶんお兄さん()達も見ていた。だって私が顔を上げたら、全員の顔色が酷い事になっていたからな。
「……おい、今のってまさか」
「[流石にジェレックでも厳しいな]」
「[命を引き換えにすれば、討伐自体は可能です]」
「[バカ者。お前以上の単独戦力が居ない現状、生還は絶対条件だ]」
「倒す気になってる所悪いが、そもそも相手は飛んでたぞ。その時点で攻撃が届かないんじゃないのか」
「[そういう事だな。ヤヌシ、悪いが一度退くぞ]」
「あ、はい」
平均からすると超小型というか、たぶん卵から孵って割とすぐに親からはぐれたレベルとはいえ。
ドラゴンなんだよな、ここのボス。だから攻撃パターンを覚えておけば、その後のドラゴン戦で全部パターンが使えるんだけど。




