103.方法の正体
そして結果は、というと。1本回収できなかった。とても残念だ。まぁどっちにしろ、牧場の方にあったのだろうこれは回収できなかったんだが。
何食わぬ顔、と言ってもミラー加工されたフルフェイスヘルメットを被ったままなんだから顔も何も無いが、少なくとも声では判別できない程度にいつも通り、王子様にこちらの襲撃の状況を伝える。
牧場も襲撃があったそうで、王子様はだいぶ頭が痛そうだった。そうだな。訳が分からないな。でもあいにくだが私は原因の事を伝えるつもりはない。だって知らない筈だし、これを王子様に伝えると、最悪王子様が暴走するからだ。
「さて」
まぁでも探索自体はそれなりに成果があったらしいので、明日も王子様と工一さん達は4エリア目の探索に行くようだ。なので私は念の為、夕方ギリギリの時間で、牧場へ各種物資を届けに行った。
グルスニールを全力で飛ばす結果となったが、まぁ仕方ないな。そして夜になって自分の部屋に引っ込み、フルフェイスヘルメットを外して、机の上に取り出すのは、例のボロボロの剣を入れた「木刀用武器袋」である。
とりあえず1本を机の上に置いて、ちょっと離れた所に取り出すのは、とりあえず断面部分で4つに割ったアルラウネの蔦の1つである。これをどうするかっていうと、まず皮部分を剥いで、それを机に広げた。
「うおっと……」
で、「分厚い絶縁手袋」をしっかりと着けてから「木刀用武器袋」を開き、その中に納まっていたボロボロの剣を取り出す。と、再び威圧的なものが飛んでくるが、内側を上にして広げた蔦の表皮の上に置くと、ちょっと圧が緩んだ。
その状態でメジャーを取り出し、刀身の長さや幅を計測する。ゲーム時代は武器種が乱数だった。ナイフから、それこそ人より大きな大剣まで……いや、剣だったらまだマシだったな。何しろ槍とか斧とかメイスとかも出てきたし。弓が出て来た時に、お前剣だったじゃねぇか! って思わず叫んだ覚えがある。
さてここまで言えば大体分かる訳だが、こいつ、所謂「錆びた武器」なんだ。そのままでも一度だけ、任意の場所に転移できるアイテムなんだが、錆を落として修理すれば、斬撃を飛ばしたり、常にクリティカルだったり、何ならそこそこ高い確率で即死が入る武器になる。
「一応今の見た目は剣だけど、修理したら別の武器になるとかないよな……? 槍とかならまだともかく流石に弓は無いよな……? いや杖なら有り得るか……?」
思わず独り言というか、どうもインテリジェンスウェポンの気があるボロボロの剣に語り掛けてしまったが、特に返事がある訳ではない。それはそうだな。こいつが喋ってるのは聞いた事が無いし、会話してる様子も無かった。
だから返事があるとは思ってないんだが、何故かちょっと威圧的なものが緩んだ気がする。ん? 気のせいか? それともばっちり意識的な物はあるのか?
とりあえず刀身の大きさを測ったので、その数字を基に、皮を剥がしたアルラウネの蔦の一部を切り出す。そしてこちらもメジャーで測って印をつけて、地道に削り出す作業だ。
「分からん……武器職人ではないから分からん……これでいいのか……? 剣のベッドもしくは部屋っていう風に認識したら補正が……既に入ってるのか……?」
自信が無いから何度も確認しつつ、時々ボロボロの剣にかぽっと被せて大きさ感を見たりしながら作っているのは、このボロボロの剣の鞘である。もっと言えば、内部に入れた剣をある程度自動修復する効果を持った鞘を作ろうとしている。
鞘を作って宝石を使った魔道具にすればいいだけなので、とりあえずアルラウネの蔦木材でもいけるんだよな。もちろん手探りの手作業で素人仕事だから、完全に直るまでには時間がかかるんだが。
まぁ時間がかかる分には別に構わない。だってまだまだエリアは残っているんだし、そもそもこのボロボロの剣が本来入手できるのは、それこそラスボス直前になってからだからだ。
「お前らが強いのは知ってるんだよ。何でこんなに数があるのかは知らないし、何でここに来たのかは知らないけどさ。だってお前ら、国に伝わる由緒正しい国宝だろ?」
ちなみにどこの国かって言ったら、王子様の国である。
いやー、情報が繋がった時は、どうして??? になったもんだ。まぁ今でもその理由は分かってないから、相変わらず、どうして??? ではあるんだが。




