39.現実故の解決と問題
素材を全て持ってジェレック君及びお兄さん()と共に、自分の部屋に戻っていった王子様は、きっちり2時間で杖を作り上げてきたらしい。階段の下から声をかけられたから、それに応じてロープを持っていったら、ぶっとい骨に細いワイヤーを絡ませてルビーを半分埋め込んだ、って感じの杖(?)を持ってたから。
私はその間板金の磨き作業をしてたんだが、ついでに私の服も綺麗にしてくれたからな。魔法が使える王子様凄い。
「[この程度で喜ぶな。火矢を2、3本ずつ撃つのが限界だというのに]」
「一発の火矢でも弱点を狙えば良いのでは? それに丸焼きならともかく、消し炭にするとお肉食べられませんし」
「[……。一理あるな]」
モンスターは大事なお肉、というのがここの暮らしでしみ込んだのか、王子様は比較的簡単に機嫌を直してくれた。そしてそのまま、午後の討伐もとい探索についていったようだ。お兄さん()は杖作りの間一緒だったし、何か話をしてたみたいだから、たぶん大丈夫だろう。
私はロープを直して貰ったので、再び屋根の上で1人作業である。慣れてるし、他の人の声が聞こえるからさみしくは無い。というか、ゲーム補正らしき謎パワーでさくさく進む作業がとても楽しい。この規模の屋根とか、ビニールシート使いながら1ヵ月とか普通にかかるのに。
まぁでも作業が早く進むに越した事は無いので、浄水器の浄水タンクの強化作業は進めながら夕方まで作業する。作業終わりに、一応天井に穴が開いている部分にビニールシートを張って、作業終了だ。
「なんかすごい沢山お肉入ってますね?」
「それねぇ。リットさんが獲って来てくれたのよ」
「そうそう。めっちゃ活躍したらしい」
どうやら王子様は、火力が低い事を利点として、参加初日からとばしたようだ。……まぁ夕方の現在姿が見えないって事は、魔力切れでダウンしてるんだろうが。結構重めのペナルティがあったからな、ゲームでも。動けなくもなるだろう。
王子様の分のご飯はジェレック君が持っていったらしいので、たぶん問題は無い。そもそも、魔法の無い世界の人間が魔力切れを知ってる訳が無いし。なので、特にお見舞いに行ったりはせず、私も休む。いやー、色々あった1日だった。本当に。
で、翌日。転移24日目。夜中は作業できなかったので、浄水タンクの強化は時間の長い段階が残った。のはまぁいいとして。王子様も気になるが、私は屋根の修理を進めないとな。
「そういえば、スパイスポケットから砂糖って手に入るんですよね? 非常食として、飴や塩飴が作れるのでは?」
まぁ一応、強欲傲慢なのにシンプルで控えめな甘さが好きな王子様が喜びそうな、家庭で作れるお菓子を提案しておくんだが。もちろん、口実に使った理由も十分ある。ここに来た人達なら、軽くて小さくて日持ちしてなおかつカロリーがある非常食、っていうもののありがたみはよく分かるだろうし。
……その日の昼には、べっ甲飴どころか岩お○し敵なお菓子まで出来てて驚いたし。部屋の隅で王子様がお菓子を頬張ってるところを見ちゃったんだが。
「[……砂糖等の甘い物には、魔力を回復させる効果がある]」
「え、そうなんですか?」
「[そうだ。だから甘い物は魔法を使う人間にとって必須なんだ]」
「なるほど。じゃあ果物が見つかったら、果物飴とかジャムとか作ってもよさそうですね」
「[……ナッツキャラメルは無いのか?]」
「流石に牛乳というか、牛や山羊は見つかってないので……」
王子様の大好物はナッツキャラメルなのか。地味に難易度が高い(主にバター=牛乳の入手)が、まぁ可能なら狙っていこう。牛乳は色々使えるし。チーズとバターの元でもあるし。何より、牛を飼えるようになれば肉の心配をしなくてよくなる。
……実際、精肉まで行けるかは分からないが、それはその時考えるとして。牛か。山羊でもいいけど。その手の「飼える動物」が見つかるの、結構先なんだよなぁ……。具体的にはエリア2つ分先だ。海の手前である。
あそこのエリアで「飼える動物」と一緒に見つかる人数もそこそこ多いから、早く合流したいのは確かなんだが。
「……あ、いや、待てよ」
人数がいるし、ついでに住む為の部屋というか場所も増える。修理すれば。牛がいるから飼育ってコンテンツも解放される、かどうかまでは分からないが、けどそれは、拠点が増えるって事でもあって。
……すなわち、電気と水道を何とかする手段が、もう1セット必要、という事だ。
あそこ、一応発電機はあった筈だけど、水は確か貯水槽頼りだった筈だし……これ、急がないと牛がいなくなってしまうまである、か?




