13.迎え入れる下準備
少なくとも『サバイバルクラフターズ』というゲームにおいて、手榴弾というのは爆弾の一種であり、投げつける事で一定範囲を一度に攻撃する、という武器だった。
このバズーカ砲を使った場合の挙動も、射程が伸びるんじゃなくて命中率と弾速が上がる、というものになる。その代わりリロードが遅い上に一発ずつの作成コストが重い、って感じだ。
もちろん威力は発射する弾(爆弾)によるから、残弾管理が面倒もとい大変な武器でもある。強いんだけど、扱うのは色々な意味で大変だ。上級者向きだな。初期武器にこれがあっても、本物の初心者だとあんまり役に立たない。
「まぁリスタートしてても扱えるかどうかは別の話なんだけど」
何しろ作成コストが重いからな。特に序盤はすぐ弾切れを起こす。サブの近接武器がないと弾が作れなくなって、そのまま倉庫行きなんて事も普通にある。何故かと言えば、爆弾に類するアイテムを作るには、「ジェル」が必須だからだ。
それはそうだな。普通の火薬なんて「ちょっと日曜大工が得意」なだけの人間に作れる訳が無い。一方で「ジェル」は木の枝や廃材といった木材系の素材と一緒に混ぜれば、そこそこ強い刺激を与えると強い爆発を起こすようになる。どっちが手軽で確実かなんて、考えるまでも無い。
ゾンビモノの定番で、丸々と膨らんでダメージを与えると爆発するゾンビもそのうち出てくるからな。そのフラグとも言える。
「だから、最初についてくる数発でしっかり苔ゾンビを倒せないと、それ以降補充が利かなくなるっていう……まぁだから普段使いじゃなくて、余裕が出来た時に少しずつ作り貯めて、囲まれた時とか数が来た時とかに使う、って感じの運用の方が楽な訳で」
そして普段使いに出来る頃には、もっと使い勝手の良い武器が使えるようになってるから、やっぱり主役は張れない事が多い。まぁ、背景がちょっと盛り過ぎとは言えサバイバルなんだから、コストが高いっていうのはそれだけで避けられる要因になるんだが。
で、そんな独り言を言いつつ外を歩いている訳なんだが。
「……にしても、思ったよりゾンビが多いな」
バラバラになった先で、それぞれお饅頭型の緑の塊になったものを掴むと、じゃがいもの収穫の時と同じようにぱっと消えた。そう、数が多いんだよな、苔ゾンビの。それこそ、初期武器がそれなりに火力のある範囲攻撃である、バズーカ砲(手榴弾)で良かったって思うぐらいに。
外自体は転移初日に2階の窓から見てた通り、争いまたは攻撃で残骸になってしまったような状態だ。それは『サバイバルクラフターズ』でも同じであり、放棄されたり壊れていたりする車や家の残骸を資源として集めていた。
その探索範囲はイベントが起こるか時間経過で広がっていき、その内宇宙人のあれこれの残骸や、ファンタジー異世界のあれこれの残骸がある場所も探索できるようになる訳だが、序盤で行ける場所は、少なくとも見慣れた感じの光景が残骸になっている、という場所になっている。
「ゾンビ自体は水と太陽光があれば増殖するとはいえ、まだそんなに時間が経ってない以上、増え方も広がり方もそこそこの筈なんだけど……」
という設定で、序盤は出会うゾンビの数は少なかった筈なんだが……範囲攻撃が輝くぐらいの数とちょいちょい遭遇するのはどういう事だ。それ以外の探索が全く捗らないんだが。
まぁ捗らないといっても、やっぱり『サバイバルクラフターズ』の補正は入ってる。具体的には、素材と判定されるものに触るとぱっと消える。どこに消えてるんだっていうのは、まぁ鞄持ってるから鞄に対応する謎空間なんだろう。
それに探索と言っても、拠点の建物への道を綺麗にして通りやすくして、「避難民」が近くに来た場合すぐ分かるようにするのが目的だ。何しろゾンビはいくら倒しても、どこからともなく湧いてくるから。まぁ苔だしな。仕方ない。
「それでも多少は減らしておいた方がマシだし、水が溜まりそうなものを回収して無くしておけば、多少発生数は減らせる筈だから、無駄ではない筈」
スマホで周辺地図を表示させる事で苔ゾンビを警戒しながら、道に転がっている色々なものを回収しつつ苔ゾンビを吹っ飛ばしていく。しかし本当に遭遇するな。これ「避難民」の人達大丈夫か。……1人は確実に妹なんだけども。
いや、それは考えない様にしよう。少なくとも元『サバイバルクラフターズ』のプレイヤー「ツミキ」として接する予定なんだから。どっかでバレたらその時は仕方ないとするけど、出来るだけ隠す方向で。
……まぁ何で家族と距離を取ったかっていう理由でもあるからなぁ。いや、不仲とか冷遇とかそういうのじゃないのは確かなんだけど。困ってるって分かったら迷いなく助けるぐらいにはちゃんと仲は良いんだけど。連絡を絶ってるだけで。




