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15.準備も大詰め

 時々拠点に戻って持ち物の整理をして、饅頭型になった苔ゾンビの一部を絞り機に突っ込んだり、ボロボロで修復不能な大型のあれこれを解体装置に入れたり、塩おにぎりを食べたりして、日が傾いてくるまで周辺探索を続けた。結構な数の苔ゾンビを倒す事になった訳だが、本当に多いな?

 これが初期状態、つまり一番数が少ない状態だとすると、ここから先がかなり厳しいんだが。苔ゾンビの数は、増える事はあっても減る事は無い。だって苔だからな。気が付いたら増えてるものだ。本当に。ちょっとした溝どころか隙間や罅割れでも、緑色になって盛り上がってくるのはあっという間だから。

 とはいえ、林の道に続く通りは、それなりの距離をある意味切り開く事が出来た。車が放置されていたり家具が転がっていたりもあれだが、標識が倒れていたりブロック塀が崩れていたりしていたからな。これでかなり通りやすくなったし、ここは他の場所と違うというのが分かりやすくなった。と思う。


「最短今日の夕方到着、とはいえ、夜中になる可能性もあるし……灯りと、最低限の侵入を防ぐ柵は必要か」


 林から道に出たところで左右を見回して、電灯は辛うじて生きてるけどたぶん役に立たないって事に気が付いた。林の中の道にはその電灯すら無いし、暗くなっても苔ゾンビには関係ない。だから安全を確保する為には、柵の設置が必須だ。

 出来ればその内林を切り開いて壁ぐらいは設置したいんだけど、それはまたその内だな。今じゃない。何故なら時間も素材も足りないから。そしてとりあえず今できる範囲で、ってなると、やっぱり人の胸ぐらいの高さがある柵が限界だろう。

 一応柵の素材になる「木の板」と「釘」は、家具の解体で手に入れてる。灯りは、ちょっともったいないけど「ジェル」の瓶に細長い布、これももったいないけど「包帯」とかを入れて、口の所を詰めて、火炎瓶みたいにして火をつければ、結構安定した灯りになる。もったいないけど、色々足りないから仕方ない。


「ただここまでの感じ、修理したり作ったりするのは、プレイヤーの手動っぽいからな……」


 人間1人に出来る作業の量なんて知れている。だから集団生活して、役割分担して、こなす事が出来る作業の絶対量を増やして何とか生活出来ているんだし。そしてまさにその人手を求めて仲間を探して集めるのが『サバイバルクラフターズ』の目的の1つだったし。

 とはいえ、今いるのは1人だけで、改めて連絡の内容を思い出してみると、「避難民」はとりあえずまず休息と食事が必要だろう。つまり頑張るしかないって事だな。一応補正は入っているようだから、一応何とかならない事も無い、と、思いたい。

 という訳で、必要な素材と、釘を打つ為の金槌、出来上がった柵を設置する為の木槌を持って、拠点の入口側から柵を設置していくことにした。作ってすぐ設置するスタイルだ。そして柵同士の間に、「ジェル」を使った火炎瓶型の灯りを設置する。これでたぶん大丈夫な筈だ。


「力が強いと言っても、普通の苔ゾンビはしっかり作られた柵を壊す事は滅多にしないし、中に人間が居たらそっちを襲うのを優先して、柵に引っかかってるのも気付かなくなる筈だから、十分な幅で柵を設置すれば、安全に通り抜けられる筈」


 なんて言いながら、カンカンコンコンと自分の肩ぐらいまである木の杭に木の板を両側から打ち付けて、ゴンゴンと木槌で打って地面に固定する。本当は自分の背丈ぐらいの長さは欲しかったんだけど、今は急ぎだ。仕方ない。

 それを左右交互に設置して行って、ちょっと早いかと思ったけど、灯りはもうつけておく事にした。別に「ジェル」が燃えている匂いがするからと言って、苔ゾンビが集まって来たり逆に忌避したりって事は無い。不思議な事に。苔ゾンビ状態だと燃えないからだろうか。

 まぁでも、やっぱり何らかの補正は入っていたらしく、割と作業は順調だった。日が傾いてきていたところからスタートしたけど、ギリギリ辛うじて、太陽が見えている内に、林の道の左右に柵と灯りを設置出来たからな。


「いや、歩いて5分といってもそこそこ距離あるから、補正無しだと数日がかりだなこれ」


 まぁとりあえず今回は、間に合ったから良しとする。「避難民」の安全の確保が一番重要だから。

 で、この林から出たところは、もちろん地面が舗装されているから木の柵の設置は出来ない。でも大丈夫、ちゃんと持ってきている。というか、回収しておいた。そう、壊れて穴が開いていたけど修理が可能な、足元に重りを置いて固定するタイプの金属柵を。

 修理素材である針金もばっちり用意してあるので、端っこに当たる木の柵にくっつける形で置いてから修理する。そして、半開きの扉ぐらいの角度をつけて重りを置いた。それを左右共に設置するが、もちろんまだ隙間は空いている。


「まぁ、ちゃんとした壁とゲートを作るのはもっと後だから、とりあえず、一気に大量の苔ゾンビが走ってくる、っていうのが阻止出来ればいいんだし」


 後は、その正面の隙間に対応する形で、ちょっと離れたところに土嚢を積み上げていく。半円型に、円で言うと3分の1ぐらい積み上げたら、そこから1人分ぐらい通れる幅を開けて、道路の舗装の端から同じぐらいの長さで土嚢を積み上げていった。まぁ土嚢と言っても、その辺で拾ったただの袋に、同じくその辺の土を詰め込んだだけのものだけど。

 それでも、高さ1mも積み上げればそこそこ丈夫な壁になる。少なくとも、苔ゾンビの足止めにはなる。人間はこの隙間を通る事にすぐ気付けるけど、苔ゾンビはそうじゃないから。そうでないと困るんだが。


「後は……いつ来るか、だな」


 そうこうしている間に、すっかり日は暮れて、周囲は暗くなっていた。……見通しを良くして置いて良かったな。これで元のまま、物が多い状態だったら、苔ゾンビを見つけるのはちょっと無理があるぞ。


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