17.想定内の半歩外の発見
「こっち? いや助かるけど、こっちか。……こっちかぁ……いや必要なものなんだけども……」
転移10日目。
何だかんだこの家の事を説明したり倉庫の場所を案内したりであんまり箱開け作業が捗ったとは言えなかったものの、まぁ必要な事だったから仕方ない。やっぱり地下倉庫の入口に、間違って落ちたり知らない間に入れないようにする為の、鍵付きの柵を設置する事になったし。
それでも相当な数の箱を開けられたのは間違いないし、中身の種類を確定させるのもあって、大きさの違う箱を同じ数ずつ開けて行ったのは間違いない。なおかつ、この大きさの中身の変化パターンでいくと、そろそろあるんじゃないかと期待してもいいんじゃないかな? とも思っていた。
まぁ実際の所、思っていたもの……浄水器とか発電機じゃなくて、段階としては上だけど、大きさとしては下になるものが出てきた。具体的には。
「自動系のロボットというかドローンというか……どうするかな。まだこいつらに使うバッテリーと充電器、見つかって無いんだけど」
あると助かるがちょっと維持コストが重い。そういう感じのあれこれだったんだよな。しかも本体詰め合わせという感じだから、予備のバッテリーを含めた周辺機器が何も無い。
なおかつ、この手の類はまず充電しないと動かない。だから周辺機器、特に予備のバッテリーと充電器は必須であり、ついでに言えばこの手の類を一定数以上運用していると、扱いが面倒なやつが謎の感覚で引っかかってやってくる。
まぁ運用していれば、であって、所有しているだけならセーフだった筈だから、今この箱を開けてしまった事自体はセーフなんだが……。
「急ぎなのは、発電機と浄水器なんだよなぁ……」
何しろあの2つ、設置にそれぞれ3日ずつかかるからな。どんな作業をしていて3日かかるのか、かつ、同時に進められないのかは分からないが、今使えている水道と電気は『サバイバルクラフターズ』だと、1ヵ月経過時点で容赦なく止められた。
最初の内はパニックになったもんだ。もっとも、そこから実質の周回を重ねて、これは最初の半月以内に設置しておかないと色々間に合わなくなって詰む、というのが分かったから、今こうして急いでいる訳なんだが。
何しろ浄水器と発電機、『サバイバルクラフターズ』だった時は、道端に落ちてたからな。本当に。そうとしか言いようがない。だって道を埋めてる車とかそういうのに混ざってたんだよ。それを回収して修理して設置、だったんだ。
「初期端末もこの地下倉庫の中にあったし、たぶん浄水器と発電機もここにあると思ったんだけど、違ったか……?」
既にゲーム中では「避難民」と呼称されていた住人は受け入れて、しかもちゃんと会話出来て考えて感情を持った普通の人達だ。しかも私は安定した生活を目標とすると、わざわざ宣言している。水道と電気が使えなくなる事を知っているとは言えないが、いつまでも使える物じゃないのは、全員薄々分かっている筈だ。
……いやまぁ、異世界出身のあの王子様は分かってないかもしれないし、不思議な事が起こる、の中に水道と電気が入ってると思っていたりしたら、このまま使い続けられると思っているかも知れないが。使えなくなるんだよな、悲しい事に。
とはいえあの王子様、知識とか特殊技能って意味だと本当に役に立たないからな。それこそ釘バットでリーダーやってた人の方が遥かに仕事が出来るだろう。初期装備が釘バットっていうのは『サバイバルクラフターズ』においてだと、かなり強いキャラクターだったからな。
「……。いや、止まってる時間が一番無駄だな。外をざっと見て回った感じ、道端にそういう大型機械が落ちてる感じは無かった。だから、この中にあると信じて開け続けるしかない」
しかしこのドローン、少しでも動けばいいんだけどな。何しろ箱を自動で開けるドローンがあった筈だからだ。正しくは荷物の整理と解体作業の補助として使うやつなんだが、広告を見るとどこからか降ってくる支援物資コンテナを開ける動きをしてたから。たぶん出来る筈だ。
それがあれば、それこそダンボール箱だけであっても自動で開封してくれるなら、大幅に使う時間が減らせる。他に出来る事が一気に増える。何しろ一度開けてしまえば、自分の部屋の一体型パソコンからゲームの時と同じ感覚で動かせるんだから。
というか、一体型パソコンで箱を開ける操作が出来なかったから、こうして苦労しながら箱を開ける作業に何日もかけてる訳なんだよな。他にやるべき事は一杯あるが、流石にここだけは他の人に任せる訳にはいかないし。
「まぁ、でも、追加の目標は出来たな。そして、金属コンテナを優先しよう」
何故なら、充電器と予備のバッテリーも金属コンテナに入っている筈だからだ。これはちょっと一旦、木箱とダンボール箱は後回しにして、金属コンテナをひたすら開けていくことにしよう。
元々浄水器と発電機は金属コンテナに入っている筈だから、と、優先してはいたんだが。大きさ別の中身確認は後もしくはドローンに丸投げるとして、今はそのドローンを動かすのに必要な物を探す事に全力を出そう。