28.問題児追加
昼過ぎ、もちょっと遅いな。おやつ時か。それぐらいには何とか発電機の燃料タンクが最大強化できた。なので早速発電機の大型蓄電池の強化に取り掛かる。資材は……やっぱりギリギリだな。まだ外の探索は必要か。必要だな。
他の設備を強化する事も考えたんだが、やっぱり資材というか資源というか素材が足りないんだよな。まぁそれはそう。だって探索してないから。ここで出不精が足を引っ張るとは。
車の修理もしたいんだが、そもそも現状車を使う程の距離まで道が通れる状態になっていない。手放しで高速移動できて小回りもきく1人用の乗り物は他にもあるけど、そっちは外では見かけないし、地下からも出て来てないんだよな。
「とりあえず、時間に余裕が出来るまでは2階の掃除するか……」
あとちょっとで終わった筈だからな。その次は屋根裏で更に難易度が上がるんだが。まぁ、地下倉庫がどうしようもないから誤差だろう。
それに21日目という事は、リーダーのお兄さん()達が新しい「避難民」の人達を連れてくる可能性が高い。中に残ってる人達はそういう風に動いているし。それにそろそろ1階の部屋は埋まって来た筈だからな。
という事で夕方まで掃除にかけて、どうにか2階の部屋の内、誰かが住める場所になっている部屋は全部使えるようになった。そうじゃない部屋も掃除をして最低限の整備もした。システム的に鍵はかけておくが。
「ん、帰って来た……し、連れて帰って来たか」
さて、といい加減時間も伸びてきた大型蓄電池の強化を進めたついでに全体の状況を見ると、リーダーのお兄さん()達が、知らない人の集団を連れて戻ってきたところだった。スマホもしくは一体型パソコンから見ると、本人デフォルメのミニキャラになるんだよな。『サバイバルクラフターズ』と同じ感じで。
とはいえ「避難民」の人達は、直接会うまでは正体不明だ。いわゆるモブキャラって感じでしか表示されない。だから最初の「避難民」に王子様が混ざってる事に気付くのが遅れたんだが。
とりあえずここまで厄ネタもしくは爆弾なキャラクターは王子様だけだったが、と思いつつ、私も顔を出して手当や案内の手伝いをするべく1階に降りた。
「[ジェレック! 生きていたか!]」
「[殿下!? 殿下こそ、良くご無事で……!]」
「[俺様が早々簡単に死ぬものか]」
ら。
なんか、感動の再会、みたいな事になってた、のはいいんだが。
ちょっと個人的には、そっちかー、と、若干遠い目にならざるを得ないというか……。
「いやリットお前、初めて会った時には既に死にかけてたじゃねぇか」
「[……仕方ないだろう]」
「[貴様!? 殿下に対して何という口のきき方だ!]」
「リットって呼べっつったのはその本人だぞ」
「[え、な……で、殿下?]」
「[事情と状況故だ。……それと、ジェレック。ここは王国ではないし、彼らは王国民ではない]」
「[しかし!]」
「[愛称呼びを許したのは俺様である。……ともかく、ちょっと来い。ここまでの経緯を説明する]」
流石にデカすぎるツッコミポイントがあったからか、お兄さん()がつっこんでいたが、多少とは言え丸くなった王子様はともかく、感動の再会をしていた方は大変な勢いで噛みついていた。一応何言ってるか分かるって事は、王子様同様翻訳魔法を使っているか、王子様が翻訳魔法をかけたんだろう。
そして多少とは言え丸くなった分だけ、その言動を放置するとヤバいという判断をする事が出来たらしい王子様。まだ何か言いたそうなそいつを引きずって、自分の部屋の方向へと移動していった。
なので私も色々飲み込んで、なんだあれ、という視線でそれを見送ったお兄さん()達の前に姿を現す。
「ざっと一通り聞こえましたけど、また強烈なのが来ましたね……」
「同意しかねぇな。……が、ツミキさん。俺の気のせいじゃなきゃ、あのうるさいの、殿下っつってなかったか?」
「殿下って呼んでたような気がしますし、何なら王国とか王国民とかも聞こえましたね」
「そっちも聞き間違いじゃなかったかぁ……」
そしてお兄さん()は、こっちもこっちで頭が痛そうだった。そうだな。殿下で王国って事は、まぁ、王子様だ。私は知ってたけど。
「……あれか? 不敬罪ってやつか?」
「本人が言ってた通り、ここは王国ではありませんからね。そもそも非常時です。本人を言いくる……説得して、不問にして貰いましょう」
「分かってたがマジで言う時は言うなツミキさん」
一番平和に済むだろう方法を口に出したら、何故かお兄さん()に引かれてしまった。解せぬ。言いくるめ、っていうのを隠し損ねたのがダメだったか。
しかしこれで、通称王子様で通じるようになるかな。……まぁ既に、リット、っていう呼び方が広まってるから、そっちで呼べばいいか。