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3.序盤は不足が極まるもの

 内庭の草むしりは何とか昼までに終わったから、その足で元倉庫と言われた場所を見に行った。ただこの家、3世帯住宅っぽいところがあるからか、倉庫の数がやたらと多い。全部見て回りながら掃除するのは大変だった。昼ご飯を食べ損ねた。

 ただそれだけやって、色々便利に使えそうな道具を見つけたし、何なら鍬と草刈り鎌も見つけて、やっぱりこっちが先だったか、と膝から崩れ落ちる事になったけど、手で抜いたはずの草はどこにも見当たらなかった。

 色々雑にデータを入れるだけ入れておいたハードディスクにスマホを繋いで、じゃがいもの育て方を調べる。大きい芋は芽の数が同じになるように、縦に切って乾燥させればいいらしい。


「鍬で畝を作って、深めに穴を掘って、そこに断面を下にして植える……小さいのはそのまま使っていいんなら、大きいのは食べて小さいのを植えればいいのでは? あ、でもそうすると小さい芋しか出来なくなるのか。それは困るな」


 じゃがいもとさつまいもがあったらさつまいもの方が育てるのは楽っぽいんだが、さつまいもはまず蔓を育てるところからやらないといけないらしい。『サバイバルクラフターズ』ではそんな作業をしたことが無いから、確実なじゃがいもからやろうと思ったという訳だ。

 それはそれとして、抜いた草はどこにいったのかが分からない。一応貰った間取り図を確認しても、書いてある倉庫は全部見て回った。鞄も持ってなかったから、どこに消えたのか本当に分からない。

 戸棚に残っていたカロリーが手軽にとれるバーをもそもそ食べながら『サバイバルクラフターズ』の拠点の事を思い出してみるが、この間取りと同じだった筈だ。

 ……、いや。


「そういや、屋根裏と地下があったな……?」


 そう言えば、と思い出したのは、確か特定のキャラクターが生存者として合流した後に解放されるエリアだった。そう、屋根裏と地下があるんだよな、この建物。三角屋根だし地盤と基礎がしっかりしてるからあってもおかしくは無いんだけど。

 屋根裏は3ヵ所、凹む、の形をしたこの家の、角の部分で区切られたそれなりに広いスペースだ。寝室として扱う事が出来て、収容できる人数が増える。

 地下は、驚いた事に地下3階まである。何でだよ、と流石にツッコミを入れた記憶がある。いやぁ、地下を開放するキャラクターって1人じゃなかったんだな、って。そしてこの地下っていうのが、丸ごと全部超大容量の倉庫になる訳だ。


「確か、入口が出てきたのは、正面の右側の角だった筈……そういややたらと嵩張るものがこれでもかと詰め込まれてたから、掃除が一番大変だった倉庫だな? あそこか? 地下を隠す為だったのかあれ?」


 一般家庭だった筈のこの家に、何でこんなに毛布やビニールシートが、とは思ったものの、どちらも『サバイバルクラフターズ』においては貴重な資源だ。だから破ったりしないように丁寧に扱ったのもあって、あんまり物を大きく動かしたりはしなかった。

 だから地下への入口があったとしても分からない。そしてそこが倉庫として機能しているなら、少なくとも『サバイバルクラフターズ』の仕様がそのまま使える場合、抜いた草はそこに放り込まれる筈だ。

 ただ問題は、同じく『サバイバルクラフターズ』の仕様だ。拠点を含めていくつかの建物を持つ事が出来るんだが、「汚染度」というパラメータが部屋(施設)ごとに設定されていて、これが高くなると部屋(施設)の性能が落ちる。だから定期的に「掃除」するか、自動掃除ロボットを作るか、清浄魔法をかけるか、ゾンビ苔の品種改良をしないといけない。


「いやまぁ、少々汚れが溜まったぐらいで何も入らなくなるような要領の倉庫じゃないんだが……むしろこれが一杯になる時なんて来るのかってぐらい容量があった筈だから……」


 ただ、家自体の元倉庫には色々な道具が残されていた。これが元々あったのか、それとも『サバイバルクラフターズ』の世界(?)に移動した結果出現したものなのかは分からないが、地下にも同じように、色々便利な道具や、何なら食料とかがあるかも知れない。

 探索だけだと手に入れる事が難しく、けど作るには専門職のキャラクターを仲間にする必要があるけど、修理だけなら素人でもできる、みたいな便利道具もあるし、そもそも自動掃除ロボットがその類だ。

 後は、『サバイバルクラフターズ』において重要資源であるゾンビ苔。を、絞る絞り機と、搾りかすを含めた色々を燃やして肥料と言う名の灰にする焼却炉。これは流石に必須と言うか重要施設だったからか、ログインボーナスの最初の方でプレゼントされた覚えがある。もしかしたら、それが地下にあるかも知れない。


「苔液、ほんとこう必須戦略物資的な感じで何にでも使うからな……いくらあっても足りないというか、その為だけにゾンビを狩る部分もあったぐらいだし……」


 それにゲームの中とはいえ、搾りかすを燃やした肥料(灰)を畑に使った時の効果はすごかった。収量5割増しなのに収穫までの時間は半分になったからな。ちなみに『サバイバルクラフターズ』の中において畑の収穫は、植える物にもよるが1日が平均で最短が半日となる。

 じゃがいもは基本も基本だったし、芋類は割と育てやすく簡単に収穫できる上に収量が多い。だからじゃがいも尽くしになるとはいえ、少なくとも食べるのに困らなくはなる筈だ。

 もちろん他にも色々、特に甘い物とかも欲しいし豆を育てて醤油と味噌も作りたいし……。


「……そういえば、確か塩も育てて収穫するタイプじゃなかったか?」


 何を言っているか分からないと思うが、マジである。

 ただしそれは収穫物の中でも特殊だったから、手に入るのがいつになるかは分からない。

 ……むしった雑草の中に混ざって無いか? 混ざってる可能性自体はある。倉庫を確認する必要が増えた。


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