40.探索予定と想定外
ちょっと探索を早回しにした方が良さそうな推測が出来てしまったが、私にできるのはとりあえずこの家の修理だ。という事で、合計4日、転移26日目の夕方までかけて、何とか1棟分の屋根を修理し終わった。
いや、めちゃくちゃ早いんだけどな。本当に。王子様がお菓子とお肉を引換みたいな感じで狩りまくってくれてるからか、たぶん全体のステータスが跳ね上がってるんだと思う。うちにいる人、皆調子良さそうだし。
それに、屋根の修理をしながらでも進めていた、ライフライン維持の必須設備の最大強化も終わった。これでここは大丈夫だな。防衛さえ出来れば。
「とりあえず、残り2棟分の屋根の修理が最優先として」
そこは変わらないし、この調子でも雨天除き8日はかかるだろう。もちろんそれが非常に短い期間なのは分かっているが、ちょっと無視できない長さなんだよな。
ゲームでも、クリアする事で拠点が増えるエリアはいくつかある。でも牛がいる場所以外は、井戸が生きていたり、最初から避難所だったりして、ライフラインが止まっても何とかなるようになっていた。
まぁだいぶ先のエリアで生存者がいる、っていうのは、そういう状況でもなければ有り得ないって事なんだろうが……ここで問題なのは、探索の進行ペースなんだよな。ゲーム時代のメインストーリーとも言う。
「決して怠けていた訳ではないとはいえ、確か最短2週間で到着した覚えがあるんだよな……」
もちろんゲーム内時間で、である。そしてゲーム内時間っていうのは、ある程度作業が進んだら日が変わるというか、チャプターが日数で表示されてたところがあるから、今とは可能な作業量が全然違うんだが。何しろ、実質道路を綺麗にする素材集めはいくらでも出来たし。
最長記録の方は覚えていないが、それでも2ヵ月は経っていない。つまり現在は、ゲーム時代からすると進行が大幅に遅れていると言える。いやまぁ屋根裏部屋の解放は更に先だから、フラグがごちゃついてるのも確かなんだが。
フラグはともかく、ゲームではなく現実である以上、本物の命がかかっている訳だ。その状態で探索が遅れると、どうなるかって話であり。
「ここから8日、となると、雨が一度も降らなくても1ヵ月は超える。そこから毎日探索というか資源回収をして探索範囲を広げたとして、あそこまでどれくらいかかる……?」
声に出して状況を整理するが、たぶん1週間では無理だ。でも、更に1ヵ月かけている余裕は、恐らくあちら側には無い。となると、長くても3週間で今のエリアと次のエリアを突破し、次の次のエリアを半分ぐらいきれいにして探索しないといけない訳で。
……怪しまれるのが加速するのを分かった上で、お兄さん()達について来て貰うしか無いな。周辺警戒とゾンビやモンスターの迎撃をお任せして、回収に集中しないと無理だ。ついでに道案内。エリアを綺麗にしないと次のエリアには行けない、っていうのが現実でも働いていたら全部綺麗にしないといけないが、そうじゃないなら「正しい道」を知っているのは大きいだろうし。
出来ればソロ行動したいんだが、その状態で回収に集中しようと思うと「自動迎撃ドローン」とかが必要だ。そして流石にそれはレア度も運用難易度も高い。それにゲームシステム的にも、仲間に同行をお願いする方が楽で確実な方法となる。
「それに屋根修理と壁強化の資源も必要だし、数日以内にはお願いしよう」
口に出して、うん、と自分に頷いて、寝る事にする。色々出ている独り言だから、自分の部屋で夜に戸締りしてからだったぞ。
で、翌日。転移27日目。
「[ヤヌシ。お前牛がいる場所を知っているな?]」
「はい?」
とりあえず朝ご飯を食べながらお兄さん()への話の切り出し方を考えていたら、いきなり王子様がぶっこんできた。はい??? だが???
「[とぼけても無駄だ。昨晩そう声に出していただろう]」
自信満々に言い切る王子様であり、さあ吐けと言わんばかりにこっちを威圧しているが……その後ろに、ぬっと大きな影が立ったのは気付かなかったらしい。
「リット」
「!?」
低ぅい声と共に、王子様の頭が掴まれた。ジェレック君は……ちょっと離れた所で、探索に出ている人達数人がかりで抑え込まれている。まぁそれはそう。
「盗聴はこっちじゃ犯罪だと、俺は、しっかり注意したよなぁ……!?」
「[ぐあああっ!?]」
そして頭を掴んだ手に力が込められて悶絶する王子様。見事なアイアンクローだ。痛そうだな。同情は出来ないけど。強欲傲慢と言われるのはそういうとこだぞ。本当に全く。
しかし危なかった、盗聴されていたとは。うかつにゲームとかシステムとか口に出さなくてよかった。……これ、王子様に私が魔法を使えるのがバレてでも情報的シールド、つまり防諜&隠蔽結界的なものを張っておいた方がいいか?
まぁでも、それはこの後王子様に正面から請求すれば良いか。王子様の事だから、気づかれないように穴を残すか、穴のある魔法を教えるだろうけど。一応表向きは自分が教えた魔法に穴があった、なんて絶対言わないだろうし。
「それもツミキさんの部屋に対してやってるって事は、他の部屋にもやってるって事だな!? お前は! いい加減にしろと!!」
「[バカ力が俺様の頭が割れたらどうしてくれる!?]」
「割らない程度の力加減はしてる! そして、反省の色がねぇなぁ……!?」
「[止めろぉああああああっ!?]」
まぁ探索を急げるなら、それは助かる事ではあるんだが。
それはそれとして、お兄さん()の説教が終わるまでは見守るけど。ご飯食べてる途中だし。
本当に、反省しろ。ちょっと丸くなったと思ったらこれだよ!




