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29.問題児の補い合い

 ジェレックという推定側近を引きずって自分の部屋に戻ったリット王子は、結局夜になっても部屋から出てこなかった。まぁあの王子様、自分の部屋のベッドは自分の目利きで一番いいやつに入れ替えてたし、同じく机と椅子のセットにソファーも一番いいやつを持ち込んでたから、側近の人もソファーで寝れるだろう。

 部屋ごとに小さいがお風呂とトイレがついているので、汚れとかも問題無い筈だ。たぶん。恐らく。それに他にも「避難民」の人達はいたから、その人達を空き部屋に案内し、怪我をしていたなら手当てして、すっかり夜になってから就寝だ。

 そして翌日、転移22日目。


「[おはようございます!]」


 身綺麗になって、剣以外の武装を解除した側近ジェレックが食堂扱いの部屋に現れた。リット王子の姿は見えない。

 つーかだな。


「いやまだこんな時間に誰かが居る訳ねーだろ……」


 という私は自室で、大型充電池の強化をしながらあれこれ確認してほぼ徹夜状態だったから起きていたが、今はまだ午前4時だ。流石に皆寝ている。それでなくても「避難民」の人達は限界超えてたのに、元気だなこいつ。

 部屋に居るので一体型パソコンの大画面で、誰もいない食堂の入口で立っている側近ジェレックのミニキャラが見えているし、さっきの大音量の挨拶も聞こえていたんだが、ある意味想定通りが過ぎる動きに頭が痛い。

 何故ならこのジェレックというやつ、一言で言うと、脳筋なんだ。リット王子か側近の同僚の言う事は素直に聞くんだが、それ以外は聞き入れない。独自行動する時は、突撃オンリーだ。大変扱い辛かった。


「強いんだけどな……軽装分類とはいえ金属鎧と魔法金属の剣持ってる上に魔法まで使えるから、かなり強いんだけどな……」


 ゲームのキャラクターにちょくちょくいる、戦闘力以外を捨てたおバカというやつだ。現実だったらもうちょっとマシなんじゃないかと思ったんだが……ダメっぽいな、これは。

 どうやら返事がないのを声が小さかったからだと解釈したらしい側近ジェレック。「[おぉはようございます!!]」と、更に声量を上げて挨拶をした。違う。声はもうデカすぎる。時間が早いんだ。

 しかし自分では出ていきたくない。というか絶対にややこしい事になるから出ていけない。なのでしばらく様子を見ていたら。


「[……ジェレック]」

「[殿下! まだ眠っている筈の時間では!?]」

「[お前の大声で起こされた]」

「[し、失礼致しました! 壁が薄いのですな!]」

「[お前の声が大きすぎるんだ。この建物は木で作られているから、城に比べると防音性能が低いのは仕方ない。それと、ここの住民が動き始めるのは、太陽が丸く見えるようになってからだ]」

「[なんと……!?]」

「[だから一旦戻って、日が昇ってから出直せ]」

「[はっ!]」


 リット王子が回収、もとい迎えに来てくれた。良かった良かった。これであと2時間ぐらいは眠れる。ちょうど大型蓄電池の強化にかかる時間もそれぐらいになったし。

 しかし王子様、丸くなったな。言い方はあれだし立派な石造りのお城を比較対象にするなと思うけど、他の人を気遣って自分の側近を回収するとは……。

 ……いやあれどっちかっていうと「もう後無い状態だが?」(意訳)って言ったのがきいてるって気がするな。これ以上失点が増えたら追い出されるっていう危機感の方がしっくり来る。いやまぁ、丸くなったのも間違いないんだけど。


「まぁ、あの猪突猛進突撃野郎を操縦してくれるのなら、それは成果としてカウントしていいだろうし、周りからも認められる可能性はあるでしょ……」


 そもそも他に言う事聞かせられるやつが、とりあえず現状いないからな。でも戦闘力的な意味で強いのは間違いないから、文字通り自分の剣としてちゃんと指示を出して動かす事が出来れば、それは仕事としてカウントされてしかるべきだ。

 ……まぁその為には探索範囲を広げた方が良くて、その為には私が周辺探索を頑張らないといけない訳なんだが。その為にも、とりあえず今は、ちょっと寝る……。2時間だけ……。タイマーもかけたし……。


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