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11.最初のイベント

 さて、『サバイバルクラフターズ』のプレイヤー「ツミキ」として一体型パソコンに登録をした訳だが、そこに表示された画面は、まさしく『サバイバルクラフターズ』のものだった。違いと言えば、画面中央にいた主人公のアバターが無い事か。

 お陰であれだけ苦労していた部屋の模様替えも、ちょいちょいと画面を触るだけで良くなったし、倉庫の中身も完全に把握する事が出来たし、あの地下倉庫に適当に放り込まれたような箱の群れを綺麗に整理する事も出来た。なんて快適なんだ。

 地下倉庫で見つけた必須設備も、倉庫の整理が出来ていくつか空き部屋を作って、そこに配置するだけだ。あんなのどうやって持ち上げるんだと絶望していたけど、こうすれば良かったんだな。


「とはいえ、家具が足りないな。素材は揃ってるから、修理自体は出来る筈だし、それは慣れた作業だと思うんだけど」


 と言う事で、とりあえず動かせるものを動かして設置出来るものを設置した結果、空き部屋として使えるのは半分以下という現実も理解できるようになった。いや、そりゃそうだよ。せめてベッドぐらいはないと。床も穴が開いてる場所があるし、壁紙も張り替えた方がいいし。

 家具は壊れていたのを直せばいいし、床は板で塞げばいい。それは慣れてるからいいとして、壁紙はどうしようかな。流石に『サバイバルクラフターズ』に壁紙は無かったから……いっそ剥がして板を張り直すか、レンガでも積み上げるか。部屋っぽく無くなる気がするけど。

 まぁでも作業的には楽しいんだ。それこそ6日目の日が完全に暮れてもまだわちゃわちゃ色々いじっているように……おっと。


「やべ、データ化作業してない」


 とはいえもういつもの寝る時間だったから、諦めて就寝。きっとこれから、少なくとも最初の仲間が来るまでは時間に余裕が出来る筈だから。何しろ畑からの収穫も耕し直しも植え付けも、全部ここから指先の操作1つで出来るから。便利だ。

 そして転移7日目。一旦パソコンの電源は落としておいたんだが、再度つけ直しても特に何も問題は出ていない。時間は経過しているけど、それはそうだな。ゲームだけどゲームじゃないんだ。画面を閉じている間は時間が流れない、何てことは無い。

 とはいえ、今日最初の作業はこの一体型パソコンの画面を触るだけで完了する。何しろ時計とかの家具を各部屋に設置していくのと、解体して素材にするしかない家具を解体するのと、解体して出てきた素材で、まだ修理できる家具を修理するのだからな。


「各種作業台を見つけられてて良かった」


 そしてそれらの作業は、家具を設置する操作をするか、各作業台に素材もしくは、家具を投入する操作をするだけだ。……全く強化されてないから1個ずつしか入らないのか。面倒だけど仕方ないな。これを強化する素材も探索か家具の解体で手に入った筈だ。

 なお『サバイバルクラフターズ』の仕様上、いつかは探索に出ないとその内詰むのは見えてるんだが……武器がなぁ。苔ゾンビは人を襲う。とはいえ、一部変異種を除けばその攻撃力は無いに等しく、一番脅威なのは数の暴力、という設定だった。

 実際『サバイバルクラフターズ』をプレイしている時も、通常の苔ゾンビに苦戦した覚えは無い。緑色が濃くなる=苔の密度が高い=体力が高いって事だから、時間がかかったって印象の方が強い。


「とはいえ、流石にゲーム内と同じく銃なんて使える訳が無いし。素人でも使えて射程があって威力が高い、持ち歩けて装弾数の多い武器ってなんだ……?」


 かなり贅沢を言っていると思うが、実際欲しいのはそういう性能だしな。そして実際、それっぽい武器はいくつか心当たりがある。何せ桁違いの混沌になった分だけ、技術のぶつかり合いと融合でトンデモ武器が出来上がってたからな。

 まぁそういうのは性能に比例して入手難易度が高い訳なんだが、そこまでいかなくても、序盤は消費が重いが終盤は型落ち、ぐらいのやつを最序盤である今から使えれば、それは十分なメリットって言えるだろう。

 とはいえ、その為には必要な素材があり、設備があり、その為には地下倉庫の箱を開けまくるのが多分一番手っ取り早い。何故かは分からないが、相当量の素材や設備があるみたいだからな。


「しかし、少なくともゲームの時にあんな潤沢な資材は無かった筈なんだけどな? どこから湧いて出たんだ、あの大量の支援物資的なあれ」


 その出所については全く分からない訳だが、そこにあるんだから有効活用させてもらおう。流石に別の誰かの物って訳ではない筈だ。それに一応この建物と敷地の権利書はちゃんと適正価格を払って受け取っている。建物と土地の所有者なんだから、それに付随する荷物も全部所有権がある。筈だ。

 とか思いながらさくさくと模様替えを進め、解体と修理を進め、ついでに確認できた地下2階と地下3階にも雑に放り込まれたような箱の山を見つけてそれを綺麗に整理したりしている内に、そこそこ時間が経っていた。……そう言えば朝ご飯を食べてないな。お米が見つかったから、炊飯器を用意してご飯を炊いて置いたんだった。

 ご飯に醤油だけでも美味しく頂ける民なので、自分用に少量炊いたご飯を楽しみに、箱開けセットを持って部屋を出る。


リリリリン


 直前で、そんな音が鳴った。

 それは自分の部屋に持ち込んでおいた「空間跳躍通信機」という名前の黒電話だ。それが着信を示して、リリリリン、と鳴っている。

 あぁ、そうだな。確かに今日は7日目だ。一週間だ。だから最初に「避難民」のフラグが立つのはここだって、それは知っていたんだが。


「もしもし」

『つ、繋がった!? どこに、何で……』

「……」

『あっ、ま、待って! 切らないで! た、助けて、下さい!』


 ……まさかそこから聞こえたのが。

 もう、5年かそこらは会っていない妹だとは思わないし。


『今っ! うちゅ、宇宙人みたいなのに追われてて、一緒に何人か逃げてるけど、もう何も食べれてないし、眠れてないし、ゾンビみたいなのも、怪獣みたいなのもいるし……!』


 その内容が、まるっきり。「避難民」のものだとも、思ってない。


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