表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/37

26.王子様のトラウマ

 私はまだ時間があったので探索を続けて、リーダーのお兄さん()達は王子様を連れて一旦帰る事にしたらしい。そうだね。お肉があるからね。兎肉だけど。まぁモンスターだからいいか。

 なお王子様はフリーズしたままだったので、お兄さん()チームの1人が担いで連れて帰る事になった。だろうな。


「しかしこの坊主、気のせいか背負いやすいんだよな」

「背負いやすいサイズ?」

「いやそうじゃなくて、普通は人間って、背負われてる側も力入れないと上手く背負えないし、どう力を入れたらいいかっていうのは手探りになるもんなんだが……それが無い感じだな」

「背負われる訓練?」

「あぁ、それだ。まぁそんな訓練する理由なんて思いつかんが」

「……本当に偉い立場だった可能性?」

「なるほど? そう言われりゃそれもそうか」


 みたいな会話があったから、とりあえず王子様が本物の王子様だっていうフラグは立てられたかな。この調子で拠点に人を増やしていったら、その内王子様の傍付きというか、側近というか、そんな感じの人間も寄って来るだろうし。

 ……それでいくと、王子様にド直球で「いらない」はトラウマだったかな? 確か側近の人達だけが集まった周回で聞いた話がそんな感じだったし。こっちからすれば、自業自得では? って感じだったんだけど。

 しかしこれがきっかけで、あの王子様が反乱の決意を固めたりすると面倒もとい厄介だなぁ……と思ったところでタイマーが鳴ったから一度拠点に戻る。そして端末から操作して更に燃料タンクを強化して、絞り機や解体機に色々を突っ込む。


「そろそろ、町への道の柵ももうちょっと良いやつにしないといけないかな。……いやそれより舗装か。地面が歩きやすい方が、特に荷物を持って移動するなら助かる筈――」

「[俺様が荷物だと?]」


 それを門を入ってすぐそこのところでやっていると、実に不機嫌というか、地を這うような声が聞こえた。聞いた感じは意味不明な言語なのにその意味は理解できる、こんな言葉を喋るのは、とりあえず現在は王子様だけだ。

 正しくは異世界の言葉を喋った上で翻訳魔法的な物を使っているんだろうが、とりあえず今は分からない事だしな。……そう言えば、異世界の魔法は媒体と呼ばれるものが必要だった筈だが、この翻訳魔法を使う為の媒体はどこにあるんだ?

 確かあれって宝石を使う事が必ず必要だったし、大きい程楽に大きな魔法を使えるから、それこそ王子様本来の媒体って言うのは肩を使って支えなきゃいけないような巨大な杖だった筈なんだが。何で知ってるかって? 王子様を追い出す時に側近が5人中3人以上揃っていたら、反逆軍を指揮して襲い掛かってくるからだよ。


「[俺様は……俺様は、優秀なのだ。なのに何故、不要とされる。何故切り捨てられる。俺様以外が重宝される!]」


 それはそれとして、やっぱトラウマ踏んだっぽいな、あの「いらない」発言。一番親しい、右腕的な側近との会話を盗み聞きしなきゃ分からなかった叫びが今ここで出てくるとは。

 とはいえ、ここで上手い事すれば、王子様が改心してくれる可能性も……可能性、あるかなぁ。悪い意味で唯我独尊、自己肯定感が非常に高い分だけ周りを見下ろす事が自然体なこの王子様が。

 ……まぁ、やるだけはやってみるか。一応。見捨てたい訳じゃないんだ。たとえ自分の後味が悪いというだけの理由だとしても。


「では、冷静に考えてみてはいかがです? 今の状況を、冷静に、客観的に、外から眺めて。あなたは替えの利かない、絶対に必要な存在ですか?」

「……っ!」

「答え、出てますよね。私はあなたがどう優秀なのか分かりませんけど、賢いんだろうなっていうのは分かりますよ。真っ先に地下倉庫を狙った辺りとか」

「……」


 じとっとした視線をこっちに向ける王子様。そうだぞ。これ、褒めて無いからな。


「使い方と使う場所が間違っているんですよ、あなたの場合」

「[……何?]」

「例えば現状、私を排除してこの集団を乗っ取ろうとするからダメなんです。というか、私を排除した時点でたぶんこの家の不思議な力は無くなります。恐らくそれは、世界の変化によって私が得た能力なので」

「[だから貴様に従えと!?]」

「それも間違ってますね。上下をつける必要が無い場所に上下をつけようとするからぶつかるんじゃないですか」


 ぐむ、と言葉に詰まる王子様。おう。理解はしてたか。理解は。


「確かに私は家主ですけど、従属を強制した事はありませんよ?」

「……?」

「賢いなら、私が言った事は覚えていますよね? そう、最初に顔を合わせた時に。私が言ったのは、ただ飯ぐらいを置いている余裕はない、それだけです」

「……」

「どうせ一緒に暮らすのなら協力した方が良い。協力するなら役割分担をした方が効率的に動ける。素朴かつ当然の結果として役割分担をしているだけであって、本質的にここに上下は無いです」


 出ていきたいなら出ていっていいとも言ったが? 協力した方がたくさん食べられて快適に過ごせるようになるよねってだけの話だぞ?

 だから私が全員のトップって訳ではない。この不思議な力で不思議な植物やら何やらを調べる事が出来るから、見た目には頼りにされている場面が多いだけだし、そもそも家主を上に置くのは日本人の気質である。


「[…………何をすれば良いというのだ]」

「あなたが自分の情報を出さないから、あなたに適した仕事が誰も分からないんですよ。だから、体力が無いから戦ったり大物を運んだりの体力仕事ではなく、知識が無いから料理や掃除と言った技術仕事でもなく、そこにいるだけでいい荷物持ちぐらいしか任せられないんです。なので、まずはリーダーさんでいいので自己紹介をして下さい」


 お? ちょっと素直になったか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ