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31.棚から牡丹餅最適解

 ひとまず裏庭に大きな鉢植えを出して、スマホの不思議パワーでその苗木っぽいもの……というか、名前が「結界樹の苗木」なので苗木だったりする……を出してみる事にした。

 裏庭は相変わらずのカオスっぷりだったが、私はともかく王子様がこっちに来るのはまぁまぁ珍しい。というかまだ不信感の方が勝っているから、滅茶苦茶警戒されていた。王子様は気にしていなかったが。ちょっとは気にしろ。表に出してないだけかもしれないけど。

 まぁでも私が一緒に行動していて、しかも大きな鉢植えを前に何かやっている、となると、多少は疑問の方が勝つらしい。十分に距離をとって作業をしながらだが、それなりに視線が集まっていた。


「[相変わらず便利な力だな]」

「どうも?」


 そしてその鉢植えに出てきたのは、結構キラキラしい苗木っぽいものである。大分変な植物に慣れてきた人達でも、明らかに金属っていうキラキラにはやっぱりちょっと思考停止するようだ。まぁ、気持ちは分かる。

 もっとも王子様はその辺気にすることなく、真剣な顔でぐるっとその苗木の周りを一周した。で、正面らしい、私には分からない赤い宝石がはまっている部分まで戻ってきて、1つ頷いて言う事には。


「[結界樹だ。まだ苗木だが、随分と良いものがあるではないか]」

「けっかいじゅとは……?」

「[そんな事も……そうか魔法が無いのだったか。結界樹とは、金属を取り込んで成長する樹木に一定量以上の金属を与え、その一部を完全に金属に置き換えさせた上で調整を施して作る生きた魔道具だ]」

「生きた魔道具」

「[えぇい魔道具の説明からせねばならんのか。魔道具とは、魔力を持たないか魔力が少ない一般の民でも魔法の恩恵を受けられるようにする為の道具である。大抵は宝石に魔力を込めて動力とするが、この結界樹は樹木そのものが生きているから半永久的に安定して起動し続けるというものだ]」

「……。そもそも結界っていうのはこう、災害とか敵対的な生物とかから特定範囲を守るという感じの魔法で合ってます?」

「[そこまで初歩から解説せねばならんのか!? 今回はその理解で合っているが!]」

「リットさんだって冷蔵庫の説明した時かなり考え込んでたでしょ」

「[…………それもそうだな。異世界の技術という意味では大差ないか]」


 落ち着くのが早い。まさしく、すんっ、って感じだ。まぁ知っていたようだからってついでに色々前提知識を出して貰うべくわざと聞いたのは私なんだが。

 いやぁここで王子様に結界樹と魔道具に関して説明してもらったから、何で知ってるんだっていう理由付けが出来た。助かった。この結界樹、苗木だけあって成長させる時間が必要だから、ちょっとでも早く植えたかったんだよね。


「[まぁだが、まだ苗木だ。早く地面に根付かせて育てた方が良い。本来なら何十何百年とかけて育てるものだ。いくらこの土地に植えれば恐ろしい勢いで植物が育つと言っても、そこそこ時間はかかるだろう]」

「なるほど。ちなみにどの辺に植えたらいいですかね」

「[場所だけなら、あのコメとやらが生る木の場所が良いだろう。ここから見て左から2番目のやつだ]」


 どうやら最適解の場所は王子様と同意見になるみたいだな。素直に王子様の意見を聞き入れたという体であの場所に植えさせてもらおう。いやー、それにしてもまさか王子様が魔法という技術の技術者として仕事をしてくれるとは。

 周りで作業していた人も、まぁ全員聞き耳立ててるよな。そして王子様の翻訳魔法は自分に魔法をかける形であり、声に効果が乗る。つまり全員今の会話は理解できる形で聞こえてたって事だ。

 なので人払いも「コメの木」の植え替え先もスムーズに決まったよ。そして「結界樹の苗木」は理想の位置に植えられた。やったぜ。


「……普通の肥料を撒いて水をかけてればいいんですかねこれ」

「[樹木部分よりも金属の方が少なくなったら金属を与えるようにしろ。金と白鋼だ]」

「金は分かりますけど純度がありますし、しろはがねとは……?」

「[純金に決まっているだろうが。……白鋼が無いのか? 魔力触媒の基礎の基礎だが?]」

「魔法というのがおとぎ話だったんですってば」

「[……それもそうだな。しかし流石に俺様でも白鋼の融解温度までは知らんぞ]」


 何かいきなり躓いた気もするが、まぁ、その、地下倉庫からインゴットの形で出てくるといいな、って……。当分は大丈夫な筈だし……。


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